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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: 関沢賢吉


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 ピーターさんは思いの外、守備範囲が広い知識人だった。というよりは、平成が細分化され過ぎてたのかも知れない。俺が抱えてた一番の問題の、「完成形」と「材料」は分かるけど、その「材料」の作り方が分からない。そこを埋めてくれた。どうやってその「材料」を作れるのか、そこの疑問に的確な答えを出してくれた。耐火煉瓦なんか「刀作ってるだろ?焼き物も作ってるじゃん。少しずつ耐火温度上げていけば出来るって」で終わり。いかんね、効率厨の悪いとこが思いっきり出た。一気に耐火煉瓦まで辿り着こうとしてた。一歩ずつで良いんだよ。


 友さんとピーターさんは、やっぱり仲良くなった。3人で話してると時間の進みが早い。そこで得た結論。「洋算は機能美、和算は様式美」。この結論もまた、非常に美しい。ピーターさんを驚かせたのは、和算はまだ奥があるよって話。


「なんでそんな素晴らしいものを隠し持ってるんだ?」


 洋算的視点からすると、そう思うよね。俺もこの世界に来て、和算の美しさにびっくりしたもん。そしてやっぱり数独にも食い付いてた。問題の作り方を聞かれたんだけど、残念ながらそれは聞かれても分からない。教えてあげたいけど無理だ。関流のことは勿論教えたんだけど、そうなると当然突っ込まれる。解法は秘伝、という考え方。頑固なヤツらが競って張り合ってるウチにそうなったんじゃない?って適当に言っといた。きっと、当たらずとも遠からずだろう。


 あとは、研究所肝入りの望遠鏡と六分儀を見せたら、カピタンもピーターさんも精度の高さに驚いてた。このために鏡欲しかったって言ったら納得してニヤニヤしてた。何を企んでんだ?


 もちろん、下田が開港に至った経緯も説明した。ジャイロ効果のことだけは隠したけど。そしたら一足先に聞いてたらしく、「俺、英語教えられるほどは話せないのに『英語を教えてくれ、藤二に教えたんだろ?』って聞かれて、何のことか分からんかったぞ」だと。1週間じっと聞いて、その場での訳を聞いてたら何となく分かってきたけど、誤魔化すために名前出したって誤魔化しといた。実際、他の乗組員で英語に明るい人もいるみたいだし、問題なし。前世の記憶の10年近い勉強の成果なんて言う方が、よっぽど信用されないし。


 出島から出るのは何となくダメかな、と思ってたけど、出島の中で珍しいもんが沢山あってみんなで面白がってたら、2週間後に迎えの船が来た。もう少ししたら梅雨だから、早くても夏かなって考えてたけど思ってたより早かった。で、2隻一緒に下田へ。乗組員を交代させながら、航海技術だったり船の具合だったりを試しながら。俺?俺は寝てた。長崎まで来るのに、船酔いに弱いことが発覚。江戸から下田も結構怪しかったんだけど、いわゆる外洋に出たらもうアウト。向いてなかった。


 下田には勝様と箕作様と内田様の姿が。内田様にはゲンコツ。「よそ様の船で勝手に寝るな」という、保護者として形式的なものだということは分かってる。一応勝様の手前、やらないとね。痛くなかったし。それよりも、勝様がカピタンに頭下げてた。それにビックリ。どんな心境の変化?使えん役人の中では、まだ使える方くらいの認識だったんだけど。


 実は内田様、初下田かも。前回も「関流のこともあるから」と江戸に残ってたし。俺が「内田様」と言ったところを確認したらしく、ピーターさんが捲し立てる。「内田、会いたかったぞ。俺はピーター。オランダで研究を……」。待て、その人は読めるけど、書けない話せない聞けない。ピーターさんを落ち着かせて説明し、杉先生を召喚して通訳させる。


 カピタンが「実は」と隠し持ってた物資を出してきた。みんなポカーン。活版印刷。アルファベットしかないけど。文字入れ替えられる版画って説明したら一気に食い付いた。また「なんで知ってる」って詰められたから、本にあったよ、どの本だったか覚えてないけど、で終わり。でもね、この国の言語体系に合わない気がしてたから、必要だとは思ってたけど発案はしてなかったんだ。持ち込まれたなら全然問題無いけど。50音×2+漢字だよ?多すぎるんだよ。そんな手間かけて試作する気には、申し訳ないけどならなかった。持ち込まれた印刷機も、好きな人がお好きにどうぞって感じ。


 で、本当の「実は」はここから。蒸気船やライフル、ペリーが持ち込んだ技術を知ってる人が、実はピーターさん。軍事情報になるから国外秘かつ最新技術。だから本にすらなっていない、とのこと。その話を聞いた箕作様と内田様がこっちを勢いよく見てくる。ほら言ったじゃん。外に出せる、本になるってことは、そういうことだよって。同じことをピーターさんがみんなに言ってくれた。その上で続けた。


 「古臭い技術をありがたがる、取り残された島国。ずっと日本のことをそう思ってた。だが、その認識は数学書を見て改めた。まだ見ぬ和算の知識を得られるのならば、私が知る情報など安いものだ」。


 はい、マッドサイエンティストの来日でした。


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