大嫌いな鳥籠の中 3
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あの後茉莉花はベルナルトに服を剥ぎ取られ椅子に縛り付けられた。いつかもそうされたように無理矢理だった。だがあの時とは違いベルナルトはきつく茉莉花を縛り付けたのだ。茉莉花にはそれが痛かった。
何度解放して欲しいと言ってもベルナルトはそれを良しとはしなかった。ただ茉莉花の前に座り茉莉花を眺めていた。途中からは茉莉花の前で、持っていた書類に目を通し仕事を始めたのだ。
茉莉花は必死に自分を縛る紐から抜け出そうと足掻いた。だがその度に縛られた箇所は食い込み擦れて茉莉花に痛みをもたらした。ベルナルトはそれを、口角を上げ眺めていたのだ。
ここに来るまで誰にも見せたことのなかった全裸を無理矢理晒され、それを食い入るように眺められている事に茉莉花は耐えられなかった。それでもベルナルトの思う通りにはなりたくなくて茉莉花は必死に耐えていた。
どれくらいの間そうしていたのか分からないがその時、ベルナルトに一本の電話が入った。仕事の電話だった。ベルナルトは一旦受話器を置くと茉莉花に詰め寄ったのだ。
『茉莉花、私は仕事に出かけなければいけないようだ。だが君がどうしてもここに居て欲しいと言うなら仕事は断る』
茉莉花はようやく解放されるのかと期待した。だがそれは次のベルナルトの言葉で打ち砕かれた。
『帰ってくるのには早くても三時間ほどかかる。もしかしたら明日になるかもしれないが、君はそのまま待っていてくれ』
ニヤリと笑い見下げるベルナルトを茉莉花は顔を赤くさせ睨んだ。
『君のそんな姿を誰かに見せるのは忍びないが、私が居ない間使用人が来るかもしれないな? 帰りが明日になるのなら君を解放する様に使用人に言わなければいけない』
茉莉花はその言葉を聞き一気に血の気が引いた。誰にもこんな姿は見られたくなど無かった。ましてベルナルトに晒すことも嫌なのに彼以外に晒した事の無い全裸を、誰かに晒す事にかなりの抵抗があった。
『大抵君に会いに来るのはチェンだろうが……。ああ、そうかチェンは休暇で居ないんだったな』
茉莉花はその言葉を聞いて目を見開き更に顔色を悪くした。チェンならばまだ耐えられた。だがそれ以外の使用人に、こんな惨めな姿を晒したくなど絶対になかった。茉莉花は目に涙を浮かべてベルナルトを見た。
『そろそろ電話の相手を待たせるのも悪い。どうした茉莉花? 何か言いたいのか?』
わざとらしく口角を上げ聞いてくるベルナルトに、唇をきつく噛みしめた後茉莉花は口を開いた。
『――ないで』
『何か言ったかな?』
『っ! 行かないで!!』
ベルナルトはクスクスと笑いだすと茉莉花の顎を持ち、目を合わせた。
『どうしてだ? あんなに私を避けたがっていただろ?』
『お願い! もう解いて……! このまま何て嫌よ! もう許して……!』
茉莉花はついに涙を流してベルナルトに縋った。ベルナルトは嬉しそうに微笑んでいた。
『ならどうすべきか分かってるだろう?』
『ごめんなさい! もう許して! お願いだから、もう、許して……!』
『違うだろう? 茉莉花。私と一緒に居たいんだろ? なら素直にそう言え。そうすれば私はここに居る。君が望むのなら傍に居る』
茉莉花は唇をきつく噛んだ。ベルナルトは茉莉花の頬を撫でると、早くしないと仕事に行く、と茉莉花を急かした。茉莉花は意を決したようにベルナルトを虚ろな目で見つめると歪んだ笑みを浮かべた。
『ぐすっ、行かないで、お願い。一緒に居たいんです』
そう言うとベルナルトは口角を上げ、置いていた受話器を取り電話に戻った。
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「ふぇっ、う、あ、わぁー!! ああーっ!」
茉莉花は収まりかけていた涙を流し、声を上げて泣いた。茉莉花の目から流れた涙はシャワーによって流されていく。
『私の事が好きだとそう言え』
茉莉花は耳を塞いだ。だが耳を塞いでもシャワーの音が反響していても、その声は茉莉花の中から消える事は無かった。無理矢理ベッドに押し倒され、抱かれ、ベルナルトに見下げられて言われた言葉だった。
茉莉花の体は更に震えた。耳を押さえながら更に体を折り丸くなった。何度そうしていても頭の中で響くベルナルトの声は消えなかったのだ。
「大嫌い、大嫌い、大嫌い!!」
そう叫んだ茉莉花の声は風呂場に反響していた。
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『っ! 貴方なんて、大嫌い! 最低よ! 大っ嫌い!!』
茉莉花は潤む視界でベルナルトを見てそう言っていた。ベルナルトは少し眉を下げて茉莉花を見下げ、それ以上は何も言わなかった。
事が終わるとベルナルトは横たわり泣き続ける茉莉花にペットボトルの水を差し出した。茉莉花はそれを跳ね除けた。ベルナルトは床に転がったペットボトルを拾うとベッドサイドのテーブルに置いた。
『茉莉花、風呂に入って温まって来い』
冷たくなっていた茉莉花の体を起こしたベルナルトは茉莉花を風呂場に押し込み、風呂場の扉を閉めたのだった。




