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妖精日和、カラメル気分。  作者: 沙φ亜竜
第1章 妖精さん、いらっしゃい
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-8-

 今日も麻実子ちゃんとたくさん話せたな。美化委員のある日は、やっぱりいい。

 反対に、他の日は全然話せないけど……。

 麻実子ちゃんとの会話を思い出して、俺はちょっとニヤついたりしながら歩いていたのだろう、唐突にツッコミが入る。


「なにひとりでニヤニヤしてるんだか。気持ち悪いよ」


 言うまでもなくプリンだ。すっかり存在を忘れていた。

 こいつは俺から離れられないのだから、どこか近くに潜んでいるのは当たり前だった。


 気持ち悪いなんて言っているくせに、プリンは俺のそばに来るなり腕を絡めてきた。


「こらこら、まだ学校から近いんだから、誰かに見られるかもしれないだろ?」

「もう下校中の生徒なんてほとんどいないって。それに、ずっと言われたとおり離れて隠れてたんだから、これくらい許してよ」


 まぁ、いいけどさ。

 それにしても、隠れてたといっても、あれじゃあ……。


「ほむ? 上手く隠れてたつもりだったんだけど……。ダメだったかな?」

「いや、ダメとは言わないけど。今後はもう少し考えて、なるべく見つかりにくいように隠れてくれるか?」


 明らかに不満そうな顔になるプリン。


「ほむ。でも、しっかり隠れたりすると、優歩と麻実子の様子が見れないじゃん」


 やっぱり、のぞいていたのか。


「そりゃあ、面白いしね♪」


 プリンはコロッと笑顔に戻って、きっぱりと言い放った。


「べつにいいでしょ? キミのドキドキは、オイラのご飯みたいなものなんだよ? だいたい、ちょっと手伝ってあげたっていうのに、文句言うなんてひどくない?」


 ああ、そういえばそうだった。

 あの教室のゴミの件は思ったとおり、というか他には考えられなかったけど、プリンの仕業だったというわけだ。


「うん、それは感謝してるよ。ありがとう」

「ふんっ」


 突然の感謝の言葉に驚いたのか、プリンは赤くなって顔をそむけていた。


「ご褒美に、苺ミルクをおごってやろう」

「ほんとかい!? やったぁ!」


 こんなことでよくそこまで喜べるな、とも思ったけど。

 それがこいつ、プリンってやつなんだ。


 可愛い顔をした、妙な口調の守護妖精。

 いきなり俺の目の前に現れ、そのままなにやら居座って、学校にまでついてきて……。

 こんな状況になって戸惑いはあるけど。


 これはこれで楽しくていいかもしれないな。

 苺ミルクを幸せそうに飲んでいるプリンを見ていると、そんなふうに思えてしまう。


「これからも、いろいろ手伝ってあげるよ!」


 苺ミルクを飲み終えたプリンは、いたずらっぽいニヤニヤ笑いを浮かべながらそう言った。

 それはありがたいと思うのだけど、プリンのこの面白がっているだけのような笑顔を見ていると、とんでもないことをしでかしそうで、ものすごく怖い……。

 そんな俺の不安をよそに、プリンはよりいっそうの輝かしい笑顔をこぼす。


 もう地平線近くまで落ちかけている夕陽は、腕を組みながら歩く俺たちふたりの姿を赤く染め上げていた。


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