第08話 のじゃロリ再び
年末が迫る中、今年も比売神神社に俺と咲夜さんは来ている、巫女服に身を包みいそいそと神社の敷地のお掃除だ。織ねぇと明海ちゃんにお祖父ちゃんは毎年のごとく里に行っているようだ、その御蔭で俺と咲夜さんの体の変化や経緯を説明しなくてすんだのは良かった事だと思う、だってさ絶対笑われるだろうしね。
今年も本殿で舞を舞うことは決定しているようで、今年も篠ちゃんと鈴ちゃんに舞の指導をしてもらっている。
「お二人共去年に比べるとすごく上手になっていますね、それに息も昨年以上にぴったりです」
「……(こくこく)」
思い出しながら舞を一通りこなした後に篠ちゃんからは「もう教える事はない」となぜか腕を組み強者ムーブを醸し出しながら言われた、きっとそういうお年頃なのだろう。咲夜さんとふたり目で会話して見なかったことにしておいた。そして相変わらず鈴ちゃんは無口だ、そして鈴ちゃんも篠ちゃんの横で腕を組んでいる、そういうお年頃なのだろう。
そして迎えた大晦日神社の手伝いをして、仮眠を取り起きた所で軽くお腹にものを入れて舞の準備をする。日付が変わると同時に奉納舞を舞う、去年同様に音楽に合わせて舞う俺と咲夜さんの神気が祭壇に吸い込まれていく。時間の感覚がなくなるほど集中していたせいか気づけば俺と咲夜さんはいつの間にか真っ白にそめられた空間に立っていた。
「怜、大丈夫? ここはどこなのかしら」
「私は大丈夫です、ここは見覚えがある気がします、多分のじゃロリ神と出会った空間な気がします」
全面真っ白の空間を見回すも何も無い。とりあえず咲夜さんに近寄り手を繋ぐ。
「誰がのじゃロリ神じゃ、変な呼び方をするではないのじゃ」
声が聞こえてきた方に体を向けるとそこには見覚えのあるのじゃロリ神がいた。見た目は女になってすぐの時の俺の姿で、ちょっとえっちぃ感じの改造巫女服をまとった少女、前に夢で会った時と変わらない姿がそこにはあった。
「確かもう直接会うことはないとか言ってた気がするけどなんでいるの? というかこれってどういう状況?」
「ふむ、わしとて再び見えることはないと思っておったのじゃ、お主がこうもすぐに半神となるとは思っておらなかったのじゃ」
「それって俺が悪いって言いたいのか」
「悪いという事はないのじゃ、されどお主の成長速度は過去類を見ないものでのわしも驚いておるのじゃ」
「あー、うん、なんとなく理由はわかったけど、それで何か用でもあるの?」
「ふむ……、特に用はないのじゃ」
「……、で本題は?」
「なんとも冷たいの、少しは乗ってくれてもよかろうに」
適当にのじゃロリ神に対応していると咲夜さんが耳元で話しかけてくる。
「えっと怜このなんだかすごく可愛らしい怜そっくりの子はもしかして」
「多分想像通りだと思いますよ、本人から名乗れないとは言われましたけど」
「そうなのね、それにしても怜はなにか普段と少し違う気がするのだけど」
「前聞いた事なのですが、ここでは感情とかの抑えがきかないみたいなのですよね」
「そう、そうなのね、それにしても小さい怜は可愛いわね」
なんだか少しうっとり気味につぶやくのが聞こえたけど、聞こえなかったことにしておこう。
「そろそろ良いかの」
「はい、大丈夫です」
パンッと柏手を打つとその姿は見覚えのある艶美な姿へと変わっていく、これは本当の姿なのだろう。
「比売神怜、そして天降咲夜よ、お主らの成長を嬉しく思う、お主らがこのまま成長をし我らの領域まで来る日も遠くないであろう」
俺と咲夜さんは自然と膝を付き頭を垂れる。
「天降咲夜、我が血に連なる者よ、長き年月お主の一族は長きに渡り位階を上げる事は叶わなかった、だがそれは成ったのは魂の番と再び相見える事によるものであろう」
頭を下げているせいで姿は見えないが、目の前の神の元へ神気が集まるのが感じられる。
「そして今お主に新たな力、我が神器の一つを託そう、受け取るが良い」
隣で咲夜さんが顔を上げ両手を捧げあげるのがわかった。
「謹んでお受け取りいたします」
「うぬ、神になるもならぬもお主ら次第じゃ好きにせよ、じゃがすでに半神となりし身なれば目指してみるのもよかろう、守りたき者を守れるように強くあれ」
再びパンッと柏手を打つ音が響いたと同時に先程まで感じられていた重圧な神気が霧散した。「ふぅ」と息を吐き立ち上がり咲夜さんを見るとその手には朱色の梓弓が握られていた。梓弓には鈴が結ばれていて動く度にチリンと涼やかな音がしている。
咲夜さんは弓の具合を確かめるように弓を引いたりしている、その弓だけど不思議なことに矢を神気で作ることができるみたいだ。人と通り試し終わったのか梓弓は光となり咲夜さんの中に消えていった。
「さてお主らに伝えておいたほうが良いことがある、もうしばらくわしの話につきおうでもらうのじゃ」
いつの間にかのじゃロリ神は最初の姿になっていた。俺と咲夜さんは再び手をつなぎ話を聞く事にする。
「前に大厄災の時期を5年と伝えたがの、それが何故か早まりそうなのじゃ、理由は分からぬしどれくらい早まるかもようわからぬ、どうやら何者かが先見ができないようにしておるようじゃ」
大厄災が早まる、そう言えば最近望姉さんに聞いた気がする。
「まあ早まるというても1年ほどはずれぬであろう、じゃがの正確な時期がわからぬゆえに警戒をするがよい」
「助言ありがとうございます」
「うむ、それではそろそろ戻るが良い、次に見えるはいつになるか分からぬがそれまで息災であるが良いのじゃ」
その言葉を最後に俺は意識が閉ざされていく、ただ意識がなくなる瞬間まで咲夜さんの手の感触が感じられていた。




