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短編集だよ!(ボツ作品もあり)  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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世紀末救世主伝説・破裏拳ダイゴ 4

 だが次の瞬間、ゼブンガーは吹っ飛んで行く――

「ゼ、ゼブンガー!」

 絶叫するダイゴ。タクマら子供たちも、驚愕の表情を浮かべる。

「ほーほっほっほっほ! パグガンダーは、バクノミヤ博士が造り上げし最強のトラック型犬ロボットだ! そんなひ弱なボディでは、パグガンダーの突進は受け止められまい! さあパグガンダー! ゼブンガーを破壊するのだ!」

 ミュータント・レディの声が響き渡った。と同時に、パグガンダーはゼブンガーに突っ込んで行く――

 ゼブンガーはかろうじて、その突進を躱した。

「ゼブンガー! ジェットパンチだ!」

 ダイゴが叫ぶ。と同時に、ゼブンガーの両腕が外れ、弾丸のような勢いで飛んでいく――

 だが、パグガンダーは弾き返したのだ。

「な、なんだとお!」

 ダイゴの声が響く。だが、パグガンダーはお構い無しだ。スピードを上げ、ゼブンガーにぶつかっていく――

 ゼブンガーは弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた。だが、すぐさま起き上がる。

 その時、またしてもレディが声を発した。


「今のうちだ! ダイゴも子供たちも皆殺しにしてしまえ!」


 その声と同時に、手下たちが一斉に動き出した。彼らは車やバイクを操り、子供たちのいる住居へと突っ込んで行く――

「レディ! 約束が違うだろ!」

 ダイゴは怒鳴り付けた。しかし、レディは聞く耳を持たない。

「ほーっほっほっほっほ! キングさまは、敗北してはならぬ人なのだ! キングさまに敵対したお前らを皆殺しにして、キングさまの恐ろしさを世界に知らしめてやる!」

「な、なんだとぉ!」

 よろよろしながらも、懸命に走ろうとするダイゴ。だがキング戦のダメージが大きく、思うように動くことが出来ない。

 一方、キングの子分たちは子供たちの住みかに突っ込んで行く。車やバイクを止めると同時に、入り口に集まる。

 もし子分たちに入られたら、その時点ておしまいだ。子供たちは皆殺しにされてしまう――

「くそ!」

 タクマは叫んだ。しかし、子分たちは奇声を発しながら、入り口に積んだバリケードを次々とどかしていく。

 その時、どこからともなく火の玉が飛んできた――

 火の玉は子分たちの一メートルほど先に着弾し、地面を焦がす。子分たちは慌てて飛び退いた。


「ヒャッハー! 何だ今のは!」

「どこから飛んできた!」

「誰がやったんだ!」


 喚きながら、あちこちを見回す子分たち。すると、何者かの声が響く――


「異形の姿に生まれようと、感じた想いが生き方変える!」


 声とともに、子供たちの住居の裏から、ゆっくり姿を現した者がいる。それはなんと、チャック・リパーであった……。


「ミュータントのさだめが阻もうと、この血のたぎりが明日を決める……んだホ!」


 決めゼリフと共に現れた者、それはチャック・フロストである。

 次いで、チャック・ランタンが巨体が揺らしながら現れる。


「種族の違いを飛び越えて、掴んでみせるぜ己の道を!」


 そして、チャック三兄弟が並んだ。


「わしら、チャック三兄弟! 三人そろえば、恐れる者などありはしないんじゃ!」


「貴様ら、裏切ったか!」

 吠えるレディ。すると、三兄弟はニヤリと笑う。

「みくびるな。俺たちは、初めから子分になった覚えはない」

「そうだホ! 俺は最初から、キングなんか嫌いだったんだホ!」

 リパーとフロストの言葉を聞いたレディは、怒りで体を震わせながら叫んだ。

「お前たち! あの三人もまとめて皆殺しだ!」

「上等だホ!」

 怒鳴り返し、子分たちを蹴散らしていくフロスト。一方、ランタンはダイゴたちに吠える。

「ダイゴ! タクマ! 雑魚はわしらが引き受けた! 子供らには指一本触れさせん! だから、お前らはデカブツを何とかするんじゃ!」

 その言葉を聞いたダイゴは、体を震わせながらパグガンダーの方に向き直る。

「ゼブンガー! ファイトだ!」

 その声に応えるかのように、ゼブンガーは立ち上がる。そして、再びパグガンダーへと向かって行った。

 しかし、またしても吹っ飛ばされる。パワーの差は歴然としていた――

「クソがぁ!」

 よろよろしながら、パグガンダーに向かい歩き出すダイゴ。だが、キングとの闘いのダメージは深い。今の彼には、何も出来ないのだ。

 顔をしかめ、彼はパグガンダーを睨んだ。だが、次の瞬間にダイゴはあることに気づく。


 あの額の回転灯は?

 あれが、奴の弱点ではないのか。


 それに気づいた時、ダイゴはタクマの方を向いた。

「タクマ! パグガンダーの弱点は額の回転灯だ! 今から、ゼブンガーがパグガンダーの動きを止める! お前が、パグガンダーの回転灯を破壊しろ!」

「えっ、俺が?」

 驚きと怯えの表情を浮かべるタクマ。だが、ダイゴは怒鳴りつけた。

「俺はキング戦のダメージで動けない! お前以外に誰がいるんだ!」

 ダイゴの言葉に、タクマは恐る恐るパグガンダーの方を見る。

 パグガンダーは、凄まじい勢いで狂い、暴れている。まさに鋼の巨獣だ。ゼブンガーですら、相手にならず吹っ飛ばされている――

 あんなものに、自分が勝てるはずがない。


「む、無理だよダイゴ……俺が、あんなのに勝てるわけない――」

「バカ野郎! お前が行くしかねえんだ! でないと、みんなパグガンダーに殺されちまうぞ! 無理を通して、道理をブッ飛ばすんだ!」

 ダイゴの言葉に、タクマは震えながらパグガンダーを睨む。ゼブンガーが止めようと必死で戦っているが、大きさもパワーも桁違いだ。このままでは、ゼブンガーがやられる。

 そうしたら、次は自分たちだ。


 そう思った次の瞬間、凄まじいスピードで何かが飛んで来た。そして、タクマの足元に突き刺さる。

「タクマ! 俺の斬鉄包丁を使え! そいつを、パグガンダーの額にブッ刺してやれ!」

 リパーの声が響く。タクマは、その巨大な包丁を抜いた。刃渡り四十センチ、幅八センチ、みねの厚さ一センチ……包丁というには、少々大き過ぎた。

 しかしタクマは、その包丁を片手で握りしめる。と同時に、ダイゴが叫んだ。


「たった一つの命を燃やし、生まれ変わる時は今! 鉄の悪魔を叩いて砕け! お前がやらねば、誰がやる!」


 その言葉を聞いた瞬間、タクマは奥歯を噛み締めた。包丁を構え、凄まじい勢いで走り出す――

 それを見たダイゴは頷き、そして叫んだ。

「ゼブンガー、フルパワーだ! パグガンダーを止めろ!」

 次の瞬間、ゼブンガーは立ち上がった。突進して来るパグガンダーの前に仁王立ちする。

 パグガンダーは、猛スピードでぶつかっていく……しかし、ゼブンガーは受け止めた。ズルズル押されながらも、何とか持ちこたえている。

「タクマ、今だ! 俺を踏み台にして行け!」

 ダイゴが叫ぶ。それに応え、タクマは走った。

 さらにダイゴの組んだ両手を踏み台にし、一気に飛ぶ――

 直後、パグガンダーの頭上に着地した。

「くたばれえぇぇ!」

 吠えると同時に、回転灯めがけ包丁を突き刺すタクマ。

 次の瞬間、パグガンダーの内部から異様な音が聞こえてきた。破裂するかのような音が、小刻みに聞こえてくる。さらに、パグガンダーの動きにも変化が生じた。巨大な腕をブンブン振り回し、自身をガンガン殴り付ける――

 やがて、パグガンダーの動きは完全に停止したのだ……。


「やった……やったぞ! 俺はやったんだ! この怪物を倒したんだ!」

 興奮のあまり、空に向かい咆哮するタクマ。一方、レディの表情はゆがんでいく。

「そ、そんな……パグガンダーが負けるなんて……」

 愕然となるレディ。すると、さらに勢いづいた者がいた。

「ヒーホー! キングもパグガンダーも敗れたんだホ! 俺たちの勝ちだホ!」

 そう言うと、フロストは子供たちの方を向いた。

「お前たち、勝ちどきの声を上げるんだホ! 俺に続けだホ! ヒーホー!」

「ひ、ひいほお……」

 恐る恐る声を出す子供たち。すると、フロストは首をブンブン振った。

「もっと大きな声を出すんだホ! ヒーホー!」

「ひ、ひいほお!」

「ヒーホー!」

「ヒーホー!」

 そのヒーホーの声に押され、子分たちは次々と退散していく。レディもまた、慌てて逃げて行った。


「俺たちの勝ちだホ! さあ、みんなで叫ぶんだホ! ヒーホー!」

 勝ちどきの声を上げるフロスト。すると、ダイゴが彼の肩を叩く。

「ん、なんだホ?」

「チャック・フロスト……お前たち三兄弟のお陰で助かったよ。本当に、ありがとう」

 言いながら、右手を差し出すダイゴ。すると、フロストの顔がみるみるうちに赤くなる。

「フ、フン! 天下のチャック・フロストさまが、正義の味方なんかと握手なんか出来るかホ!」

 言いながら、プイッと横を向くフロスト。ダイゴは苦笑した。

「はいはい、分かったよ。お前らは悪党だもんな」

「そうだホ! いつか、お前もゼブンガーもやっつけてやるんだホ!」

 そう言うと、フロストはバギーカーへと乗り込む。次いで、リパーがバギーカーに乗ろうとした。

 だが、タクマの方を向いて笑みを浮かべる。

「タクマ、その斬鉄包丁はお前にやる。記念に取っておけ」

「あ、ありがとう」

 神妙な表情で、タクマは頭を下げる。この三兄弟が来ていなかったら、自分たちは今ごろ……。

「ダイゴ、今度会う時は敵同士じゃ。首を洗って待っとけ」

 言いながら、バギーカーに乗り込んだのはランタンだ。

 そしてランタンは、タクマの方を見る。

「タクマ、もっと大きな男になるんじゃぞ」

 その言葉に、タクマはもう一度頭を下げた。

「はい、ありがとうございました」

「タクマ……ひょっとしたら、世界を救えるのは、おんどれのような男かもしれんのう」

 様々な感情のこもった言葉を吐くと、ランタンは弟たちに声をかける。

「さあ、行くぞ」




 それから、一ヶ月が経った。

「タクマ! また子分になりたいって人が来たよ!」

 ブンタが、ペンと紙を持って部屋に走って来る。タクマは了解した、とばかりに頷いた。

「そうか。これで何人になった?」

「百人を超えたよ!」

 嬉しそうに報告するブンタ。すると、ダイゴがタクマの肩を叩く。

「タクマ、凄いな。百人といえば、侮れない一大勢力になっているはずだ」

「いや、まだそこまでじゃないよ。戦える者も、せいぜい五十人くらいだし」

「五十人か……それでも上手く使えば、千人からなる烏合の衆に勝つことは出来る。全ては、リーダーのお前次第だな」

「そうか……分かったよ、ダイゴ。俺たち、もっと強くなる」

 そう答えた後、タクマはブンタの方を向いた。

「ブンタ、悪いが後でみんなを集合させてくれ。集会をやるから」




 廃墟と化した街中に、百人を超える子供たちが集結した。彼らは皆、タクマの方を見上げている。

 タクマは高いビルの上から皆を見下ろし、拡声器で語り始めた。


「みんな、よく集まってくれた。今日は、俺の話を聞いてくれ」

 タクマは言葉を止め、皆の顔を見回す。幼い顔つきの者がほとんどだ。

 だからこそ、伝えなければならない。


「俺は……ダイゴによって命を助けられた。だが、それだけじゃない。ダイゴが俺を変えてくれたんだ。ダイゴがいなかったら、俺は変われなかった。ダイゴがいたから、俺はパグガンダーを倒すことが出来たんだ!」

 その言葉を聞いた時、子供たちから歓声が上がる。やはり、巨大ロボットであるパグガンダーを破壊した……という噂が、タクマという少年の名を知らしめていたのだ。


 タクマはさらに語り続ける。

「でも、それだけじゃない。俺がパグガンダーと戦っている間、幼い子供たちを守ってくれた者たちがいた。ミュータントである、チャック三兄弟だ」

 すると、皆がざわざわ話し出した。チャック三兄弟の悪名は、かなりの人間に知られているらしい。

 だからこそ、真実を語らなくてはならないのだ。


「チャック三兄弟は、確かに悪い奴だった……今までは、な。しかし彼らは、幼い子供たちを守るため、体を張ってキングの子分たちと戦ってくれたんだ!」

 直後、そうだよ! というブンタの合いの手が入る。子供たちは神妙な顔つきで、タクマの話を聞いていた。


「俺が何を言いたいかというとだ……俺は変わり、チャック三兄弟も変われた。誰でも変われるんだ!」


 すると、おお! という歓声があちこちから上がる。幼いなりに、タクマの言葉を理解してくれたのだ。


「次は、みんなが変わる番だ! みんなが変われば、この世界も必ず変わる! みんなで、この世界を変えていこう!」


 ・・・


「ダイゴ、お別れをしなくてよかったの?」

 バイクに乗り荒野を走るダイゴに、若い女の声が聞こえてきた。

「ああ、お別れを言うと辛くなる。それに、今のタクマには俺がいなくても大丈夫だ」

「そうね」


 この声の主は、ヤオトメ博士の娘であるヤオトメ・ミチルである。彼女はゼッター線の暴走に巻き込まれ、肉体は滅びた……はずだった。

 しかし、ミチルの脳は死ぬ間際にゼブンガーに移植されたのである。彼女は、ゼブンガーとして生きていたのだ……。


「ダイゴ、私に気を遣わなくていいのよ。この先、素敵な女性が現れたら――」

「ミチルさん、俺が生涯で愛した女は君だけだ。これからも、それは変わらないよ」

「ダイゴ……」


 ・・・


 ここはアルブスの山。下の無法な世界とはうって変わって、豊かな自然に囲まれた場所である。

 そこには、とても奇妙な者たちが住んでいた。


「バクノミヤ、今日もいい天気ね」

 言いながら、車椅子を押す少女はアイジである。まだ八歳だが、黒い髪とよく動く瞳、そして笑顔が可愛らしい。

 だが、車椅子に乗っているのは……顔の右半分を鉄の仮面で覆った、不気味な老人である。

「そうだね、アイジ」

 不気味な姿からは想像もつかない、優しい声を出した老人……だが、実はこの男こそ、天才科学者としてその名を轟かせたバクノミヤ博士なのである。


「ねえバクノミヤ、今日こそは立てるんじゃない?」

 アイジの期待を込めた声。だが、バクノミヤは首を横に振る。

「無理だよ、アイジ。儂はもう老人だ。立つことなんか出来ない」

「そんなことないわ! ミスボーグが言ってたもん、バクノミヤは必ず立てるって!」

「アイジ、お前は若い。これからは何だって出来る。儂のことなど構わず、ベーターと二人で幸せになるんだ」

「嫌よ! 絶対にバクノミヤを歩けるようにしてあげるから!」

 アイジは車椅子を止め、バクノミヤの手を掴む。

「さあ、立つのよバクノミヤ! あなたは、立てるはずよ!」

 バクノミヤは立とうとした。だが、足に力が入らない。どう頑張っても、足が動かないのだ。

 やがて、バクノミヤは首を振った。

「やっぱり無理なんだよ、アイジ」

 その言葉を聞いた瞬間、アイジの表情が変わった。憤怒の形相で、バクノミヤを睨み付ける。

「バクノミヤのバカ! アホ! ヘタレ! いくじなし! こんなに簡単に諦めていいの!?」

「ア、アイジ……儂は、もう歳だから――」

「そうやって歳を言い訳にして、疲れることから逃げてるだけじゃない! 幾つになったって、人は挑戦を諦めちゃいけないのよ! さあ、立って!」

「む、無理なんだ」

 力ない言葉を聞き、アイジの目に涙が浮かんだ。

「バクノミヤなんか……バクノミヤなんか、だいっきらいよ!」

 泣きながら駆けていくアイジ。すると、小屋の中から少年が出て来た。ヤギ飼いのベーターだ。ベーターはアイジを追いかけ、優しく慰める。

 一方、バクノミヤは悲しげな表情でうつむいた。アイジの気持ちは嬉しい。だが、その気持ちに応えられない自分の体が、歯がゆくて仕方ない。

 そんな時、ゴオオオという音が聞こえてきた。誰かと思えば、ミスボーグが空を飛んで来たのだ。

 ミスボーグは、しゅたっとバクノミヤの前に降り立った。顔だけみれば美人ではあるが、頭に生えた触覚のようなアンテナと銀色の衣装が残念ではある。

「ミスボーグ、どうした? おやつの時間か?」

 尋ねるバクノミヤに、ミスボーグは首を振った。

「バクノミヤ博士、大変です。パグガンダーが破壊されました」

「パグガンダーが? 馬鹿なことを言うな。パグガンダーは無敵だ。負けるはずがない。何かの間違いだろう」

「それが……ダイモン・ダイゴとゼブンガーの仕業のようです」

 直後、バクノミヤの顔色が変わった。

「ダイモン・ダイゴとゼブンガー、だと?」

「はい。奴らが絡んでいるのは間違いありません」

「なんだとおぉぉ! くそう、ヤオトメの奴!」

 叫ぶバクノミヤ。と同時に、彼の全身に怒りの電流が走る――

 次の瞬間、バクノミヤは立ち上がっていた。


「バクノミヤが、立ってる……」

 そんなバクノミヤを見て、呆然とした表情で呟くアイジ。

 直後、満面の笑みを浮かべたアイジは、ベーターの手を握って踊り出した。

「わーい! わーい! バクノミヤが立った! バクノミヤが立った!」

 それに合わせ、ベーターも踊る。

「良かったなあ、アイジ! バクノミヤが立てるようになって!」

「うん!」

 手を取り、踊る二人。だが、バクノミヤは彼らを見ていなかった。

「ミスボーグ、チクマ団の復活だ! まずは、チクマ川からジャンボメカ・ゴッドチクマを引き上げるぞ! 早く準備しろ!」

「しかし、ゴッドチクマはパイロットが三人いないと動きません」

「なにい! お前一人では動かせんのか?」

「はい、パイロットがあと二人いないと……」

 ミスボーグの言葉を聞いたバクノミヤは、視線をアイジとベーターに向ける。

 次の瞬間、バクノミヤは走った。あっという間に、二人のいる場所まで到着する。

「バクノミヤ、立てるだけじゃなくて走れるの?」

「早いなあ……」

 驚く二人に、バクノミヤはガシッと肩を掴んだ。

「お前たち、ジャンボメカの宇宙雷帝ゴッドチクマを操縦してみんか?」

「ごっどちくま? 何よそれ?」

 首を傾げるアイジに、バクノミヤは顔を近づけて叫ぶ。

「アイジは知っているのかい! 宇宙の戦士を!」

「し、知らないよう……バクノミヤ、頭は大丈夫かい?」

 不安そうに、横から尋ねるベーター。すると、バクノミヤはベーターにも叫んだ。

「ベーターは知っているのかい! 正義の心を!」

「な、何言ってんの?」

 戸惑うベーター。だが、バクノミヤはお構い無しである。

「よし決まりだ。三人いれば海陸空で合体できるぞ! ミスボーグ、ミケガンダーを呼べ!」

「はっ!」

 敬礼するミスボーグ。

 やがて、轟音とともに巨大なバスが現れる。ただし、車体の前面は三毛猫を模したデザインになっているのだ。さらに、車体の横には猫の足のようなものが付いている。

「ミケガンダー、久しぶりだな。元気だったか?」

 バクノミヤの言葉に、ミケガンダーは喉をゴロゴロ鳴らしながら、顔を擦り寄せていく。普通の人間なら潰されているが、バクノミヤは真正面から受け止めている。

「さあ、行くぞ! 荷物をまとめて、ミケガンダーに乗り込め! 下界に降りチクマ団を復活させ、世界を征服するのだ!」


 そんなバクノミヤを、アイジとベーターは呆れた表情で眺めている。

「もう、バクノミヤはワガママだなぁ」

 ベーターの言葉に、頷くアイジ。

「でも、私たちがいないと……バクノミヤは何をするか分からないわ」

「そうだね。仕方ないから、バクノミヤを助けてやろうか」




 こうして、秘密結社チクマ団が復活した。天才科学者バクノミヤ博士は、ついに世界征服に乗り出したのだ……負けるなダイゴ、戦えゼブンガー。お前たちの戦いは、まだこれからだ――




 世紀末救世主伝説・破裏拳ダイゴ  《完》








 すみませんが、話の収拾がつかなくなりそうなので……ここで、いったん打ちきります(笑)。





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