第十話 聖女の守護結界と急報
王都の大通りを、馬に乗った騎士たちが美しい隊列で行進していき、沿道の群衆が激励の言葉を投げかけていた。
王太子ユリウスと、騎士団長カイの率いる王国騎士団が、辺境の防衛戦のために、ついに出陣するのだ。
クローデリアは騎士団の行進を眺めながら、王国が防衛され、騎士団が無事に戻ってくることを願った。万が一、それが叶わなくとも、カイだけは無事に帰ってくるよう、強く祈った。
辺境の防衛戦は激化している、と王都にまでそんな噂が広がっていた。辺境の町はひどく荒れ果ててしまっているとも。
しかし王国騎士団が投入された今、王都の誰もが勝利を確信していた。彼らにとっては辺境が被害に遭うこと自体に何も感じなかった。辺境とは、むしろそのために存在する場所だった。
その辺境の状況と対照的に、王都はにわかに活気を帯びていた。
セラフィナから侮辱を受けたあの日から、エリシアは一層、人々の治癒に勤しみ、高度な魔法の研究に励むようになった。
クローデリアが面会できることも少なくなっており、彼女を不安にさせた。
しかし、まるでセラフィナの侮辱やクローデリアの不安を打ち消すかのように、明らかにエリシアは聖女としての力を増していき、王都の民の、聖女への信頼と信仰心は強まっていった。
王都の民を特に感嘆させた奇跡があった。
——聖女の守護結界。
高度な魔法陣と、聖女の高い魔力によって構成された結界は魔物や外敵をまったく受け付けず、もはや門番すら要らなくなった。
その上、守護結界内の王都の民たちは、病や傷への耐性や回復力が向上し、まるで常時「強化」がかけられているかのように漲る力を感じ、王都の経済活動も活発になった。
王都は聖女の奇跡に沸き、繁栄を謳歌した。
もはやセラフィナのように聖女を侮辱する者たちは相手にされず、陰をひそめていった。
王都の傷病者が激減したため、聖女エリシアは辺境の者たちの治療を申し出たが、グレゴールは相変わらず、一定の金品を納められない者の治療は許可しなかった。
代わりに、エリシアは辺境の戦地から送り返されてきた兵士たちの治癒を主に行うようになった。そしてその治療費は王政府が支払ったのだった。
それにより聖教会はますます名声を上げ、富を増やしていった。
エリシアと会う機会が減り、大聖堂から遠のくようになったクローデリアはそうした聖教会の状況を知らず、王都の平和に浸かり、グレゴールのことが意識に上がることも少なくなっていった。
ただ、辺境のカイのことを心配することだけは変わらず、早く戦争が終結することを願っていた。
そんな平和な王都に、ある日激震を起こす報せが入った。
——王太子ユリウスが、戦場で重傷を負って危篤。




