第07話 甘い目覚め
「うぅ……」
暑い、そしてなんだか苦しい、何だろうこれは。目をあけると眼の前は真っ暗だ、めいいっぱい鼻から息を吸いこむといい匂いがする。顔をなんとかあげようとしたけど完璧に固定されていて動かせない。
なんとなく状況はわかった、これはあれだ咲夜さんの胸の谷間に顔が埋まり込んで固定されている。これは役得とでも思えば良いのだろうか、俺が男のままだったなら大歓迎だったのかな、うんわからん。
「うっう~ん、怜~」
頭のホールドが更に強まり顔を包む弾力が更に増す、このままもう一回寝ようかな。
「好き~」
少し力が緩んだのかやっと顔を離すことができた、思った通り咲夜さんの胸にホールドされていた、呼吸が楽になった。少し体を離して時計を見てみるとまだ起きるには早い時間みたいだ。
咲夜さんの顔を見てみると普段見慣れないゆるゆるでへらへらの表情になっている、どんないい夢を見ているのだろうか。喉が渇いたので咲夜さんの腕から抜け出しそっとベッドから抜け出す。
「さむっ」
部屋は冷え切っている、もこもこのスリッパを履いて階下へ行きリビングに入るとソファーで朱天が寝ているようだった。起こさないようにキッチンへ行って水を一杯。
「主殿か」
「あー起こしちゃった?」
「もとから寝ておらぬよ」
「そう? そう言えば父さん達帰ってきてる?」
「ふむ、3人共帰ってきておらぬな」
「そっか……、じゃまだ起きるには早いから寝直すね」
「夜明けまでまだ時間があるしの、それが良かろう」
「うんお休み」
部屋に戻り咲夜さんの横に潜り込む、お布団は咲夜さんの温度で暖かくで心地いい。冷えた体がぬくぬくになって自然と眠気が襲ってきてそのまま寝入ってしまった。
◆
「おはよう怜」
「おはようございます咲夜さん」
良い目覚めである、目の前には咲夜さんの笑顔、俺も負けじと笑顔を返す。ベッドから起き上がり伸びをする、部屋は少し寒いのでエアコンのスイッチを付けるともう一度布団に潜り込む。
「部屋が温まるまでもう少しお布団に入ってましょうか」
「そうね、いらっしゃい」
そう言って俺に抱きつく咲夜さん、冷えた体の体温が一気に上昇するのはお布団と咲夜さんの体温だけではなく、俺自身が発する体温なども合わさった結果だと思う。この時間は部屋が温まるまで続いた。
部屋が暖まり着替えを済まして階下に降りると父さんと母さんが帰ってきていたので挨拶をして朝食をもらう。
「望姉さんは帰ってきていないの?」
「ん~望ちゃんは夜にならないと帰ってこないかな?」
「そうなんだ」
「怜ちゃんは今日は何か予定あるの?」
「あー、その咲夜さんとお買い物かな」
「怜ちゃん少し大きくなった?」
「うん、なんかね昨日急にね大きくなったみたいで」
「あらあらそうね、それじゃあクリスマスプレゼント代わりに母さんが買ってあげるわ、一緒に行きましょうか」
「えっと母さんも付いてくるの? 父さんは?」
父さんに目を向けても黙って頷くだけでよくわからない。
「お父さんはお留守番よ、ね」
父さんは黙って頷くのみ。や、まあこれでも仲がいいんだよ、昨日も一晩一緒にいたようだし多分。
「咲夜ちゃんも遠慮しないでね」
「はい、ありがとうございます」
母さんも一緒に買い物に行くことが決定してしまったようだ。そういうわけで朝ご飯を食べ終えて3人で今日の予定を立てて出かけるよ準備をすます。準備が終わりお店の開店時間に合わせる感じでタクシーで移動だ。
朱天と咲夜さんの母さんと俺の4人で、いつもの駅前のショッピングモールで目的のものを一通り購入する、流石にもう慣れたものでランジェリーショップに入っても恥ずかしいとか思わなくなっている俺がいる。服に感しては上は元々大きめのものを買っていたのでいいのだけど、ズボン系統が微妙な長さになってしまったので何着か購入しておいた。
あとはズボン以外にもロングスカートを何着か購入、母さんには咲夜さんとおそろいのコートを買ってもらった。買い物の後はウィンドウショッピングをしながらお昼までブラブラしている、飾り付けがすでにクリスマス飾りの片付けが始まっていて早いなーと思っている。
今更ながら母さんと咲夜さんに俺が3人並ぶと姉妹に見えるのかな、買い物の途中店員さんに3姉妹ですかと言われて母さんのテンションがバク上がりしてた。今日も今日とて朱天が護衛してくれているのでナンパの類は回避できている、流石に女マフィアに突撃してくるほどの猛者はいないようだ。
お昼は何にしようかと話し合った結果、母さんが一度行ってみたかったというケーキバイキングの店に行くことになった、正直お昼ごはんでそれはどうなんだろうと思ったけど、聞いた所一応普通のご飯も食べられるようなのでそこに決定となった。
結果から言うと美味しかった、俺は最初にオムライスを食べたのだけど満足した、ケーキも色々な種類があってそっちも美味しかった。そのうち織ねぇや明海ちゃんに楓と桜さんとも来るのも良いかもしれない。
昼食の後は晩ごはん用の食材を買うのに付き合い帰る流れとなった。その関係で今晩のご飯は俺と咲夜さんも手伝う事となった、俺に関しては不安しか無いけどいい機会なのかなと覚悟を決めた。




