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誘われて……

 校門を出てすぐ和華子は同じクラスの数人の男子生徒に取り囲まれ、そのうちの一人に声を掛けられた。

「和華ちゃん。今日は一緒に映画でも見に行こうか」

 和華子が男子に誘われるのは中学三年間でも初めてで、彼女は信じられないような顔をしていたが、すぐに下を向いて言った。

「私、お金ないんです。ごめんなさい」


……また、からかってるんだ……


 声を掛けた男子生徒がにこにこしながら言った。

「いいよ。お金は。貸してあげるから」

 和華子の月二千円のお小遣いでは借りても簡単に返すことはできない。それでも彼らは和華子を取り囲んだままなので彼女はついていくことにした。

 和華子は声をかけた男子生徒の自転車の荷台に乗せられた。


 その自転車は電動アシストだったので、上り坂も和華子を乗せてすいすいと登っていった。そして映画館のある繁華街と正反対の方向の丘の方へと進んでいった。

 和華子は丘の上で男子生徒に『さあ降りて』という言葉をかけられて、ようやく自転車が全く逆の方向へ来ていることを知った。そこには学級委員の祥子が立っていて、微笑みながら和華子へ声をかけてきた。

「和華子。あんた、今年は鳥になって飛ぶって言ってたわよね。さっそくやって見せてくれる?」


 実に意味のない子供じみた『いじめ』である。

 和華子は立っている位置から下のほうを覗き込んだ。そこは数十メートルの切り立った崖のようになっていて下のほうは木が繁ってその先はよく見えない。

「できなかったらその髪を金髪に染めて明日学校へ行くのよ」

 ずるがしこい祥子は決して自分で直接手を下したりはしない。常に先生や学校側の制裁によっていじめを実行するのだ。

 和華子は何となくうつろな目をしていた。そしてその目は大きな空に向けられていた。

……鳥かあ。本当に鳥になって大空を飛び回りたいなあ……


 和華子は五・六歩後ずさりし、大きく両腕を広げ、そこから全力で走り出した。

 そして、一瞬の後、崖の下へと消えていった。


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