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無力

 なんと悔しい事か、ここまで力不足とは思っていなかった王は歯噛みして戦況を見守っていた。デュポタリタスに猛々しく軍隊を率いて攻撃を仕掛けた。目的は時間稼ぎだったが、心のどこかにあわよくばという考えがなかったわけではない。


 後々に到着するであろう、フレアとロキアロッドの為にダメージの蓄積を目論んでいたはずなのに、刃が通らないのだ。


 デュポタリタスの表面を覆う鱗も強固であるが、その中の肉もまた厄介だった。王の眷属は大剣を棒切れを振るうかの様に高速で斬りつける膂力を持ち合わせているが、それでも鱗を割り、肉に大剣が刺さると弾力のある筋肉に阻まれ振り切る事ができずに止まってしまう。


 王の眷属の全身全霊の一撃が少し肉に食い込んだだけというのは、筆舌に尽くし難い無念さがあった。それでも何度も攻撃を続けた。


 周りの眷属が次々と倒れていく中、王の眷属はギリギリのところで踏みとどまっていた。それは、王の眷属が持つ特殊な性質によるものが大きい。


 王の眷属は事前に王から魔力譲渡による魔力の蓄積が可能であった。これがどう作用するかと言えば、戦闘中に本来単独ではできないはずの回復が魔力の続く限り可能となる。本来王の眷属は再生能力が高い生物なのだろう。


 デュポタリタスの攻撃によって片腕が吹き飛ばされてもすぐさま再生して、反撃に転ずる。回復主体の捨て身の攻撃だからこそなんとか足止めが成功していた。


 しかし、周りの者は違う、ひとたび攻撃を受ければ回復は間に合わず、回復に駆けつけた召喚士サモナー諸共叩き潰される。戦場にはいくつもの原型を留めない血のシミが存在していた。地獄絵図その言葉がぴったり当てはまるような光景だ。


 王と一緒に戦った兵士も随分と数が減ってきている。動いている者より、地に伏せている者の方が多くなってしまったのは見比べるまでもなく明らかだった。


 戦闘開始からどれくらいの時間が経ったのだろうか、時間の感覚は既にわからなくなっており、ひたすらいつ到着するかもわからない援軍を待ち続けているという状況だ。


 召喚士サモナーは無力だ。己の眷属が傷つき戦うのを見守る事しかできない。出来る事といえば、眷属が十分なチカラを発揮できるよう眷属の近くにいること、傷ついた時に魔力を渡して回復してやることだけ。


 剣を持ち眷属と共に戦えるチカラがあればどんなに良かったことか。けれどそれは叶わぬ願望なのである。王が剣を持ち突撃してもその鱗に弾かれて終いだろう。デュポタリタスは強すぎたのだ。



 突如デュポタリタスの雰囲気が変化した。あたりを警戒するように見渡したと思ったら天を見上げ突き刺すような咆哮をあげた。


『デュララララララララ!!デュララララララララ!!』


 デュポタリタスの近くにいた者たちすべてが不可視の衝撃波に飲まれ吹き飛ばされる。王もまた吹き飛ばされ体を地面に打ち付け、全身に痛みが走る中、空を見た。そこには太陽の光を遮る影があった。


「やっときおったか、ロキアロッドよ」


 天空を駆ける姿は神々しくも感じられた。デュポタリタスは怒気を膨らませドラゴンを注視していた。


「おいおい、王様がなんでこんなところで寝転がっているんだよ?」


「......フレアか」


「ずいぶんとやられたみたいだね」


「あやつには魔法が効かぬ、接近戦しか有効な手段がなくどうしようもなかった」


「魔法が効かない?そうかい、でもカムイの全力の魔法ならどうかな?」


 ドラゴンに注意を引き付けられているデュポタリタスに向かってカムイが全身に溜め込んだ雷撃を集約して破壊光線を放つ。


 カムイの魔法はデュポタリタスの手前で光の粒子に変わり眩い光が覆う。やはり効かないのかと思われた矢先、カムイの魔法は光の壁を突き抜けデュポタリタス体表を焼いた。


 予想外の攻撃にデュポタリタスの体が仰け反る。デュポタリタスの表情を見てみれば痛みに目を血走らせ赤く染まっている。カムイの幾千もの魔物を飲み込んだ破壊光線もデュポタリタスにとっては致命傷にはならなかった。


 デュポタリタスは空中を煌めく光を吸い込み、ドラゴンに向かって魔法を放った。ルキルフは旋回して見事回避するがその光景に誰もが肝を冷やされた。


 先ほどカムイが放った魔法と寸分違わぬ破壊光線をデュポタリタスが放ったのだ。あれが当たっていればいくらルキルフであろうと致命傷だったのではないだろうか?


「アイツ、カムイと同じ魔法を使いやがるのか?!」


「いや、違うおそらく、カムイの魔法を喰ったのかも知れぬ、余にはそのように見えた」


「なんだって」


「余と戦っている時は、ヤツはあのような魔法は一切使わなかった。ヤツに魔法は効かないと踏んでおったが、まさか攻撃にまで使われるとは思わなんだ」


「なら、こっちまで消耗してしまう魔法は止めといた方が良いね」


「ロキアロッドまだこの事実を知らぬどうにか伝えなければなるまい」


「戦闘が始まってる以上それは無理だね。悠長に言葉を交わしてる暇なんてないよ。なに、結局はアイツを倒せばそれでお終いなんだろう。難しく考える必要なんてないじゃないか」


「フレアよいけるか?」


「いけるかじゃない。殺るんだよ!!カムイ!!」

「ガウ!!」


 フレアはカムイに跨ったままデュポタリタスに突撃を開始した。ロキアロッドもその姿を確認してデュポタリタス向かって魔法を放つ。ルキルフの口から光弾が放たれデュポタリタスの顔に命中したかと思ったら、無傷で逆に同じ光弾を返されてしまった。


「っな?!アイツ魔法が効かないのか?!」

「グルァ」


 デュポタリタスの顔には深いシワが刻まれ鋭い眼光はドラゴンを捉え、口からは牙がむき出しになっていた。どうやら標的はドラゴンに絞っているらしい。並々ならぬ怒気は殺気と混ざり合い肌をひりつかせたのだった。

物語をまとめるというのはむずかしいものですね。低評価をもらってしまって評価ポイントがガクッと落ち込んでしまいました。引き続き★評価・感想をお待ちしております。

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