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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: dora


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 『今有狐種蒔不知其石数 只云二斗四升宛蒔而無余又云四斗二升宛蒔而無余 問総石数得術如何』


 これなら、読めないから解けるかどうかわからないけど、結局解けませんでしたって言い訳通じるだろ。



 「あれはな、狐が種をまく。その(こく)数はわからない。ただ、2斗4升ずつまくと余りがなかった。 また、4斗2升ずつ巻いても余りがなかった。総石数はどれだけか。最も小さい値を求める。という意味なんじゃ。どうじゃ、解けそうか。」




 えーーーー、つまり、24と42の最小公倍数求めろってこと?4×6×7じゃん。どうしよって考えてる間に168って答え出ちゃったじゃん。やべー、簡単すぎる。これどうしたら良いんだ?解けた方が良いのか解けない方が良いのか。しくじったーーー。




 「・・・168です・・」


 渋々答えたら、想定外の言葉が返ってきた。


 「はて、算盤ではその解に読めぬこともないが、お主、石も知らぬとな」。


 これまた理解できない返答。言語としてはわかるのに、言いたいことが分からない。分からないなりに言葉から推測すると、算数の最後の「答え」こそが解だということか?つまり、168升ではバツで、一石六斗八升じゃないと正解とは認められない、ということなのか?



 「安心せい。こやつはただ、算術が得意で算盤が早い子じゃ。サンポウの才がある子なら、幼き頃はこういう童は珍しくはない。狐憑きなどという妖でも何でもないわ。そうは言っても算盤が得意というのも、一つの立派な才であることは間違いない。本当にサンポウの才があるやも知れぬが、まだまだ小童。時が経ち、本当に才がありそうだということならば、改めて連れて来るが良い。ここがどういう神社かは、お主も府中で育った者じゃ、知っておろう」


 口調的に、その後は「フォッフォッフォッ」て続きそうだな、なんてこと思ってたら違った。ガハハだった。


 どうも流れ的に、「狐憑き」説は父の思い込みということになりそうだ。ただ狐の代わりにオッサンが憑いてるのは事実なんだけど。そしてまた出た「サンポウ」。「三方?三宝?三包?」。この前のおじさん、ここでの会話を総合するに「算法」か?ここはやっぱり子供の特性を最大限使うべきポイントだろう。


 「サンポウって何?何で壁に図形が書いてあるの?あれ、なんかの問題でしょ?」


 ホッとした矢先に息子をジトっとした目で見るな、まるで問題児みたいじゃないか。言っちゃなんだか、やいちの方がよっぽどやんちゃだぞ。


 「算術が好きならばいずれサンポウを知るじゃろ。それからでも遅うないわ。それまでは親の言うことを聞いて、ちゃんと手伝い、しっかりと学ぶのじゃ。この壁はサンガクと言ってな、この辺のセキリュウという流派のサンポウカたちが奉納したところ、なぜかあちこちで真似するものが続出しておるのじゃ。ほれ、この壁だけじゃのうて、あそこにある絵馬、あれにもサンポウカが書いて奉納してあるぞ」。


 うん、優しく喋ってるけど知らん言葉が多くて、結局言ってることの内容が分からない。そして質問にはちゃんと答えろ。とにかく分かるのは、ここにある図形は、基本美しい。


 とりあえず要件は終わったようだ。建物を出て絵馬をチラ見すると、確かに図形が書いてある。中で見たの同様、何か言葉も書かれている。この図形を用いた問題を並べてるのか。



 なぜ?なんのため?



 神社の門前町でお茶を飲みながら待っていた家族と合流し、一路父の実家へ。初めての祖父母、叔父叔母との面談。


 前世ではお互いの親とは何度も会っていた。息子が生まれた時なんか、それはもうひどいもんだった。「いつ来るんだ」、「早く会わせろ」、「さっさと来い」、「写真送れ」。板挟みという言葉の本当の意味を実感したのはあの頃だ。


 だが、どうもこの世界では違うらしい。そりゃそうだ。電話もねえ、メールもねえ、写真ねえ。「こんな村イヤだ」って曲があったが、そんなレベルじゃない。子連れで一刻以上。用が有れば寄るが、そうじゃなければそう簡単に寄れない。そこまで気楽な距離じゃない。


 なんかいろいろありすぎて困惑しかない。こんな時こそみねだ。母に代わってみねを背負って癒されよう。飴を咥えさせたら思いのほか喜んだ。指までしゃぶってくるみねは愛おしい。


 「なんだ、飴いらないなら俺がもらってやるぞ」。俺の癒しタイムを邪魔するな、やいち。無言で拒否する。


 話題を探そうと父に話しかける。「あの爺様は、結局誰なんです?」


 爺様と気軽に呼んだことを怒られたが、父はあの神社の寺子屋に通っていたらしく、父のお師匠さんにあたる人で、今ではあの神社で一番のお偉いさんらしい。もちろん父が通っていた頃は、爺様ではなかったとのことだが。


 ついでに「サンポウ」とは何なのかを聞こうかどうしようか悩んでる間に、今日の目的地である父の実家に到着したようだ。


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