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 「どうして私の居場所が分かったんですか?」


 茉莉花は珍しくドリンクにカクテルを注文していた。甘いそのカクテルを飲み、塩気を欲した茉莉花は人気の半熟卵とベーコンが乗ったピザに、追加でモッツアレラチーズを乗せたものを手に取りながらベルナルトに尋ねた。ベルナルトは呆れた様に大きく溜め息を吐いた。


 「学習能力の低い女だ」

 「酷い! 何ですか! その言い方!!」

 「右手」


 茉莉花はピザを持ちながらもあっと声を漏らした。そしてムスッとしてピザを頬張ったのだ。


 「どうせ、私は、馬鹿ですよ!」

 「馬鹿とは言っていない。学習能力が低い、と言ったんだ」

 「どう違うんですか!」

 「君は聡明で感情豊かで面白いし気の利く女性だと私は思っている」


 茉莉花はその言葉に口を開き持っていたピザを落としかけた。


 「な、なな、何!?」

 「ただ、それに加え鈍感というか、考えが甘いと言うか……。そういった面もあると言いたいだけだ」

 「そりゃ私はベルナルトさんからしたらお気楽かもしれませんけど……」

 「それでいい。君と居ると私もお気楽になれる気がするから、リラックスになる」


 茉莉花は赤くなった頬を膨らましながらもピザを食べた。


 「リスみたいだな」

 「喋ってないで食べたらどうですか! さっきから全然食べてないじゃないですか! 私が全部食べちゃいますよ!?」

 「それは困るな」


 ベルナルトはクスクス笑いながらも、自分の前に置かれていたエビやアボカドの乗ったピザをそれとなく茉莉花の前に出した。そして自分は茉莉花の食べている物と同じピザを手に取り口に含んだのだ。


 「美味しいですか?」

 「ああ。美味いな。この大雑把な味付けも中々癖になる」

 「……素直に褒められないんですか……」

 「褒めたつもりだが?」

 「もういいです」


 はぁ、と溜め息を吐いた茉莉花はもう一つのピザに手を伸ばした。


 「んぅ、美味しい」


 幸せそうにピザを頬張る茉莉花をベルナルトは微笑んで見ていた。


 「ところでジャスミン、こんなところで何をしていたんだ?」


 茉莉花はその質問にドキッとして膝の上に置いていたカバンを握った。サプライズでベルナルトにチョコレートをプレゼントしたかったのだ。


 「えと、買い物とか……?」

 「何を買ったんだ?」

 「色々……。カフェにも行きました! コーヒー美味しかったです」

 「よかったな。で、何を買ったんだ?」

 「う……」


 (意外としつこいな)


 茉莉花はベルナルトから目線を逸らした。ベルナルトは追加でワインを頼んだ後茉莉花を真っ直ぐに見据えていた。


 「ジャスミン」

 「色々なの! 秘密!」

 「私のカードを使ってか?」

 「使っていいって書いてあったじゃないですか! その内教えてあげます」

 「今、教えて欲しい物だな?」

 「嫌! 教えません! 変な物じゃないもん! それにそんなにお金は使ってません!」

 「別に金額はどうでもいい。欲しい物があるなら何でも買ってくれていいんだぞ? 私はただ君が何をしに来たのか興味があるだけだ」

 「……すぐに分かりますよ。お願いですから、ちょっとだけその好奇心を抑えといてください!」

 「まぁいいだろう」


 ベルナルトはクスクスと笑い、茉莉花はムスッとして一気にカクテルを飲み干したのだった。


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