鳥籠の外へ 4
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「きゃっ!」
茉莉花は足元の岩に手を付きしゃがみ込み、間一髪のところで川に落ちる事を避けた。ふぅ、と息を吐き額に流れ出た汗を腕で拭っていた。
川の中腹まで岩々を渡って来た茉莉花は後ろを振り返り、唾をのんだ。
(怖い……。でも、引き返せない。それにもう引き返すのも進むのも同じ距離だし……)
すっかり日は落ち始め辺りは赤くなっていた。木々が生い茂る川の近くでは日が落ちてしまうと真っ暗になってしまう。それが命取りになることを茉莉花も分かっていた。屈んでいた体を起こして茉莉花は次の岩を見つめた。
(少し距離がある。思いっきり飛べば簡単なんだろうけど、どうしよう……)
茉莉花は震える足に活を入れるように、膝を叩いた後手を付き深呼吸をしていた。滑る岩々を相手に苦戦を強いられていた。それでも茉莉花は進むことを決め、片足を半歩下がらせ飛ぶ準備をした。
「茉莉花!!」
その時だった。茉莉花は川の流れる音にもかき消されない程の大きな声で呼ばれ、体を震わせた。下がらせていた足を戻し後ろを振り返ると、そこには心配そうに目を見開き茉莉花を見ているベルナルトの姿と、こちらも驚き目を見開くエドモンドの姿があった。
(見つかった……!)
茉莉花は焦り混乱した。
「何をしている!? 危ないからそこから動くな! 今行くから!!」
ベルナルトは必死の形相で岩を渡り始めた。茉莉花同様滑る岩を渡るのは困難で顔をしかめては居たが、茉莉花程苦戦はしていなかった。
「来ないで!!」
縮む距離に焦りを感じ茉莉花はベルナルトに叫んだ。ベルナルトは一旦動きを止め茉莉花を凝視した。
「お願い来ないで!!」
茉莉花はそう叫ぶと急いで岩々を飛び移った。もう少しで対岸というところで、焦って次の岩に飛び移ろうとした。
「茉莉花!!」
「ひっ! きゃっぁ!」
だが焦りのせいか茉莉花は足を滑らせ流れの速い川へと転落した。
(ヤダ! どうしよう!! 深いよ。誰か、助けて!)
転落する直前息を思いっきり吸い込み口を閉じていた茉莉花は、ついでに目も固く閉じた。ジタバタともがくものの川の流れに逆らうことは出来ずにいた。
(怖いよ……。苦しい。私、泳げないのに)
ゴポゴポと息を吐き出しながら茉莉花は目に涙を溜めていた。
(私、死んじゃうの?)
そう思っていると腰に温かな何かを感じた。それはしっかりと茉莉花を支え、茉莉花の顔を水の中から引き上げた。
「はぁ……!! はぁ! ゲホッ! う、ゲホ!」
「茉莉花! 茉莉花!! 大丈夫か!?」
「ベル、ナルトさん……?」
ベルナルトは茉莉花が川に落ちると同時に行動をとった。足早に岩を渡り、茉莉花が足を踏み外した位置から川へと飛び込んだ。茉莉花を捕まえると、近くの垂れ下がっていた木の枝につかまったのだ。
「暴れるな。大丈夫だから、私に掴まっていろ」
茉莉花はコクコクと頷くと両手をベルナルトの首に回し、必死にしがみ付いた。
「ベル!! ジャスミン!!」
遅れて岩々を飛び越え対岸に降り立ったエドモンドが駆けつけ手を伸ばした。ベルナルトは片手で茉莉花の背を押し、エドモンドの手の届く位置に近づけた。
「茉莉花を先に」
「ああ、ジャスミン手を伸ばして」
「で、でも……」
「大丈夫だから、ちゃんと俺が掴むから」
茉莉花はおずおずとベルナルトから手を離しエドモンドの手を力強く握った。エドモンドは力いっぱい茉莉花を引き上げた。
「はぁ、はぁ」
「大丈夫!? ジャスミン怪我してない?」
エドモンドはそう言い着ていたジャケットを茉莉花に掛けた。
「大丈夫……。ベルナルトさん」
エドモンドは頷くと茉莉花から離れベルナルトを引き上げようと川に近づいた。
ベルナルトは茉莉花が無事にエドモンドに引き上げられたことにほっと息を吐いていた。そして自分の状況が良くない事に顔を歪めていた。ベルナルトの掴まっている枝は大人二人を一時的にとはいえ支えていたせいか今にも折れそうだった。パキパキと小さく鳴る音を聞きながらベルナルトは自身が助かる術を考えていた。
「ベル!!」
駆けつけたエドモンドはベルナルトに手を差し伸べた。ベルナルトがその手を掴もうとしたその瞬間枝は音を立て折れた。




