episode6
――夜。
昨日と同様に公園を歩く早紀。
「早く出てこいよ変態が……。こっちはさっさとお家に帰ってディナーにしたいのニャ……」
「これから変態さんの相手をするのかと思うと気が滅入るわ……」
少し眉間にしわを寄せつつもゆっくり足を進めていく。
公園には人気が無く、まさに変態出現にもってこいといった環境が整っていた。
ポツンと灯る街灯が不気味さをかもし出す。虫も空気を読んでなのか、一切鳴くことなく、静けさを保ってくれていた。
「はぁ……」
深いため息をつく早紀。
「どうかしたニャ?」
「私以外の高校生が青春時代を謳歌しているというのに、私ときたら時間を削ってまで変態退治に身を捧げないといけないのだから、つくづく人生って不平等だなって思って」
「これもまた人生ニャ。早紀にしかできないことニャ」
「でもよく考えてみたらあんたが私の前に現れなかったら、こんな魔法使えることにならなかったわよね。あーあ、どうしてあんたに出会っちゃったかなー私……」
ある日、この黒猫に出会い、そしてこの時を操る魔法を手に入れた。
最初はすごい力だと思って感動した。……しかし、私生活を送る上で別段必要になるものでもないということに気づくのにそう時間はかからなかった。
そうなると次に問題になるのが、この能力を手にしたことで、できること――というよりはしなくてはいけないことが増えたことだ。今回の場合は、この頻繁に出没する変態退治というわけだ。
クロは私にこの能力を使ってもらうことを期待しているわけだが、もちろん私自身の意思でそれを否定することもできる。だが、それはできなかった。
「こんばんはぁーお嬢さーーーーんっ! タイミング早いかもしれないけど変態さんの登場だよっ! って変態さんは俺のことか、ッテヘ♪」
不快な笑みを浮かべて目の前に忽然と奇怪な男が姿を現した。
大きな丸の顔の下に、不健康そうなずんぐりむっくりの丸っこいボディ。だらしのないダルマのような体躯の男が早紀の前に立ちはだかる。
「ラッキーだね、早紀! 変態さん自らおいでなすったのニャ」
「変態を探す手間が省けたのだけは、素直に喜んでおくことにするわ」
私の持っているこの時の魔法。このトンデモナイ力に頼ることで、私は一見どうみても勝ち目のなさそうなこの大男にでさえ勝つことができる。
普通の人には為しえない事を私だけがすることができる。すごく間接的だけど、私は人のために戦うことができる。
「悪いけど、あんたの変態的行為も今日でお終いよ」
眼前にその男をまっすぐ見据えて、早紀は臨戦態勢に入る。
「グフフフフ……」
男は相変わらず奇妙な笑みを浮かべて目の前の少女をじっくりと観賞していた……。
更新が停滞気味ですが、とりあえずひと段落つくまで頑張ります。