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守旧派は金で殺す、攘夷派は理で殺す。――幕末に転生した効率厨サラリーマン、内戦はコスパが悪いので和算と裏金で歴史を書き換える  作者: 関沢賢吉


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 案の定、友さんの計算は理論値の計算だった。大きくなればなるほど、マイナス要因の生じる幅は大きくなる。状況整理から始めよう。射程距離を理論値に高める方法は、ざっと思い付くだけで3つ。土台の硬さ(反発力)、球の形状(空気抵抗)、火力(爆発効率)。そこまで話すと、友さんなら理解してくれる。砲術に興味ない人も、学問用語にすると、一気に興味を持ち始める。これなんだよ、兵器の力は。あらゆる知の集結。


 日本古来のコンクリート、三和土。これの強度を高めるために、火山灰、砂、水、藁の配合割合の検証。これに関しては、職人さん達と探るうちに、最適解は見つかるだろう。実験好きな研究者と、検証好きな職人の組み合わせ。無敵だ。


 爆発効率に関しては、急激に上げようとするのは危険が伴う。ということは、球の形状か。口で説明するのは、知識の出所に関して危険が伴う。球形から砲弾への変化に気付かせる。可能なら、回転運動のよる推進力まで気付かせる方法って考えると、答えは一つしか生まれなかった。


 わざと計算を間違って、紙を投げ捨てる。始めは丸く。そのうちテンション上がってやること忘れる子供のフリ。紙飛行機を折って飛ばす。わざと回転をかける。それを見てた先生方「何をバカなことを」の視線から、気付き始める。そりゃそうだよね。誘導したもん。


 多分、友さんは疑う。でも、兵器への忌避感から口にしなかったと勘違いしてくれないかな?ムリだよな。


 友さんは計算通りの綺麗な弾道を描きたい。俺はそもそも弾道を描きたくない。そこの妥協点は、やっぱり綺麗事だけど、友さんが俺にしてくれた「約束」を信じるしかないんだ。相手が友さんだからこそ、信じたい。信じてみたい。


 それと同時に、予算を切られた時に立ち回れるように、収益化を考えなければならない。目指せ黒字化。そう考えていたのに、まさかのところでの躓き。








 まさかの予算がない。ないと言うか、決まってない。後で経費精算するだけ。





 親方日の丸どころの話じゃない。ザルとか丼とか、そんなレベルじゃない。この状況、逆手に取られたら、横領したって難癖付けてお取り潰しなんて簡単にできちゃうじゃん。身の潔白の証拠すらないんだから、証明しようがない。出来るはずもない。


 でも、考えてみれば内田様は今でも内弟子ということで、俺の衣食住の費用を負担してくれてる。ここにいる人たちみんな、私財を投じて知を深める、知を伝える、知を残すことを厭わない。


 それでもこの現状、こわい、怖い、恐い。怖すぎる。マジか。経理畑でもなんでもないけど、幸いなことに面倒な人件費や施設管理費等々がない。お小遣い帳レベルで終わる。与えられる予算を上回る形で、収益化を目指そう。俺の役割がそこで決まった。決めた。現実経営で黒字化。


 てなわけで、現状、手っ取り早く収益化出来るものは、先日見せられた「ニ◯ートンのゆりかご」と「教本」。商品化に際して、またコピー防止の仕組みを親方に相談してみたら、思わぬ返事が来た。コピー品が出てきてもすぐに廃れる。クレーム対応に追われるだけだ、と。どういうこと?と聞いてみると、なんのことはない。真似して作っても糸が簡単に擦り切れる。遊べば遊ぶほど簡単に。だからわざと高値にして、安いコピー品を淘汰させれば良い。とまで言い切った。商売のことは商売人を信じよう。親方は量産化を計画、試作品は箕作様を通じて勝様に。


 また教本コピーは、それはそれで売れまくった。自称知識層が無理して買っているらしい。でもそれって、言わばただの翻訳本。その先がまだあるのにね、と思わずニヤリ。一冊の売れ行きが落ち着けば別の科目。またそれが落ち着けば次。玉は尽きない。


 あと、もう一つ売りにしたい物があった。輸出。物じゃない。情報、知識を売りたい。そのために内田様、友さん、杉先生の力を借りよう。


 内密の話として呼び出した。


 「内田様は関流、友さんは最上流をそれぞれ修めていますよね?その2つの流派の解き方で、これを改めて解いて頂きたいのです」


 取り出したのは「括要算法」と「発微算法」の2冊。2人とも怪訝な顔をしてる。


 「それぞれの解き方、そして洋算での解き方、全て違いますよね?」


 「それはそうだ。だからこそ理解するのに手間取るんであって」


 「この2冊の問いと3種類の解法をまとめて、蘭語に翻訳し、蘭国に売りたいと考えています」


 「待て、算法は伝承の技だぞ?それを海の向こうになど」


 「海の向こうだからですよ。幸いここには、関流に明るい、最上流に明るい、そして蘭語に訳すのに明るい方が揃ってます。何より友さん、和算の解法は美しくないけど、和算の図形の問いは洋算にはない美しさがあると思いませんか?」


 「それは間違いなくそうだな。円理の問題ほど高度な問いは、洋算ではまだ見ておらんな」


 「でしょ?伝承の技は関流の中に留めておけば良いんです。その上で、蘭国の数学者に対して『お前らこれ解けるのか?日本ではお前らの解き方の他に、こんな解き方が存在するんだぞ。こんな高度な問いを作れるのだぞ』と誇ってやりましょうよ」


 「うーーん、しかしな、伝承の技を…」


 「ワシはやるぞ。藤二の言うことに一理ある。どれだけ洋算の本を見たとて、和算の円理は、それはそれで問いとして美しいことに違いない」


 「藤二、お前嵌めたな。小野殿ならこう言うことわかった上で、関流として断れなくするために」


 「はい、嵌めました。だからやりましょう、師匠」


 「こういう時だけ師匠扱いしやがって」


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