二人の関係
和華子は米山にますます惹かれていった。少しエッチが過ぎるところも感じていたが、何よりも気持ちがストレートで心に一点の曇りもないところが彼女にとって彼の最大の魅力であった。
和華子はまだ子供であったが、早く米山のお嫁さんになりたいという気持ちで一杯だった。しかし、そこには、年齢の問題以前にどうにもならない二人の関係が存在していた。
……ライスは人間、私は幽霊……
この世の人間が幽霊と結婚したなどという話はついぞ聞いたことがない。だいいち、結婚できたとしても生まれる子供はいったい何なんだ。
「僕、生まれてきたけど、本当は死んでるんだよ」
生きてるのか死んでるのかいったいどっちなんだ!!
いつ別れるかも知れないが、今の時を味わい、愉しむことしかできない。和華子はそのことを考えるととてつもなく悲しくなってきた。
物心ついた頃からいつでも一人ぼっちだった和華子。
たった一つ、大空が友達で、いつも見上げていた和華子。
そんな彼女にとって、米山の存在はこれまで一度も味わったことのなかった家族的な安心感を与えてくれていた。それは、常に自分のことを気にかけてくれる人がいる、という安心感に他ならない。
決して米山と離れたくない。その気持ちには、和華子の大好きな大空を突き抜けて黄泉の国まで届くような勢いが感じられた。
……そうだ。私は大人なんだ。こうしてはいられない。ライスともう一度レストランでフルコース料理を食べて、そのあとまた、私はライスと結ばれるんだ……
和華子は米山と別れる前に彼の住所を訊き少し驚いた。
彼の住所は和華子が崖から落ちたあとに目を覚ました寺院の住所そのものだったのだ。
「お寺さんの息子さん? 」
米山は二人の間の『空気』を見つめたまま何も答えなかった。