episode5
放課後の教室。太陽が地平線の下にもぐり、夕焼けの光が差し込んでいた。
光と影がくっきりと映し出された教室の中は、夕方独特の雰囲気を醸し出していた。
「あの変質者あれで懲りてなかったのね、こらしめなきゃ」
広い教室に一人ポツンと席に座って早紀はつぶやいた。
「いや、昨日も言ったけどあの人は違う。それよりもオレはあのあと感じた感覚が気になるのニャ」
早紀の前の机にクロがいた。夕焼けに照らされてもなお黒いその黒猫は、ゆったりとくつろぐようにして
転がりながら言った。
「感覚?」
早紀はそう聞き返して、頭をほんの少しだけ斜めにかしげた。
「魔法使い同士が感じる感覚なんだけど。サキは何も感じなかったか?」
「全然。ごめんなさいね、ひよっこの魔法使いで」
まったくそんな気配は感じなかった。それが早紀にはちょっとだけくやしかった。
「まあムリもないニャ。向こうは気配を消していたからその感覚もすごく微弱なものだったからな」
「そうなの」
「ああ。そんな芸当ができるのはそれなりの魔力を持った魔法使いということになる。もし今日そいつ
と戦うことになったら、なかなか厄介だな……」
クロは深刻そうに言う。
「もしも危なくなったらそのときはクロ、あんたに任せるから」
「オレはあくまでサポート。戦闘はからきしなのニャ……」
「どうしてよ」
「どうしても!」
早紀とクロでしばしにらみ合いが続いた。が、やがてどうにもならないと悟り、
「……分かってるわよ。私が戦うしかないっていうんでしょ。……やるわよ」
「うぉ〜。サキちゃんカッコイイィ〜!」
「……すごくやる気なくすんだけど?」
「ゴメンナサイ」
「今日も夜まで待たないといけないのよね」
早紀がしんどそうに言った。相変わらずムッツリな表情のまま変化はない。
「うむ、変態出現タイムは昔から夜と決まってるからな」
「おとなしく寝てろっての」
心の底から怒りを込めて言っているようだった。
「サキちゃん口が悪い」
「そのちゃんってのやめて」