天使のほほえみ・再び2
ゆみこは自転車置き場に自転車を置いた。
「鍵よし!」
ゆみこは指刺して鍵をかけた事を確認した。
「あ~ママァさっきのピエロが自転車停めてる~ほら見て~ママァ。」
「見ちゃダメって言ったでしょ!でもなんで同じ場所に?」
そんな事はお構いなしにゆみこは
スタスタと正面玄関へと歩いて行った。
中に入ったゆみこははキョロキョロと周りを見渡しトコトコと受付へと進んだ。
「おはよございます。あの~8階は何階ですか?」
「はい、8階は・・・な、7階の上が8階ですが。」
ピエロの出で立ちと妙な事を聞くので受付の女性は目が点になっていた。
「おぉぉっと申し訳ございません。8階は何病棟いや、小児ガン病棟は8階ですよね?」
ゆみこはおでこをペシっと叩いてテヘッとベロを出した。
彼女はいつの時代の人なのか時々想像がつかない。
「そうでございます。子供達を喜ばせてくれるボランティアの方ですね、いつもありがとうございます。あちらのエレベーターで8階までお上がりください。」
「それはかたじけない。では早速。」
ゆみこはそう言うと深々とお辞儀をしてエレベーターへと向かった。
「ねぇ、ボランティアの方ってこっちで着替えてたよね?」
「たぶん~、でも手間が省けていいんじゃない?」
「それもそうね。」
そんな会話を受付でしいる頃、ゆみこはエレベーターで8階へと向かっていた。
「浜崎、ナースコールの対応して。浜崎!聞こえてる?」
主任ナースの高橋が声をかけた。
「あっはい聞こえてます、すいませんすぐ行きます。」
浜崎恭子がナースステーションを出るしかし彼女は脂汗をかいている。
「胃が・・・イタイ。」
恭子が呟いた。
彼女は看護士に多い病気と言える十二指腸潰瘍を患っていたがただの胃痛と考え胃腸薬で誤魔化していたその上、彼女は72時間ほぼぶっ続けで仕事をしていた。その理由はこの町に感染病が流行り婦長ともう1人の同僚そして恭子以外は皆そちらの対応へと向かった為であった。
「もう限界だよ。」
恭子はそう呟きながらも彼女はナースコールのかかった病室へと向かうのであった。
「ハチカイデス」
エレベーターの扉が開き、ゆみこはエレベーターを降りた。
ゆみこがエレベーターの前でキョロキョロしていたところ
「わぁ~ピエロさんが来た!」
1人の毛糸の帽子を深々とかぶった女の子がそう声をあげゆっくりとゆみこピエロに近ずいて来た。
「おはようピエロさん。」
「おはようお嬢さん、お名前は?」
「私の名前はしほよピエロさん。」
「しほちゃんにハイ、キリンさんです。」
「わぁありがとう。」
ゆみこはどこから出したのか風船で作ったキリンを少女にプレゼントした。
そんなやり取りをしていると数人の子供が集まって来て、ゆみこははなにも聞かずにその子達の好きな動物やキャラクターなどを次々に風船で作りプレゼントをした。
子供達の笑顔に乗せられゆみこは大道芸を披露し始めなんともこれが上手い。
付き添いの保護者もなんだなんだと集まって来て、その空間が笑顔と笑い声に包まれた。
その声を聞き、恭子がそこへとやって来た。先ほどの胃薬を飲んだがまだ顔色が悪い。
「今日はボランティアの日でしたっけ石橋さん?あれ?石橋さんじゃないですね。」
「恭子お姉ちゃん?」
「ん?あなた誰?」
「顔色が悪いぞ汗もいっぱいかいたんじゃねぇか。いつもと同じで化粧が崩れてるからすぐわかぞ。」
恭子は手の甲で頬を交互に抑えながら言った。
「うるさいなぁ、圭吾。えっなぜ圭吾の名前が出てくるの?」
「手遅れにならくれよかったぜ、間に合った。」
目の色が変わったゆみこが恭子に近づき優しく頬を両手で覆った瞬間に恭子は気を失った。