三話目
「突然ですが、三組の田中さんが亡くなりました。今日の朝、アパートの駐車場で発見されたそうです。警察曰く、自殺だそうです。一時間目は急遽に、集会になります。」
三十歳後半程のひょろりとした男――僕のクラス、四組の担任――は淡々と彼女が死んだことを告げた。
クラスが騒めく。それを担任が鎮まるように言いい、続きをまた、淡々と告げる。
「田中さんの事を何か知っている人が居ましたら、また、後ほど私の元へ来てください。ここらは、連絡事項を言います。よく聞くように。まずは――」
担任の目線が手元のプリントに移った。
集会は校長が一時間話して終わった。内容は、彼女への供養だった。校長は終始、面倒ごとが増えたというような顔をしていた。
昼休みになると、既に彼女の話をしている奴は居なくなった。もう忘れられているらしい。彼女には友達と呼ばれる人が居なかったようなので当然と言えば当然である。怒りは、沸いてこなかった。
購買で買ったクリームの少ないクリームパンを胃に詰め込むと僕は教室を後にした。
隣の三組を廊下を歩くふりをして見る。
目当ての人物は教室の一番端、僕の覗いている扉から一番遠い所にいつも一緒に居る女子数人と弁当を広げていた。
佐藤凛子。あいつが彼女を虐めていた中心人物だ。机に虫の死骸を入れる。教科書を水浸しにする。酷いときには便所の床を舐めさせられたらしい。
僕は奥歯を噛みしめる。ポケットに入っているバタフライナイフの硬い感触をズボンの上から確かめた。




