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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役勇者の復讐 中編

作者: 向日葵

誰かが、よく通る声で言った。


「この女は勇者を騙り、本物の勇者であらせられるマキ=ノワール様の心をいたく傷つけた。その罪は許し難いものである。よってこの女を絞首刑とする!!」


ああ、そう言えば私はノワール家の養女だった。

勇者を異世界召喚するというのは、国際的に避難は免れないらしい。


なぜ避難は免れないのか、考えたこともないのか。


ああ、可笑しい。おかしくておかしくてたまらない。


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


ああ、私にもまだ嗤うだけの力が残っていたのか。

好都合だ。


「おい、その女黙らせろ!!」


グイッと、思いきり紐を引っ張られた。私は抵抗もかなわず、倒れた。


「グッ、げほっごほっ。」


「チッ」


「おら立て!!」


うでを掴んで立たされる。


ああ、ニクイ。


ニクイ。ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ。





絶対に、ユルサナイ。







私はまた回想する。















魔王討伐の旅は、案外単調なものだった。


困っている人々を助ける。

悪い魔物を倒す。

魔族を倒す。

獣族を倒す。


倒す。倒す。倒す。倒す。倒す。倒す。倒す。


その繰り返し。


魔族や獣族と呼ばれるモノたちは、そこまで人間と異なっているわけではなかった。ただ人より力があり、魔力が強いだけ。そして、人とは違う一部分を持っていただけだった。


日本にいた平々凡々な女子高生の私がいきなり人と少し違うモノを倒せと言われた。勇者だから、できるだろうと。


ふざけんな。何が勇者だ。


だけど私は帰りたかった。帰って、お父さんとお母さん。お姉ちゃんやお兄ちゃんに会いたかった。だから、殺した。


殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。


魔王城の近くで、私は言葉を聞いた。


仲間達の会話。

わたしをどのように殺そうか、という会話は、聞きなれたものだった。


だけどその日のその言葉だけは、聞き逃せなかった。


「いっそのこと、送還陣に見せかけたトラップにはめて殺すってのはどうだ?」


「どうせ」


「あいつを還す送還陣なんて」


「ないんだしよ。」


「それはいいかもしれませんね。あの化物には、一番効果がありそうですし。」


「うんうん。脳筋にしてはいいこというじゃないの。」


ああ、やっぱり。


どこかで悟っていた言葉。


私はその時あることを決意した。



その次の日。


私は魔王を倒した。


凄まじい戦いでもなく、あっさりしたものだった。



魔王は、ほとんど人と変わらなかった。

ただ少しだけ耳が長い。それだけだった。







ざくり、と言う音がして。

心臓あたりを貫いていた。

崩れ落ち、こちらを抱きしめるように落ちてくる魔王を抱え、私は呟いた。




「ーーーーーーーーーーーー。ーーーー。ーーーーーーーーーー、ーーーー。」


そして、魔王は倒された。


私は、勇者として、王国に帰った。


そして、仲間達が行っていたとおり、トラップで牢獄に送られた。


続く

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