2-26
その後の交渉は実にスムーズ。しつけのなってない大型犬がチワワに変わっちゃったんだから。あくまでも国際法に準ずる形で条約を結び、下田を開港。樺太はご自由に。これでお土産できたでしょ?感謝しろよ。最後に一つ、ちゃんとしたお土産を持たせた。
『日本の金と銀の交換比率は1:5、世界では1:15。直接の交換は認められないが、物の売り買いによってオランダはうまいこと儲けてる。ルールさえ守れば目は瞑る。オランダみたいに上手くやれ。競争相手はこれから増えるぞ。こっちは買いたたき始める』
やっぱりペリーはバカだ。意味が分からなかったらしい。でもしょうがない。彼は軍人、武士がこの手の話分からないのと一緒だ。でも通訳さんは理解してた。最後「何で?言わなければ損しないのに」と聞かれたので「外圧によってしか変われない国もあるんです。良いきっかけです」って答えたら、今度はこっち側の顔が青くなってた。ダメだって、そんな顔に出しちゃ。
ペリーが帰るまで約1ヶ月。それが史実よりも長いのか短いのか。最早どうでもいい。間違いなく歴史を変えた。その自覚はある。でも、やらない後悔よりやった後悔の方が納得できる。小村寿太郎だったかな?将来別のことで名を挙げてね。そこまで責任は負いきれん。
勝様には、友さんが大砲の試作を終えた段階で、試作に関わった人、量産に関わる人は召し抱えるように依頼していた。じゃないと他に情報漏れるよって言ってあったんだけど、形的にペリーを打ち払った大砲を見て、慌てて昇給させてた。抱え込み大事。情報漏洩対策大事。
急に下田が発展することになった。寄港地としてどんな機能が必要なのか分からない。そこは完全にお任せ。俺の関与する所ではない。俺は溜まってた昨年分の決算書の整理。出納帳がきちんと出来ていたのでB/Sだけで良かった点はめっちゃ助かる。にしても、やっぱり試作関係の出費は凄い。調所の予算ではないにしても、出費の履歴見るだけでゾッとする。連理玉の儲けなんか簡単に吹っ飛ばされる。
友さんの凄いのは、あんな事があったのに余韻とか燃え尽きとか全くなく、淡々と船の試作を始めてること。1人でもそういう人がいると、落ち着きは伝播する。少しずつ、ようやく日常に戻っていく。多分、勝様はくだらない喧喧諤諤の中にいるんだろうけど。
—-----------------
side 勝麟太郎
何か功を成すと必ず同等の破壊力の爆弾を放り込んで来る。扱いづらいことこの上ない。どうやって調所の面々は藤二を扱ってるんだ?最後の幕府批判など、頭の固い連中が聞いたら即切られるだけだぞ。一面では正しさもあるだけに、どうして良いかも分からん。
大体幕府も幕府だ。ろくに交渉もせん奴ほど偉そうに吠える。役立たずだった奴らは、攘夷派が送り込んだ連中だったのが救いだ。本当に藤二の発言は言い得て妙な所があるだけに責められん。
なぜアイツは見てもいない城内の状況が読める?何かアイツが想像のつくことをワシは言ったか?いずれにせよ城内も国内も色々ときな臭くなってきているのは間違いない。
調所の面々にあってワシにないもの。蘭学の知識というよりも、見え方の違いなのか?ワシは地に立って見る。調所の面々は雲から見ている。でもそうすると、藤二は雲より上の空?そんなまさかな。どうもアイツのこと、発言を考えると発想も飛躍してくる。
まずはペリーの持ってきた贈り物を精査し、この国に役立てそうなものを調べねば。少なくとも今回の流れは、調所を先に作ったからこそだ。そこは違いない。あとはあそこの知を、ワシがどう生かすか。
あぁ、あそこを活かそうとすると、アイツの扱い方を知らなきゃならんわけか。本当に一長一短、薬と毒が混在してるような、何とも扱えん奴だ。箕作殿も杉殿も分からんと言う。内田殿など内弟子だというのに、最早諦めておる。小野殿は、そもそも小野殿も扱い方が分からん。
天才とはかくも扱いづらいものなのか?そもそもワシが操ったことはあるのか?彼らの興味持つことと、ワシが同じ方を向いただけとも考えられんか?そういえば普段の彼らはまとまっているようでバラバラの研究をしているはず。
もしかして藤二がまとめておる?まさかな。流石にそれは考えすぎだろう。
—-----------------
side ペリー
悪魔だ。極東には悪魔がいた。子供の姿で油断させ、一気に襲いかかる。なんて卑怯で獰猛な悪魔なんだ。あんな所、2度と行くもんか。もう良い。大統領令は渡した。返事ももらってきた。それだけだ。それ以上は知らん。
脅せば何でも言うこと聞くなんて言ってたのは誰だ?黒い髪はデーモンの証。極東への航海を命じられたら、もう海軍を辞めよう。




