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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: 関沢賢吉


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 あっという間の1年とちょっとだった。ピーターさんが連れ去られて帰国してった。その間に元号が変わったり、試作品が実用段階に入ったり、算額を見せに連れてったり、はたまた新たな試作を作ったりと、怒涛の勢いであらゆることが起きた。たった一人、現物を知る者がいるだけで、効率よく飛躍的に進んでいく。凄い日々だった。


 下田が開港したのと調所の実験結果が広く浸透し始めた結果、いつの間にやら「攘夷だ」「開国だ」の声が聞こえなくなってきてた。ただ、あまりに猛スピードで試作を続けた結果、幕府の財政がキツくなってきてるらしい。でも、「じゃあ試作止めますか?」って確認すると「やれ」と。


 これから実用化に向けて動けそうなものは大きく3つ。反射炉、蒸気船、セメント。どれもこれもインフラ系だから、調所の儲けではどうにもならない。勝様と要相談。


 試作でだいぶ使ったとはいえ、調所の資産はだいぶ増えてる。日蘭貿易は、風向きが変わってきてるっぽい。輸出に来てたのが、輸入に来てる。もちろん金銀もそうなんだけど、本を大量に買っていく。おかげで本屋と紙屋はずっと忙しいみたい。でも真新しい内容はない。昔から作り慣れた和算書、問題の図だけを淡々と量産してる。美しいだけで元手はゼロに等しい。仕組みさえ出来上がればボロ儲け。ピーターさんと友さんで表現をよりブラッシュアップした原書を完成させた。あとは問題文と回答に関しては、オランダ本国で勝手に、でより効率的。数独なんか、「他の国には出さないでくれ」って独占販売を狙ってきたから、足元見てやったら50%アップで妥結。頑張って稼いでね。何度でも言う。ボロ儲け。そして彼らが気づいてるかどうか分かんないけど、中には左右、上下を反転させただけの問題も多数含まれている。それだけで新しい問題に変わる。売れる。儲かる。そして、試作でじゃんじゃん消えてく。試作まではこちらである程度負担する。実用化の時にある程度の回収はさせてもらうけど。


 物が増えれば商売も増える。石鹸作ってたはずの泡屋が、いつの間にかシャボン玉セットの販売も始めてた。商魂逞しいとは正にこのこと。連理玉もまだまだ売れてる。基本は5のみ。7は特別な場合のみ。ピーターさんへのお土産も7。9は売らないようにしてもらってる。儲けさせてもらった分、せめてレア感くらいは持たせてあげないと。供給をわざと減らして高値継続。これもまた、経済の原理。


 勝様はいつの間にか海絡みの担当になってる様子。下田にもちょくちょく行ってるみたい。俺よりは船酔いに強いっぽい。一度、「外国船が増えてきてる。どうしたら良い?」って聞かれたから、「現状、多言語はマスター出来てないから、親書をオランダ語にて持ってきた所とのみ交易。下田に駐留できるのは、出島で割符みたいの発行すれば良いじゃん」で終わり。出島は多言語対応、下田は当面蘭語のみなら効率的。だがいずれにしても、外国語に明るい人材の育成は急務だろう。いよいよ学校かな。でも藩の壁があるからな。


 勝様から久しぶりに呼び出し。最近は来るばっかりで行くことなかったからなんだろうと思って行ったら、先客がいたからちょっと待つ。聞くともなく漏れてきた声があまりに物騒だった。


 「あなたを叩き切る覚悟で来たが、話を聞いて考えを改めた」。


 人の家に押しかけておいて殺人、計画的犯行じゃないか。2人分の笑い声が聞こえて来たので気にすることもないだろうけど。声の主が去ってったみたいで、ちょっとしてから呼ばれた。


 「物騒な話が聞こえましたが、無事で何よりです」


 「あぁ、聞こえてたか。剣術師範の紹介状を持ってきたから仕方なく対応したんだが、確かに物騒と言えば物騒だったな」


 「どんな思想の持ち主なんですか?押し掛け殺人しようだなんて」


 「よくある話だ。開国するなどけしからん、攘夷せよ。なに、お前の真似をすれば大体収まる。収まらんのは幕府の重臣たちくらいだ」


 「まだよくあるんですか?市中ではだいぶ聞かなくなりましたが」


 「そうだな、まだ言ってるのは国よりも自分が大事な老人共と、情報が届くのが遅い田舎者、そのいずれかだ」


 「勝様もだいぶ辛辣な表現をするようになられましたね」


 「お前に相当鍛えられたからな」


 「今日の方は?」


 「土佐から脱藩してきた田舎者だ。坂本と言ったかな。紹介状を持っているとどうしても会わざるを得んからな。時間の無駄だが仕方ない」


 土佐の坂本!?一人しかいないじゃん!!マジか。この話、勝海舟と坂本龍馬の初対面の話じゃなかった?勝麟太郎=勝海舟?そりゃそれなりに権力あるわ。


 「それで今日呼んだのは、内密な相談があってな、貸借対照表、あれの作り方を教えて欲しいんだ。どうすれば良い?」


 いやいやいやいや、俺まだ思考中なのに話を進めるな。B/Sを?


 「えーと、まずあれを作るためには、資産と負債、それぞれを洗い出す必要があります。そして一年分だけあっても意味がありません。毎年毎年作るからこそ、その金額の変動、変貌を掴めます。どこの何を作るのですか?」


 「すまんがまだそれは言えん。内密にやろうとしておるでな」


 「実例からおった方が分かりやすいんですよ。では、勝様に、調所の出納を見てもらい、そこから貸借対照表を作っていただく。過去3年分のものが調所にございますので、最後見比べる、ということでいいですか?」


 「構わん」


 「数字は嘘をつきませんからね、愕然とするかもしれませんが、その覚悟はございますか?」


 「元より覚悟はできている」


 何を企んでるかは知らんけど、部下ゲット!いや、勝海舟だぞ、坂本龍馬だぞ。どう立ち回る?

 


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― 新着の感想 ―
> 勝麟太郎=勝海舟?そりゃそれなりに権力あるわ。 ようやくお気付きになられましたか
>勝麟太郎=勝海舟? 主人公が知らないのは最初の出会いから描写しゃされていたけど、これからは知っている形で動けますね。
更新お疲れ様です。 漸く勝様の名が判明(^^;; そして坂本龍馬とニアミス・・・・ 『貸借対照』 幕府の財政だろうなぁ・・・・(><) 次回も楽しみにしています。
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