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***



 ベルナルトは苛立たし気に眉を寄せ車を運転していた。赤信号に引っかかると舌打ちをし、時計を確認した。夕方を過ぎた頃、道は込み始め思うように進めなくなっていたのだ。その事がまたベルナルトを苛立たせていた。


 (くそっ、新婚旅行だと言うのに、私は一体何をしているんだ! 茉莉花……。昨日のあの態度はやはりショックだったんだろうか? きっとヴァチカンに行きたかったんだろうな。残りの日程も少ないと言うのに貴重な一日を……!)


 「くそっ……!」


 信号が変わると共にアクセルを踏みベルナルトは宿泊しているホテルを目指した。


**


 「なに? 居ないだと?」

 「申し訳ありません……。出かける際は一声かけるとおっしゃっていらしたのですが、いつの間にか出かけられたようで……。レセプションの係りの者の話ですとお土産を買いに行かれたようです。他のスタッフに探させたのですが見当たらずに……」


 ベルナルトはホテルの部屋で眉間に皺を寄せ舌打ちをした。ベルナルトの部下は申し訳なさそうに何度も頭を下げていた。ベルナルトは腕に目をやった。時間は五時半を過ぎていた。外を見たベルナルトは部屋に置いてあった荷物から分厚い黒い端末を取り出し、踵を返し部屋を出ようとした。


 「どちらに?」

 「もう暗くなる。彼女を迎えに行く」

 「ではお車をお出しします」

 「いい。自分で行く」


 それだけ言うとベルナルトは足早に部屋を出た。


 (帰る前に電話をすべきだった……!)


 エレベーター内でベルナルトは手のひらよりも大きな端末のアンテナを引っ張り出しその中の画面をのぞき込んでいた。


 「この辺りは……」


 ベルナルトは目を見開きエレベーターが着くとともに駆け足でホテルを後にした。



***



 「ああ、やっぱり迷子になっちゃった」


 茉莉花は暗くなり始めた事に不安を覚えようやくガイドブックを取り出した。もう、自分がどこに居るのかもよく分からないのだ。誰かに聞こうにも先ほどから人通りは無く、どうしていいのかも分からないまま茉莉花は路地を歩いていた。


 (とにかく大通りに出よう。そしたらタクシーもあるだろうし、人も居るよね。どうにかなるはず)


 「こっち、かな……?」


 茉莉花は分からない道をキョロキョロとして歩いた。住宅街の様だった。店も無かった。住人の姿は見えずとも、美味しそうな温かい料理の匂いがしていた。


 「うーん……」


 唸り声をあげ、分かれ道で立ち止まった茉莉花は地図と睨めっこをした。首を傾げガイドブックを見ていると不意に力強く腕を掴まれ引っ張られたのだ。


 (え……!?)


 茉莉花は目を見開き途端に体を強張らせた。持っていたガイドブックを落とし、恐る恐る腕を引いた人物を見たのだ。


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