確信犯
慧音と妹紅のお話
「はい、ここまでで分からない奴居るかー」
「はい!」
「山田か、どこが分からないんだ」
「せんせートイレ!」
「…早く済ませて来いよ」
「他、居るか?」
…
「よし、居ないな。じゃあ次は理科だから、準備しておくように」
…あぁ、疲れた。
妹紅の居る部屋へ早歩きする。
妹紅は、たまに手伝いに来てくれるのだ。
「うー、疲れたぁ」
「慧音は頑張りすぎだよ。二週間ノンストップじゃないか」
「そうだけどさ、ちゃんと正しい知識を教えてあげないと、人里が駄目になるし」
「次理科だろ?私行ってやるから、休みなよ」
「そうさせて貰うわ」
「おーし、慧音先生は出張だから、私が理科教えるぞ、忘れ物は無いな」
「先生、今日はどこやるんですか?」
「分かんねぇ… あ、ちょっと教科書貸してくれ」
火を扱う物だと楽なんだけどなぁ…
…おっ、「水蒸気」か、これにしよう。
「んじゃあ、この82ページの水蒸気の実験をやろうか。戸棚から瓶と雑巾を取ってきて」
準備が整った。
「さあて、瓶の中に水を入れて、私が水に炎を入れて沸騰させるから、その瓶から出る気体を袋に集めてみてくれ」
「はぁい」
実験が終わった。
「おい、橋崎。結果はどうだったか発表してみ」
「ええと、袋の中に水滴ができました」
「そうだな。それで、どんな事が起こったと言える?」
「一定の温度になると、気体から…液体になる…ですかね」
「正解。じゃあ今日は実験のまとめをして終わりな」
「はーい」
…うー、疲れた。
慧音の居る部屋へ早歩きする。
あ、慧音は大丈夫だろうか。
「慧音、終わったぞ…っ… 慧音!」
慧音が床にぶっ倒れていた。
「大丈夫か、慧音!」
そいつを仰向けにした時だった。
慧音が、私のプライベートな写真を持ってやがった。
「どういう事だ、これは」
「いやぁ、その、ね。分かるでしょ?」
「いや分かんねぇよ。取り敢えず燃やすぞ」
「やめて!それ私ん家の家宝なんだから」
「何言ってんだお前、誰が撮った、これ」
「ブン屋!私じゃないわ」
「あのクソ鴉か… それ貸してくれ」
「良いけど、燃やさないでよ」
「燃やす」ボォオオオ…
「あ、ああ…」
妹紅は、文の元へ行った。
「おい、鴉、お前私を盗撮して、慧音に売っただろ」
「勘が鋭いですねぇ、そうかっか為さらず、ね?」
「馬鹿野郎、訴えるぞ」
「それは駄目ですよ、商売出来なくなっちゃう」
「まさか、里に流通させたのか?」
「妹紅さんもすっかり有名人ですねぇ」
「野郎、ぶっ殺してやる!」
「それも困りますねぇ、脅迫罪で逆に起訴しますよ」
「うるせぇ正当防衛だ」
「では、私と手を組みましょうよ。一緒に慧音さんの写真を撮るんです」
「ふざけんな、彼女は私の友だぞ」
「その友に裏切られたじゃあありませんか」
「それはお前のせいだろ」
「それでは何故、彼女は貴方の写真に手を出したのでしょう?」
「…」
「交渉成立ですねぇ」
次の日
「では、手順通りに」
「…チッ」
奴の言う事には気が引けるが、慧音も分かっていて手を出した。おあいこだ。
…カシャッ
「…これで良いのか?」
「うーむ… まあ、良いでしょう」
「あっ」
「どうかしました?」
「お前、これも里にばら撒くのか?」
「慧音さんも人気なんですよねぇ」
「ふざけんな!私が許さねぇ!」
「あなたが撮ったんですよ?」
「!!」
「にひぃ」
「…」
2秒後、調子に乗りすぎた天狗は、案の定妹紅にボコボコにされ、写真は燃やされた。
「慧音!」
妹紅は全てを打ち明けた。
「ごめんな、ついカッとなって。あのクソ馬鹿天狗に乗っちまったよ」
「良いのよ。私も同じよ」
「許してくれるのか?」
「勿論、私も許してくれる?」
「ああ。二度としなければな」
「ふふっ、ありがと」
その時はまだ、慧音が2枚目の写真を自室のタンスの二段目の右端に隠してあった事を知らなかった。
文はどう頑張っても下衆になってしまう。