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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
6章 最悪と最善の狭間の結末

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第08話 浄化

 広場に響き渡った叫び声、発生源は女郎蜘蛛だった。九尾に刺さっていた黒い杭が消滅した事により呪詛返しのようになったのだと思う。


「そこな娘ようやった、その調子で妾たちの楔も浄化してたもれ」


 千手姫が俺に向かい言ってくる、相変わらずお祖父ちゃんと朱天の攻撃を捌きながらであるが。


「余計な事を言うでないわ、わが主に打ち込まれし楔をそうもやすやすと浄化するとは忌々しい」


 今度は女郎蜘蛛がこちらをにらんだ後に、千手姫と迦陵に何かをしたようだ2人共苦痛の声を出したと思うとその身から黒いモヤが漂い始める。様子見のため少し距離を取っていたお祖父ちゃんと朱天、幻夜さんに刀矢くんと茜さん、椿姫に茨木と星来さんのそれぞれが対峙していた相手の様子が変化している。


 千手姫と迦陵の目が赤に染まりその顔からは一切の表情が抜け落ちる、そして普段は見えないはずの妖気が知覚出来るほどの濃度となりその身を覆っている、一方の女郎蜘蛛にも変化があった、人の姿をしていた下半身が蜘蛛のソレと変わっている。


「もう遊びは終わりじゃ、我が主様が来られる前にソナタらをを喰ろうてやろうぞ」


 俺はその言葉を聞いて嫌な汗が背中を伝いゾクリと体が震えた、女郎蜘蛛の言う主というのはあの仮面の翼持つモノのことだろう、あの黒い杭がそいつの仕業だとするとここに来る前に女郎蜘蛛を倒さないと危ない気がした。


「怜ちゃんやるよ、なんか嫌な予感がする」


「私も同じです、とりあえずまずは迦陵の杭を浄化します、後の事は織ねぇお願いします」


「おっけー、桜ちゃんと楓ちゃんは女郎蜘蛛に対処して、明海は九尾の見張りをお願い、咲夜ちゃんは千手姫とやり合ってるお祖父ちゃん達の援護をしてあげて」


 織ねぇの指示に従い返事を返すとみんな動き始める、俺と織ねぇは迦陵と戦っている3人に合流する、目を赤く染め感情の消えた表情で迦陵は先程のぬるい攻撃ではなく一撃でも当たれば体が吹き飛ぶような攻撃をするようになっている。


「皆さん私が浄化しますので、合図とともに迦陵をその場に留めてください」


 俺は九尾のときと同じように神器じんぎに神気を注ぎ込む、先程よりも少し時間をかけて神器に神気を満たす、2度めとなると残りの神気が心許なく感じてくる。


 黒い杭の位置は4本の腕のちょうど真ん中の背中側だ、俺は軽く走り九尾のときと同じように結界を足場にして駆け上がり迦陵の頭上を超え背後に回り込む。


「今です!」


 俺の合図とともに迦陵をその場に留めるように一斉に攻撃を加える。幻夜さんの姿が「鬼人化」という声と共にお祖父ちゃんと同じように変化しその勢いで迦陵の腕の2本を掴み動きを止める。迦陵は無防備となった幻夜さんの背中に向け残る腕で攻撃しようとしたが、どこからか現れた織ねぇが蹴りを放ち邪魔をする。


 幻夜さんと織ねぇの攻撃により動きを止めた迦陵に向かい残る二本の腕の一本に刀矢くんが攻撃を加える事により動きが止まり。そして最後の1本の腕は茜さんの居合斬りにより切断された。


「ウグガァァ」


 腕が切断された痛みによるものか迦陵が叫び声を上げその動きが完全に止まった。


「祓え給い、清め給え、かむながら、守り給い、さきわせ給え」


 俺は足場にしていた結界から飛び降りる、そして九尾の時と同じように言霊に神気を乗せ神器を杭へと叩きつけた、杭は九尾の時と同じようになんの抵抗もなく消えた。


「ウガァァァァァァ」


 そして再び広場に響き渡る女郎蜘蛛の叫び声、そして迦陵は九尾と同じように暴れまわりしばらくすると倒れ伏したようだ。俺は音だけでそれを感じながら迦陵にも女郎蜘蛛にも目もくれず千手姫へ向かい走る、ちょうど今何者かが一番外側の結界を通るのがわかったからだ。迦陵の黒い杭が消えた事による影響だろうか視線の先にいる千手姫の妖気濃度が濃くなったように見えた。


「お祖父ちゃん、朱天なんとかして千手姫の動きを止めて」


 狙う杭の位置は千手姫の首の後ろだ、先程と同じように結界で飛び越えようかとも思ったのだけど正直神気が心許ない。千手姫はその名にふさわしく最初は10本ほどしか出していなかった手が今では無数と言ってもいいくらい暴れ回っている。


 このまま突っ込んでいってもあの弾幕のような手に阻まれるのは目に見えている、とりあえず背後に回るために少し大回り気味に駆ける。途中咲夜さんの矢が何本も放たれるが無数の手に邪魔されている。


「千手姫、少しはこっちに協力してください」


 背後から声をかけてみるが変化は見られない、駄目かなと思った所でどこからか複数の火球が千手姫を襲った、千手姫は火球を防ぐために背後でうごめいていた手を前方に展開している。視線を火球の発生源に向けるとそこには黒い九尾が立っていた。


 火球が来るタイミングでお祖父ちゃんと朱天が左右に別れ、手の空いた隙間に攻撃を加える、その攻撃を防ぐためにまた背後の手が減る。俺はここしかないと思い駆け出す、神器に神気は充填済み後は殴るだけ!


「祓え給い、清め給え、かむながら、守り給い、さきわせ給え」


 再び言霊に神気を乗せ杭に神器を打ち付けようとした。


「小娘が調子に乗るでないわ」


 そう声が聞こえたと思った瞬間「怜ちゃん!」という叫びと共に俺は横に弾き飛ばされていた、不意打ちを食らった俺は吹っ飛び地面を数回ゴロゴロと転がったあと立ち上がると同時にただ一点を見つめて神器を振りかぶり千手姫の杭へと投げつけた。神器は狙い通り黒い杭を消滅させそのまま千手姫の首を殴打し地面へ転がる。


 そしてふと視線を地面に向けるとそこに倒れ伏す織ねぇの姿が目に入った、俺を突き飛ばしたのは織ねぇだったのだろう、だけでなんで? 立ち上がり織ねぇに向けて歩き出す、織ねぇはピクリとも動くこと無く地面に倒れ伏したままだ、そしてその地面は不思議と赤い色をしていた。

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