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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: 関沢賢吉


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 勝様も賢い人。その人がB/Sを理解するのに半年もの期間が掛かったのには、当然理由がある。その最たるものは地震。また死ぬかと思った。1度目は事故死、2度目は災害死。覚悟したけど、無事生き残った。そして、地震を味わってようやく思い出した。「幕末ってペリーが来たり大地震が来たり激動だな」って、日本の歴史の欄外を見て、思ったことを。


 下田も寺こそ無事だったみたいだけど、魚を譲ってくれた漁師さんたちに犠牲があったみたいだ。何よりも江戸。調所も船の試作品にも損傷があった。みんなその後処理が終わらない。火の犠牲にならず、蘭書を守れたことだけが唯一の救い。それもあって、再度みんなが夢中になれるデカいテーマが欲しかった。あの人らは自分の足元での災害による復興よりも、今までやったことがないことにチャレンジすることこそ生き甲斐の人たち。大袈裟だけど、夢を見せたい。もちろん職人さんたちにも。


 その一方で、江戸は人が多すぎる。以前何かで読んだ気がするのだが、この時代の江戸は一都市としての人口が世界一だったみたいな文章。いつどこでなぜ見たかうろ覚えだし、合ってるのかどうかも知らない。とにかく最近は、人の増加こそないけど実験場、試作場、そして議論を交わす調所、蔵書場所、スペースが増やせないのに物だけは着実に増えていく。この際だから、移転させてはどうかと申し出た。江戸から遠すぎず近すぎず。土地が広くある、適度な田舎。川崎は宿場町だし、横須賀はペリーのせいで幕府が占拠してる。一方、史実に反して開港させてない土地がある。横浜村が適してると進言。試作品が人の目に触れるのも減るし。そこから港と黒船制作も横浜で、となった。下田にもついでに出島を作っちゃえ、という流れ。


 復興は元々あった形にするだけでは勿体無い。それも正直無駄だと思う。せっかく生きながらえたんだ。より効率的に、機能的に生まれ変わらせた方が良い。そう考えていた段階での勝様からの話だった。本社は江戸、研究所は地方でデカく。平成令和では当たり前のこと。何よりも、人が亡くなったから広く出来るね、やったーって気にはなれなかった。そしてここにいる天才たちを、くだらない権謀術数に巻き込ませたくなかった。


 もともと知識を求めて上京してきた人たちの集まり。移転に反対する人は居なかった。でも内田様はやっぱり関流のこともあるから動けないって。同じく家族の関係とかも含めて動けない人もいたから、その人たちは江戸に残る。内田様宅の隣が空いちゃったので、そちらに本社移転。横浜移転を進めていたら、職人さんたちまで「俺らも行く、ただし調所の船を使わせろ」って言い出してきた。話を聞くと理由は2つ。工場を広くしたいけど店は置いときたい、調所で何か新しいことするなら面白そうだからかませろ。良いね、企業の移転に伴い下請も一緒に動くの図。平成と違うのは、移転を強要してない。圧も掛けてない。好奇心から付いてくる。


 それにしても調所の人たち、研究自体は停滞してるけど、することないからと蘭書を読み漁ってる。ピーターさんの持ち込んだ知識を本で裏付け。その上で、知の変遷まで感じてる。貪欲過ぎるだろ。倒壊した自分の家の心配よりも、ここの蔵書の心配してんだからやっぱりどこかイカれてるんだと思う。


 一年後の安政4年春、横浜に新たに蕃書調所改め、洋書調所がオープン。一大学園都市、リアル◯ムシティの気分。大型船作ったおかげで、引っ越しが楽なこと楽なこと。1日2往復もしてたらヒトモノカネの搬出、その気になればあっという間。


 元々が東海道沿線でありながら宿場町である神奈川宿の外れの小さな村。そこが一気に発展。とりあえず数独を置いたら、まあ売れる売れる。内田様喜んで下さい。これで中山道に続き、東海道も数独が抑えましたよ。そして、人の増加は消費の増加、消費の増加は商売の増加を呼ぶ。勝様が試作品の額を見たおかげで、船に掛かる費用もかなり多めに勝ち取ってくれた。でも、まだ原理原則を理解してない。詰めが甘い。まず試作品作れたってことは、直し方も知ってる。そして、作り方さえ分かれば、そこまで金は掛からない。つまり、余剰資金で別の船を作れる。大小様々な大きさ取り揃えて、保有台数を増やす。


 問題はその次にこそある。みんな完成品に興味を持たない。プラモデルと一緒なんだよ。作るまでが楽しい。完成させたら興味を失う。そこで親方さんたちに相談して商人たちに声を掛けた。


 オークション。江戸と横浜1日1往復してくれれば船の入札権与えるよ、って噂を流してもらった。落札した船は何に使ってもOK。1番大きな船は出島まで行った実績あり。その謳い文句で。


 これで手間が省ける。誰かが海運事業やってくれれば問題ない。職人さんたちとの約束も果たせる。俺が、調所が、運航させる必要なし。そこまでは約束してないし。黒船の資金とまではいかなくても、ペリーの持ってきた1/4スケールの蒸気機関車のおもちゃ作れるくらいの資金になれば良いなぁ。


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