表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Welcome To Gensokyo  作者: 水道水
Season 1
6/9

風邪

私も今月風邪をひきました。



頭が重い。

口の中が熱く、カラカラ乾く。

そして、動けない。


…風邪だ。


私は、この神社の巫女になってからかなりの月日が経った。

しかし、全くの病気知らずで、病にかかった事はまず無かった。

しかし、今日は別。

人生の皆勤賞を失った。


「…霊夢!」

「ん…あ…?」

「縁側に居ないから、様子が変だと思ったんだ。どうした風邪か?」

「たぶん…ね」

「待ってろ、今薬を調合してやるよ」

「あんたの薬…効かないじゃない」

「うるせぇ、折角この魔理沙様がお前の看病してやるってのに」

「事実…でしょう?」

「病人は黙って寝てろ。今、白湯持ってくるから」


布団は一瞬にして熱くなり、汗が出てきた。

暑過ぎるので、布団から足を出す。

今度は、足が冷え、体も冷えて来た。

温度調節が難しい。


「ほら、薬。飲めよ」

「あら、どーも。効くと良いけど」

「一応、楽になる魔法を込めたぜ」


その何とも言えない色合いの如何にも苦そうな粉を飲み込んだ。


「うわっ、不味い」

「ったりめぇだろ。薬は不味いもんだぜ」

「あれ、なんか寒い」

血の気が引いていく。

体温が一瞬にして無くなっていく。

「霊夢、どうした」

「うう寒い。何よこれ」

「え、そんなに寒いか?」

「真冬よこれは」

「今日は晴れてるし、新聞でも最高気温は16度と言っているぜ」

「あ、死ぬ」

バタン

「霊夢…?霊夢ッ!」


霊夢は意識不明となった。

魔理沙は彼女を布団に寝かせ、竹林の医者を尋ねた。

「霊夢が…倒れた」

「あの霊夢が?…今日は雪でも降るんじゃない?」

「意識が、無い。脈も」

「えっ… それってかなりまずい状態じゃない」

「と言うわけで来てくれ」

「良いわ。けど、一つ聞きたい事があるわ」

「何だぜ?」

「あなた、霊夢に何かした?」

「ええと、寝かせて、安静にしてから薬を飲ませたよ」

「その薬って、何処の?」

「私のオリジナルだぜ」

「材料は?」

「家にあった小麦粉と、私の魔法だぜ」

「魔法を服用させたのね」

「そうなるな」

「それって、何の魔法?」

「ええと、言うと長くなるから、これ読んで」


そう言って、「魔道書ハンドブック」を、永琳に渡した。


「いや、何頁だよ」

「126頁の上から2番めの欄。そこらって、ヒーリング系のじゃ無かった?」

「何言ってるの、これあんた死の魔法じゃない!」

「え」

「『楽になる魔法(黒魔術)この魔法を掛けられた人は、2秒後に寒気が、8秒後に血の気が引き、12秒後に完全に意識不明。30分後に死にます。又、使った人は、その日のうちに心臓発作又は大動脈の異常により、一時的な昏睡状態又は死を引き起こします。』馬鹿の極みね。あんた」

「ええ…」

「行くわ。因みに、飲ませてから何分経った?」

「え…6分」

「急いで行きましょう。あなたも、ほら早く」


こうして、彼女らは神社へと向かった。


「…脈が無いわね。完全な植物人間状態よ。いや、もっと酷いわ。」

「え」

「あなた、ちょっとした蘇生魔法知らないの?」

「心臓マッサージなら分かるぜ」

「時間経ち過ぎて無駄だろうけど、やってみて」


「13…14…15…16…20。まだ?」

「まだ。あと少しよ。人工呼吸はやっとくわ」


「31…32…」

「はい電気ショック」

「え、どうやんの」

「マスタースパークで何とかなるわ。多分」

「こんな医者は絶対に嫌だ」

「うるさい早くやれ」


その極太ビームは、霊夢の胸元を貫通し、地面、地底へと突き進んで行った。


「これで良いのか?」

「待って、脈を測るわ…」

「どうだ?」

「奇跡よ。これは。異常無しね」

「起きないぜ?」

「元々風邪なんだから、寝かせて起きなさい。薬は一応処方しておくわ」

「はぁ」


…次の日


「……………ん…?」

「霊夢ッ!起きたのか!」

「は…?」

「お前ずーっと寝込んでたんだぜ」

「あんたの…薬のせいよ」

「まあまあ、気にすんな。熱はどうだ?」

「まぁ…引いたわ」

「どれ…本当だ」

「全く、ハタ迷惑よ」

「なっ…私は霊夢のために…」

「迷惑は迷惑よ。私はあんな事望んでないわ」

「ケッ、素っ気ない奴」

「最も寝てれば治っていただろうに」

「悪かったな」

「まあでも、結局はあんたに助けて貰ったわね」

「そう思うなら前言撤回しろよ」

「あんたが医者寄越してくれたお陰で治りが早いわ。薬代も浮いたし」

「死ね」

「あんた現に殺そうとしてたじゃない」

「あれは…まあミスった」

「馬鹿ね、目と脳が腐ってるんじゃない?」

「喋る暇があるなら寝ろ」

「ったく。もう良いわ。私は寝るから。あんたも帰りな」

「感謝ってもんは無ぇのかよ」

「無いわ。それなら医者に感謝ね」

「あーあ。もう来てやんね」

「結構よ」



それが、彼女との最後の会話だった。

後日、彼女は、布団の中で冷たくなっていた。


「…霊夢…?霊夢ッ…!」

「…」

彼女は如何にも安らかに、清々しい顔をしていた。

「…」

「……霊夢…」

私は膝が崩れ、その場で泣き噦った。

「うううう…」

それでも彼女は何も言わない。

「…」

「…」


ふと、彼女の背中に張り紙があった。

「みこせいあつ あたいさいきょう さるの」


彼女は、冷たくなっていた、いや、凍っていた。



私は丁重に氷を溶かし、濡れた布団は干してあげた。

そして、あの馬鹿製氷機を成敗し、今は私の家の氷式冷蔵庫になっている。


3月の晴れたある日の事だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ