第05話 クリスマスイブの夜
タクシーの中ではみんな無言だった、クリスマスだからかそこそこ渋滞しているようだったけど、30分ほどで家にたどり着いた。
「ただいまー、って電気も点いてないし誰もいないみたいですね」
「おじゃまします」
「とりあえずお風呂スイッチ入れますね」
部屋の電気を付けてコートを脱ぐ、咲夜さんのコートも預かりハンガーにかけておく、部屋は冷え切ってるのでさっさとエアコンを付けて部屋があたたまるのを待つ。
「咲夜さんは座っててくださいね、温かい飲み物いれますから何が良いですか」
「それじゃあお茶でももらおうかしら」
「はーい、少しお待ち下さいね」
電子ケトルでお湯を沸かしつつ、お茶を用意する。お湯が沸く前にお風呂場に向かってお風呂の栓がちゃんとされているのを確認してからお湯はりボタンを押す。
リビングに戻るとテーブルの上には予定通り母さんから父さんと今日は帰らないという手紙が置いてあった。こちらを気にしてなのか相変わらず二人でラブラブしたいからかはわからないけどまあ良いだろう。望姉さんも今年も不在の予定なので位階が上がったことを相談したかったけど仕方ない。
晩御飯は母さんが作ってくれていたホワイトシチューがメインとなっている、後はケーキを買う時に近くのお店で買っておいたクリスマス仕様のプレートを準備している。
咲夜さんとお茶を飲みつつお風呂が湧くのを待つ、部屋もエアコンで十分に温まった所でお湯はりが終わった音楽が鳴った。
「おねえ、咲夜さん先にお風呂にします? ご飯にします?」
ついついお姉様と言いかけて言い直す、咲夜さんは仕方ないわねと言うような表情をしている。
「そこはそれとも私? という所じゃないかしら?」
「えっと、その、まだそういうのは早いと思います」
想像してしまって頬が赤くなるのがわかる、自然と体がもじもじしてしまう。
「うふふ冗談よ、そうね移動がほとんどタクシーだったけど、まだお腹はあまりすいていないしお風呂を先に済ませましょうか」
「わかりました、それじゃあ着替え用意しますね」
「私も用意しておくわね、怜も一緒にはいるでしょ?」
「はい、それはいつもの事ですし……えっと、別々のほうが良いですか?」
「いいえ、そんな事は無いわよ一緒に入りましょう」
学院でもお風呂は一緒の時間に入るし咲夜さんの髪の手入れは俺が好きでやっていることなので、家のお風呂でも特に思うところはないけどどうしたのかなと思ったけど、観覧車でのことを思い出してなんだか恥ずかしくなった。
そうだよな、告白されたんだよな、俺もそれに答えてキスをして……それで一緒にお風呂って良いのかな、流石にキス以上はまだ早いと思うんだけど。まあいいや、気づかないふりをしておこうそうしよう。着替えをとるために部屋に戻りながらそんな事を考えていた。
◆
ちゃっちゃとお風呂そ済ませて咲夜さんの髪をドライヤーで乾かしている。入浴シーンは特に何かがあるわけでもなく普段通りだったということで割愛しておこう、あえて違ったことを言うなら、横並びに一緒に浴槽に浸かったくらいだろうか。
「咲夜さん髪乾きましたよ」
「いつもありがとう、変わるわね」
「はい、お願いします」
今度は俺の髪を咲夜さんに乾かしてもらう、最初は悪い気がして遠慮していたのだけど「私も怜の髪を合法的に触りたいわ」なんて言われて断れなくなった。室内にはドライヤーの音だけがしていて俺も咲夜さんも無言だけど、これはいつものことだったりする。
「はい、いいわよ」
「咲夜さんありがとうございます、それじゃあ晩ごはんにしましょうか」
「そうね、そうしましょうか、何か手伝える事はあるかしら?」
「えっと、基本温めるだけなので大丈夫です、テレビでも見ていた下さい」
とりあえずホワイトシチューに火をかけながら、電子レンジでプレートを温める、温め終わったものからダイニングテーブルに並べる。お酒は朱天用にワインを1本用意している、俺と咲夜さんのはスパークリングのジュースにした。
「咲夜さん、朱天準備できましたよ」
「ふむ、わしは適当にすますゆえ二人で楽しむがよかろう」
朱天はそう言って、適当にプレートからおかずを小皿に移しワインを瓶ごと持って何処かへ行った、気を使ってくれたのだと思う。
「あら、朱天さんは出ていったのね、気を使ってくれたのかした」
「そうかも知れませんね」
咲夜さんと俺のグラスにジュースを注ぎ、グラスを手に持つ、「ありがとう」と言いながら咲夜さんもグラスを手に持つ。自然に見つめ合う形になりアイコンタクトが自然と成立する。
「「メリークリスマス」」
チンっとグラスが触れる音がなる、このグラスを合わせる行為は地域のよって悪魔祓いの意味があるみたいだ。炭酸のジュースを飲み喉を潤し、テーブルにグラスを置く。
「「いただきます」」
母さんの作ったクリームシチューと買ってきたクリスマスプレートプレートを堪能する、母さんのシチューを食べたのは小学生以来かもしれない少し懐かし味がした。咲夜さんも満足してくれたようだ。
そろそろ俺も少しくらいは料理ができるようになったほうが良いのかな、時間がある時にでも母さんに習うのもいいかもしれないなと、咲夜さんと会話をしながら考えていた。




