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あんなヤツでも役に立つがあるもんだ。思わぬ掘り出し物だ。箕作殿の所の弟子か。きっと蘭学者だろう。蘭学者なら如何様にも使い道はある。俺が取りたててやるとするか。幕府のため、ひいては日本のためになる人材は一人でも多い方が良い。清国もイギリスにやられたと聞く。我が日本もいつそれに巻き込まれるやも分からん。
箕作殿に依頼をし、あの若者と会った。杉と名乗った聡明な若者だった。長崎の出らしい。蘭学に明るいのも頷ける。しかしどうも話が噛み合わん。突き詰めていくと、釣竿やら凧で遊んでたあの子供が仕掛け人だと?そんなバカな。しかし、ヤツは子供にしてやられたのか?そりゃ普段、どうやっても口を閉じんヤツが、あの事に関しては口を開かん。再度箕作殿に依頼するとしよう。
内田殿の内弟子?意味が分からん。なぜ算法家の内弟子が箕作殿の屋敷で凧で遊んでおる?確かにあの場には内田殿もいたが。自分の一存では決められん。内田殿に聞け?この2人、何を企んでいる?
今は箕作殿に預けている以上、箕作殿の判断に任せるだと?それぞれが忙しいから、なかなか捕まえられん。そしてこの、役人とは違う賢人たちに囲われてるその小僧、一体何者だ?面倒だから二人まとめて呼べ!
幕府の仕事を盾にされれば強引に連れて来るわけにもいかん。一月かかってようやく呼べた。ヤツから守るために二人で企図した。なるほど、スジは通る。で、その小僧は一体何者だ?今だに正体が掴めん?将来の生徒兼将来の講師候補?
以前から意見されている調所か。あれを学校のようにしたい、なるほど。あそこに相応しい子が見つかったから、前段階として育ててる最中、なるほど。将来の日本に役立てるために叩き込んでいる、なるほど。まだまだ勉強が足りていないが将来有望、そりゃそうだろ。育った暁には調所の講師をやらせたいと考えてる、なるほど。その実験中ゆえ、とてもとても不出来なのでまだ会わせられない、ん?調所を早く作ってくれれば生徒集めて有望そうなの出しますよ、なるほど。だから、まだ今は会わせられん、ん?
だめだ、賢人二人に間髪入れず話されると、質問も出来ん。ただ人が欲しいのは間違いない。凡人に天才を育てきれんのは事実だからな。ん?天才二人に育てられてる子供だと?ますます会いたい。
会わせてくれ、連れて来る理由がありません、なるほど。確かに命令するのもおかしい。どうすれば。
分かった、そちらの策に乗る。調所の建設を早めよう。どうせいつか必要になるもの。早いか遅いかだけだ。所長が箕作殿、副所長を内田殿。それで良いか?一生徒候補を連れて来る理由が欲しい?教師の選定方法は?
次から次へと質問投げて来るな。教師の選定はそちらで自由に、幕府所蔵の蘭書そちらに集約させる。それで良いか?研究所も必要?なぜ小僧に会うのにそこまで?
この間の実験、全て小僧の指揮下?箕作殿は全く手出しせず?実験できないならば小僧は動かない?分かった、じゃあ実際にどんな研究所を欲しがるか、「生徒」としての意見を聞いてから考えよう。これでどうじゃ。
待てよ。なぜ、たかが小僧一人に会うのに、こんなことになった?待て待て、箕作殿の所に伺えば会えたのではないか?小僧を発掘した師匠のもとにいる?ますます何者?
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妙な指示だった。
「そのうち、なかなか帰省する機会も少なくなりそうだから、一度日野に帰っておけ。その際、帰省が減りそうだから心配するな、とちゃんと伝えておきなさい」と内田様から。箕作様からは、「今後やりたい実験と、それを実現するのにどんな職人が必要なのかをまとめておきなさい」と。
あとは、爺様宛と父宛の手紙を内田様から渡された。体が成長したせいか、体力もついて来たらしい。府中までの疲労感が、来る度に違う。久々に実感する、若さの素晴らしさ。
境内に着いたら、なにやら見慣れぬ物が置かれてる。何かと思ったら、数独が冊子になって売られてる。しかもだいぶ安い。レベル別になってる。コンビニで売られるワンコイン本じゃねーか。爺様捕まえて話を聞くと、京都までの手慰みとして売れてるとか。上手い商売考えるなぁ。しかも、寺子屋の字の習得のために問題も書かせてると。人件費もかかってない。問題は関流がどんどん持って来る。ウハウハだな、おい。こういうのを本当の意味で濡れ手に粟って言うんじゃねーか?えっ、日野の寺子屋にも手伝わせてる?そういえばあのビビリの師匠元気かな?顔出してみようかな。寺子屋の運営費とかに充ててるって言うし、全然ぼったくってる金額でも無さそうだから良いんじゃないかな?関流は関流の記載があるならOKってことになってるらしい。知らん間に発展してるよ。




