第一話 王妃の断罪
王城前広場に設けられた壇上に、若き王妃クローデリアが立っていた。
観衆の無数の目は、クローデリア一点に集中していた。
クローデリアの前方には、王家騎士団の騎士団長カイ・グレイブが立ち、断罪されようとしているクローデリアを守るかのように観衆に睨みを利かせていた。
クローデリアの隣に進み出てくる男の姿があった。それはかつて第二王子であったレオンハルト、現国王その人であった。
クローデリアは昔を懐かしむ。自らが公爵令嬢であった頃のことを。
今さらその頃に戻りたいとは思わなかったが、あの頃はまだ穏やかな日々を送れていたように思う。
クローデリアの人生が狂い始めたのは、聖女エリシア・ブランシェに出会ってからだ。それだけは疑いようがない。しかし……恐ろしく日々が充実し、生の実感があった。
「王妃クローデリア・ヴァレンティア、国王暗殺未遂により、ここに断罪する」
国王自らがクローデリアをそう告発した。
ある者は悲鳴をあげ、ある者は罵声をクローデリアに浴びせる。
クローデリアに石を投げるものがあり、カイが前方で盾のようにそれを体に受け、あるいは払った。
——あなたはまだ私を守ろうとしてくれているのね。心に深い傷を負いながら……。
カイの顔には困惑と憔悴の色が見てとれた。カイを見るクローデリアの目には、憐憫だけではない感情が浮かんでいた。
「国王の暗殺は重大な反逆罪である。王妃クローデリアを処刑とする」
レオンハルトはそう言葉を続けた。
法務卿すら同席せず、裁判も何もない。レオンハルトはただクローデリアを排除したいだけなのだ。暗殺未遂の真犯人も知らぬまま。それでも……
——この場で、すべてが終わる。
観衆の中から一人の女性が壇場に近づいてくる。
カイは警戒し、腰に差した長剣に手をかけようとし、止めた。
その女性は救国の聖女、エリシア・ブランシェだった。
「その処刑、お待ちください」
そうしてエリシアが観衆のすべての注目を奪った。




