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4.入学試験

今日はいつもより長めです

シルヴァ王国に着いて翌日、俺とシナは【勇者候補育成特別学校】の門の前で唖然としていた。


「想像以上にデカいな…」


「魔族との戦争を終わらせるために建てた学校ですから、かなり大規模だとは思ってたんですけど…」


見た感じだとシルヴァ王国の面積の約10万分の一位と言ったところだろうか。あくまで見た感じだが。でもそれを感じさせるくらいデカすぎるということだ。


「それにしても、人が多いですね。」


「そりゃあ昔存在したとされる伝説の勇者に自分もなれるかもしれないって思う人が多いからな。」


俺も最近知ったことだが、人族の歴史は魔族よりも深く、魔族の誕生は1万年前とされているが人族の誕生はその一万倍の1億年前とされているらしい。それが嘘であったとしても約10万年前の人族の骨が発見されているらしく、少なくとも魔族よりも早く誕生している。そして人族は色々な種族の中でも最も弱く、知恵があるとされている。一人ひとりの力はないものの、その知恵を絞って今の今まで魔族とともに進化をし続けてきたという。

そんな中で約1000年前に勇者と呼ばれる世界最強の人間が突如として現れた。その勇者は男だとか、女だとかどれも確証がないことばかりらしいのだが唯一わかっていることがある。

それが”異世界”と呼ばれるこの世界とは異なる世界から召喚されてきたということ。それ以外の確定要素はなく、今の今まで謎とされているとのこと。

嘘くさい話ではあるが人間全員が真実であるというのだから信じざるを得ないだろう。


「とりあえず中入るか。」


「うん。」


そうして俺らは入学試験を受けるために学校へと足を踏み入れたのだった。



〜〜〜



「今から、入学試験の受付を開始します。」


受付係の人がそう言うと今まで止まっていた行列が一気に動き出し、俺達はずらずらと前へと歩いていく。

一人、また一人と受付が済みすぐに受け付けの番が来る。


「お名前と年齢、出身地を教えてください。」


「リーベル・アイゴット。15歳。出身地はシュイ村です。」


後ろから驚いたような声が聞こえた。恐らくシナだろう。

すまんシナ。性も言わないと怪しまれるんだ。あと出身地とか本当のこと言ったら絶対殺されるし。後でしっかり謝っておこう。


「リーベルさんですね。受付番号は1678です。右の通路へお進みください。」


俺は言われたままに右の通路へと進む。すると、中央玄関へと着いた。左に進んだ人もここに着くらしい。分ける必要あったか?

そんなことは置いといてそのまま前へと進む。するとルートの指示が書いた看板が置かれていた。俺はその指示に従って進んだ。


しばらく進むとまた受付係のような人がいた。


「お名前と受付番号を教えてください。」


最初の受付と同じ名前と受付番号をいった俺は、受付係の人にまた指示が出され、その場所へと進む。

どうやら最初は筆記試験があるらしく、その後魔術試験、模擬戦での試験があり、入学試験は終わるらしい。

正直筆記試験に関しては自信がない。内容は恐らく人族の一般常識のことだろうからシナから聞いたことしか知らないため試験に落ちる可能性があって怖い。


「怖がっても仕方ないよー?自分の精一杯を出し切るしかないんだから。」


「そんなこと言ってもなあ…怖いもんは怖いんだよ。って、精霊にはわからないか。」


「ボクのことバカにしたなー?ピンチになっても助けてやんないからねー」


「すまんすまん。俺が悪かった。」


こう言ってもリーアは俺の緊張をほぐそうとしていたのだろう。そのお陰か、少し楽になった気がする。

そんなことを思っていると試験場所へと着いた。

俺は『よし。』と気持ちを落ち着かせ、教室へと入った。


黒板には座席表が書かれていて、俺はすぐに自分の席を見つけ座った。

試験開始は約5分後で、刻一刻と時間が迫っていた。


「なあ。試験、自信あるか?」


右隣の席の男が話しかけてきた。


「んー。筆記試験は自信ないな。」


俺はすぐに言葉を返す。


「戦いには自信があるってことか。ふーん…」


男は何か考え、すぐに俺の方へと顔を向ける。


「ま。入学できたらいいな。お互い頑張ろうぜ。」


「あ、ああ…」


初対面のやつによくそんなべらべら喋れるな。

そんなことを思っていると、試験の時間になった。すると、教室の扉から試験監督のような人が現れた。


「では、今から筆記試験を行う。試験の際は会話は一切しないように。質問は手を上げて知らせてください。」


試験監督はそう言い、俺は机を見るといつの間にか試験用紙が置かれていた。

設置魔法か…

そう思いつつ俺は筆記試験に挑んだ。



〜〜〜



「案外簡単だったな。」


国のこととか書かれてると思っていたけどほとんどが魔術や剣術など戦いに関してのことだった。だが一つ、疑問に思った問題があった。


『あなたが魔王軍の【戦略の天神】だとします。あなたは人族が魔王軍と戦う勇者を育成する勇者学校を建てたことを知りました。あなたは今後の魔王軍をどういう風に動かし、どう戦いますか?』


疑問に思う点は一つ。『なぜ魔王軍での視点なのか。』だ。こういうのは普通自分たち側の視点で問題を出す。そうでないと採点が難しいからだ。だが実際は相手視点での問題を出した。考えても仕方ないことではあるが、かなり不信感を持っている。


「なあ、筆記自信ないって言ってたけど、どうだった?」


右隣の男がまた話しかけてきた。


「意外と解けたかな。」


「そうかー。それはよかったなー。」


そんなことを男はいい、前を向いた。

今は魔術試験の最中で俺の番はもうすぐ来る。あの男の次だ。

さっきから他の受験者の魔術を見ているが俺からしたら全員さほど強くないように思える。

中には上級魔法を使っている人もいてその度周りが『おぉ…!』と驚いているが俺としてはそのくらい使えて当然だ。

これは周りが弱いのではなく、俺が戦略の天神だからそう思うのだ。戦略を立てる以上、戦う奴らよりも強くいなければならない。そういうのが俺の中にあって、それに従い続けた結果だ。こいつらを侮辱しているつもりもない。


「次、1640番。」


「俺の番だなー。」


次はあいつか。

俺は少し興味が湧き、注意深く見る。


「ふう…」


あいつはため息を付くと急に雰囲気が変わった。


「!?」


突如としてあいつの目の前に大きな炎が現れた。


「特級魔法!?」


特級魔法とは、一部の魔術師にしか使えない魔法のことだ。

基本的には初級魔法の派生だが、使い手が成長すればするほど威力が増すだけじゃなく、魔力消費は最初の時と変わらない特別な魔法だ。

そんなことができるってことはかなりの逸材だ。ちょっと興味が湧いてきた。



「次、1678番。」


「俺か。」


気付いたらあいつの番は終わっていて、俺は静かに歩いた。


「お前、強いな。」


「そうか?まあがんばれよ。」


すれ違い際に軽く話し、試験官の言われた位置に着く。

俺はあいつみたいに特級魔法が使えるわけではないが、それなりに強い自信がある。問題は実力を隠すか学校が壊れない程度に本気を出すかだが…あくまでも潜入だから動きやすいように注目度を下げるか。

そう思い俺は初級魔法を出すことにした。


「魔法神よ。我の力を使い、紅き炎を発現せよ。」


俺は手をかざし無表情で詠唱を唱える。すると赤い炎が掌付近に現れ、そのまま前の的にぶつける。

他の受験者の初級魔法よりも威力高めたせいか、的が燃えてなくなった。このくらいなら入学もできるだろう、と我ながら自分の調整を褒める。

そうして俺は清々しく元の位置に戻った。

その後は何事もなく魔術試験は終わった。



〜〜〜



魔術試験が終わり、模擬戦の会場に移動している最中、案内役が誰かと話している。


「そっちは模擬戦も終わりましたか。」


恐らく最初左に行った人たちのところが試験をすべて終えたのだろう。

ちなみにだがシナは左へ行ったのか今までの試験で会うことはなかった。


「はい。ですが、模擬戦で少し気になった受験者がいまして…受験番号1679番のシュナエル・アイゴットなんですが…」


「シナ!?」


まさかここで名前が上がるとは思わず、驚いてしまった。


「君は…?」


「彼は受験番号1678、リーベル・アイゴットです…ってあなた彼女と兄弟ですか!?」


「まあ…はい。」


「そうですか…なら反応しても仕方ないですね…」


「まあいいでしょう。とにかく今は模擬戦の場所へ移動しましょう。といっても、もう着きましたが。」


「ここが…」


コロシアムのような円形の闘技場が姿を表した。

下が戦う場所になっていて、上が観客席になっていた。


「模擬戦が終わった人から各自帰る形になっていますので忘れ物がないようにお願いします。順番は魔術試験での成績が低い順になっていますので。」


それってある意味の公開処刑じゃねえか。

そうして俺達は言われた順番に並んだ。俺は列の真ん中付近の順番で、あいつは最後尾だからあいつの模擬戦を見ることはできないが、一番注目されない真ん中付近を狙ってできたのは上々だ。

最初らへんの人たちは実力差があるせいか、一瞬で模擬戦が終わる。そんな状況だから俺の番はすぐに来た。


「受験番号1678番。」


「はい。」


俺は返事をしてそのまま闘技場の中へと入っていく。


「君がリーベル君かな?僕はシーブレンだ。よろしく」


青髪ショートの男性がそんな事を言ってきた


「なぜ俺の名前を?」


「そりゃああのシュナエルくんのご兄弟らしいからね。ちょっとは期待するよ。」


何をしたんだ。シナ…


「ご期待に添えることはできませんが、やるだけやってみますよ。」


もちろん本気でやるわけがない。そんなことを思いながら、戦う準備をする。


「では、模擬戦を始めます。双方準備はいいですか?」


俺とシーブレンはこくりと頷き、お互いを見つめ合う。


「模擬戦…」


「――――…開始!」


シーブレンはものすごい勢いで地面を蹴り、まっすぐ俺に向かってくる。

俺はそれを避け、シーブレンに攻撃をする。しかしシーブレンは攻撃を軽々と受け流した。


「それが君の実力かい?このままだと失望しちゃうよ?」


シーブレンは守りながら言う


「ほんとにいいですか?もしかしたら大怪我しますよ?」


「言ってくれるじゃないか。いいよ。本気で来な。」


まあ、ほんの少しなら大丈夫か。

そう思い俺は一旦距離を取り、深呼吸をする。

俺は左足を後ろに出して、下を向く。


「―――――今!」


俺は左足に力を入れた。


「そこまで!」


いきなりそんなことを言われ、力が抜ける。


「どうして〜?僕すごい楽しみだったのに〜!」


シーブレンは気が抜けたようにそんな事を言う。


「これ以上は危ないですし、もうデータは取れましたから。」


「まあ仕方ないか〜。」


俺は試験官に心の中で感謝をし、誰にもバレないように静かに闘技場を去る。


「リーベル君。」


「は、はい。」


「今度あったときは…期待しとくからね。」


「しないほうがいいんですが…」


そう言い俺は今度こそ静かに闘技場を去った。



〜〜〜



「あ、リーベルさん!」


「待たせたな。シナ。」


「待たせたじゃないですよ!なんで私の苗字なんか使って…それに出身地も!」


「すまんシナ!ああでもしないと受験できないから…!」


「まあ別にいいですけど…」


シナはまだ少し怒っていたけど、許してくれたそうだ。


「それよりシナ、なんか試験官の人たちの中で凄い有名になってるけど何したんだ?」


宿に行くため歩いていたときに疑問に思っていたことを口にした。


「有名!?何の話ですか?」


「模擬戦のときにすごいことしてたらしいけど…」


「模擬戦ですか?模擬戦は確か、森で獲物を狩るときみたいに小賢しく俊敏に攻撃してましたけど…」


俺はその状況を思い浮かべる。


「もしかして…壁に足つけて思いっきり蹴ったりとか、観客席まで上に跳んだりとかしてたか?」


「よくわかりましたね!見てたんですか?」


「いやそれは凄いよ!?あの高さを跳べたりとか、壁に足つけたりするのって相当難しいはずだけど…」


「リーベルさんならできますよね?」


「できるけども…自分が相当強いことを自覚したほうがいいよ…」


そうして入学試験は終わり、俺達は宿に戻ったのだった…

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