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短編集だよ!(ボツ作品もあり)  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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18/55

ぼくの兄ちゃん

 ぼくは犬なのだ。名前はシーザー。

 このおうちに貰われてきて、もう一年になる。ご主人さまはマコトさん。とっても優しくて、ぼくを毎日、散歩に連れて行ってくれるんだよ。「こうこうせい」というお仕事をしているみたい。

 そんなぼくには、カッコいい兄ちゃんがいる。名前はアレク。ぼくより体は小さいけど、木に登るのが上手いんだ。動くのも速いし、いろんなことを知ってて賢いんだよ。


 あ、アレク兄ちゃんが外から帰って来たよ!

「アレク兄ちゃん! おかえりなさい!」

 ぼくが吠えると、アレク兄ちゃんは面倒くさそうな顔でこっちを見た。

「なんだバカ犬。馴れ馴れしくするな」

 アレク兄ちゃんてば、いつも素っ気ない態度なんだ。ぼくのこと、バカ犬なんて呼ぶんだよ。自分だって猫のくせにさ。

「アレク兄ちゃん、外で何してたの?」

 ぼくは聞いた。

「隣町のニャー丸が、子分を連れて来やがったんだよ。だから、ちょいとシメてやったぜ。ま、ニャー丸ごとき俺の敵じゃねえがな」 毛繕いをしながら、答えるアレク兄ちゃん。ぼくは、あまりのカッコよさに痺れてしまった。

「へえ! アレク兄ちゃん強いんだね! 隣町の猫をやっつけるなんてカッコいい!」

 言うと同時に、ぼくは突進していた。アレク兄ちゃんと格闘ごっこしたくなったからだよ。

 なのにアレク兄ちゃんてば、ぼくの顔をぺちんと叩いた。

「しゃー!」

 唸るアレク兄ちゃん。痛いじゃないか。ちょっとくらい構ってくれてもいいだろ。

「お前なんかと、馴れ合うつもりは無い」

 言いながら、おうちに上がりこむアレク兄ちゃん。ちぇ、ぼくはそこに行けないのに。ずるいよ。




 次の日、ぼくはマコトさんと一緒にお散歩したんだよ。お散歩は楽しいな! ワンワン!

「おっ、なんだシーザー。楽しそうだな」

 そう言って、頭を撫でてくれるマコトさん。もっと撫でて!

「そうかそうか。お前は可愛いなあ」

 なでなでしてもらって嬉しいなあ! ワンワン!


 マコトさんとたっぷりお散歩してから、おうちに帰ったんだ。そしたら、アレク兄ちゃんが庭でひなたぼっこしてる。

「ただいま、アレク兄ちゃん!」

「やかましい、このバカ犬が」

 アレク兄ちゃんてば、相変わらず素っ気ない態度だよ。

「アレク兄ちゃん、お散歩すごい楽しかったよ! 今度は、みんなで一緒にお散歩しようよ!」

「嫌だ。俺は昼寝の方が好きなんだよ」

 相も変わらず、つれない態度のアレク兄ちゃん。ちぇ、いつもこうなんだよ。ちょっとくらい構ってくれてもいいのにさ。ひどいと思わない?




 そんなある日、大変なことが起きたんだ。

 ぼくはいつものように、おうちで留守番をしてた。すると、外から他の犬の匂いが!

 うわっ、大変だ! おうちに、よその犬が来てるよ!

 それだけじゃないんだ。アレク兄ちゃんの匂いもしてるよ! ひょっとしたら、アレク兄ちゃんがよその犬と戦ってるのかもしれない!

 ぼくはワンワン吠えながら、外に飛び出そうとした。すると、首輪がスルッと抜けたんだ。

 やったぞ! ぼくは大急ぎで、匂いのする場所へと走る!

 すると、そこにはとんでもない奴がいたんだ。

 ぼくのおうちの前で、体のでかい犬がじっと立っている。今まで見たことも無い奴だ。

 でも、それより大変なのは……その犬と睨み合ってるのが、アレク兄ちゃんだってことだよ!

「しゃー!」

 アレク兄ちゃんてば、あんな大きな犬を相手に一歩も引いてないんだよ! しかも、その後ろには小さなメス猫がいる。アレク兄ちゃんは、あの猫を守ろうとしてるんだ!

「おい、お前! アレク兄ちゃんに手を出すな!」

 ぼくは、アレク兄ちゃんと犬の間に割って入った。すると、でかい犬はぼくを睨みつける。

 ううう、すっごくでっかい。ぼくより強そうだ。でも、アレク兄ちゃんを助けるためだ! お前なんか怖くないぞ!

「こら、お前! アレク兄ちゃんをいじめるなら、ぼくが相手になるぞ!」

 でかい犬を睨みながら、ぼくはワンワン吠えた。すると、でかい犬はフンと鼻を鳴らした。

「なんじゃ、お前は」

 でかい犬は、バカにしたような目でそう言った。なんて失礼な奴なんだ。

「ぼくの名前は、シーザーだ! バカにすると、噛みついてやるぞ!」

 吠えると同時に、ぼくはそいつに突撃しようとしたんだ。

 すると、どこからか走って来る人が!

「ヨーゼフだめでしょ! 勝手に走って行ったりしちゃ!」

 言いながら、走って来たのは小さな女の子だ。

 ぼくの目の前で、女の子はでっかい犬を連れて、どこかに行ってしまった。マコトさんより、ずっと小さい女の子だ。なのに、あのでっかい犬の綱を引っぱっている。でっかい犬は、おとなしく従ってるんだよ。

 ぼくは、おったまげて見ているしかなかった。




「おい、お前。今のうちに早く行け」

 アレク兄ちゃんの声が聞こえた。ぼくが振り返ると、小さい猫がアレク兄ちゃんに促され、その場から離れて行く。さすがはボス猫だなあ。

「アレク兄ちゃん、大丈夫?」

 ぼくが尋ねると、アレク兄ちゃんはビクリとなって顔を上げた。

「は、はあ? ぜぜぜ全然ビビってねえから! あああんな犬なんか全然こわくねえし!」

 ん?

 アレク兄ちゃんてば、すっごく変な喋り方だよ? どうしたのかな?

「アレク兄ちゃん、喋り方が変だよ?」

「へへへ変じゃねえし! おおお前みたいなバカ犬の助けなんか必要なかったし!」

 そう言うと、アレク兄ちゃんはおうちの中に入って行った。バカ犬だなんて、相変わらず失礼だよね。




 次の日。

 ぼくは昼寝をしようと思って、庭でうとうとしていたんだ。

 すると、アレク兄ちゃんがとことこ歩いて来た。よく見ると、口に何かくわえてる。

 アレク兄ちゃんは珍しく、ぼくのすぐ近くまで歩いて来て、くわえていた何かをポトリと落とした。

 うわっ、緑色のでっかい虫だよ。アレク兄ちゃんってば、いっつも外に出て行っては虫を捕まえて来るんだよね。

「ほら、俺様が捕まえてきた獲物だ。今日は特別に、お前にも食わせてやる」

 えっ?

 ぼくは恐る恐る、匂いを嗅いでみた。でも、あまり美味しそうじゃないなあ。

「うーん、ぼくはドッグフードの方が好きかも――」

 そう言ったとたん、アレク兄ちゃんにペチンされた。いててて。

「痛いじゃないか、いきなり何すんのさ」

「ふん、お前みたいなバカ犬には、この繊細な味は分からんのだ。もう、お前になんかあげないからな!」

 ぷりぷり怒りながら、おうちに入っていくアレク兄ちゃん。何を怒ってるんだろう? 変なの。

 まあいいや。ぼくは目をつぶる。今はお昼寝の時間なのだ。

 うとうと……うとうと。

 おやすみなさい。







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