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デュポタリタスの襲撃

 デュポタリタスは狂喜するように、魔物を捕まえてはその血を啜り続けた。デュポタリタスが体から発する魔力は広範囲の魔物に影響を与え体の自由を奪い憔悴させた。


 手当たり次第に魔物を喰らうデュポタリタスの通った道には1000を超える魔物の変死体が転がっている。デュポタリタスの食欲は満たされる事はなく、まだまだ続く撒餌さに導かれるように移動しては喰らうを繰り返して、着実に北の防壁町に近づいてきていた。



 1000体の魔物を喰らったデュポタリタスの体は全盛期と遜色なく復活していた。ほぼ骨と皮だけの様だった体は生気が漲り、枯れた細木のような体は、大蛇だったのだと目を見張るほどだ。


 上半身は人間と似たつくりになっているが、特徴的なのはその長い手であろう、いくら上半身が人間の体と似ているといっても別の生き物なのだ。その骨格は天と地ほども違う。地面に届くほど長い腕には関節がいくつも存在しているようで別の生き物のように自在に動かしている。



魔物を追いかけ、森のカーテンを突き抜けた場所には見覚えがあった。デュポタリタスの記憶に強く残る風景が目の前に広がっている。


 掠れた風景が補修され、色がついてはっきりとした輪郭が浮かび上がったと同時にデュポタリタスは咆哮していた。


『デュララララララララ!!!!』


 デュポタリタスの凹凸の少ない顔には普段には見られないくっきりとしたシワが刻まれていて、その表情が憤怒だと誰が見てもわかるものだった。



『そうだった!そうだった!!思い出したぞ!思い出したぞ!!』


「な、なんだアイツは?!」


 順調に討伐していた兵士たちの目にデュポタリタスの姿が映り、その咆哮と合わせて動揺させた。


 遠目に見えるデュポタリタスは中型の魔物の様に見えたが、近づくごとにその全体がわかり唖然とする。


「ここは俺たちに任せろ、雑魚は頼むぞ!!」


 召喚騎士サモナーナイト総勢10名が前に踊り出てデュポタリタスと対峙する。


 デュポタリタスが這うようにして身を低くしていた身体を持ち上げていく。頭はどんどん上へ持ち上げられ10メートルを超えたぐらいの高さで止まった。しかし、続く大蛇の体は後方に続いておりその巨体が如実に突き付けられ、威勢よく飛び出た召喚騎士サモナーナイトの心を折る。


 恐れを払拭するために、召喚騎士サモナーナイトの眷属たちが全力で攻撃を仕掛ける。様々な魔法がデュポタリタスの体を襲うが、体に当たる手前でデュポタリタスの魔力波に打ち消され、強大な火弾が、雷撃が、風の刃がキラキラとした粒子に変わって空中に飛散する。


「な?!」「バカな?!」「何が起こった?!」


「怯むな!!攻撃を続けろ!!」

「うおおおおおおおお!!!」


 半ば狂乱して、何度も何度も魔法を放つ、しかし、いくら魔法をぶつけようと結果は変わらず、デュポタリタスの魔力波によってすべて魔力粒子に変換されて、目を開けていられないほどの光に包まれた。


 空中を彩る眩い光の粒はデュポタリタスの口へ吸い込まれていく。予想外の出来事の連続で処理できない召喚騎士サモナーナイトたちは茫然と成り行きを見守った。


 眩い装飾が取り払われたあと、デュポタリタスの視線と召喚騎士サモナーナイトたちの視線が交わる。その瞬間ヘビに睨まれたカエルのように身が竦み硬直した召喚騎士サモナーナイトに向かってデュポタリタスの口から魔法が放たれた。



 すべての魔法を無理矢理混ぜ合わせたような魔法が渦巻ながら召喚騎士サモナーナイトを飲み込みそのまま平原を付きっ切り防壁にぶち当たって貫通して町を焼く。デュポタリタスの魔法に触れた範囲すべてが焦土と化した。



 戦場は一気に混乱した。デュポタリタスに魔法を放ってはいけない。『魔を喰らうもの』の異名は健在であった。



 かつての初代ドラゴンも遠距離からの魔法攻撃ができず、接近戦を余儀なくされた。そのため深い傷を負い回復が間に合わず命を落としたのだ。


 惨状を目の当たりにした兵士が戦う事も忘れ一目散に逃げていく。デュポタリタスはその体をくねらせ、長い体を使って兵士を取り囲んだ。兵士は慌てふためくがデュポタリタスの胴体は人の身長程の高さがあり動く壁のようだった。綺麗に円どられた体に隙間はなく逃げ出す道がない。


 デュポタリタスはそのまま蜷局とぐろを巻くように体を擦り合わせて兵士を潰した。兵士たちは鱗によって身を削られた上で圧迫され原型をとどめることもできずに死んだ。


 デュポタリタスは平原の向こうにそびえ立つ防壁の向こうから黒煙が上っているのを見て呟く。


『ドラゴンめ、我は来たぞ、出てこい滅ぼしてやる』


 デュポタリタスは歩みを進め、あっという間に防壁にたどり着く、魔法によって破壊された場所から町内に入り込むと尾を薙ぎ払い目に付く建物を手当たり次第に破壊した。


 どうにか逃げようと駆ける人々もデュポタリタスが咆哮をあげると体が痺れ動けなくなった。後は破壊された建物に押しつぶされるか、デュポタリタスの体で押しつぶされるか程の差しかなかった。


 情報伝達員だけが、眷属の俊足を生かして町を突き抜け、中央へ続く道へ躍り出た。


 後方から聞こえる破壊音と悲鳴が遠ざかっていくことに幾ばくかの安堵を覚える。


 しかし、どんなに距離が離れても体に染みついた恐怖の侵食はあとをひき、全身から噴き出す冷や汗は止まる事はなく、手綱を握る手は緩めることができず、血の気のひいた顔はガチガチと歯音を鳴らして震えが止まらなかった。



 眷属に無理をさせて全速力に近い速度で駆け抜け、中央までの道のりを半日で踏破する。命からがらたどり着いた伝達員の様子に異常事態を嫌でも連想してしまう。


 落ち着かせる為に伝達員に水を渡して飲ませる。ガチガチと震える口からは水がこぼれて少しも飲めずに服を濡らした。


 伝達員から伝えられた情報は予想よりも遥かに悪かった。


 情報は迅速に王城に伝えられて、情報が整理されていく。


「その情報は事実なのか?」


「はい、まだ確認は取れてませんが、伝達員の様子は嘘をついているようには思えず信憑性は高いと思われます」


「巨大なヘビの胴体を持つ魔物......まさか、まさか、まさか!!」


 取り乱した大臣に向かって王が質問を投げかける。


「大臣よ、なにか心当たりがあるのか?」


「......はい。私めの嫌な予想が当たっているとすれば、デュポタリタスではないかと......」


「なんと?!」


 王も大臣の言葉に、っハと息を飲む。


「魔を喰らうもの......ドラゴンの宿敵とな......」



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