第04話 朱天とのお出かけ
秋休みが終わり11月の後期中間テストもつつがなく過ぎ去り冬季休暇が始まろうとしている。その間特に何が有るわけでもなく、あえて言うなら何人かの有志が集まって寮をハロウィン仕様に飾り付けたりコスプレしてお菓子を配ったりしていたくらいだろうか。ちなみに俺は全力で逃げた、何からだって? 言わなくても分かるだろ織ねぇからだよ、明海ちゃんの尊い犠牲は無駄にしなかったよ。
ハロウィンって確かキリスト系の何かだったと思うけど、この学院はキリスト教関係者は居ないわけで、わざわざハロウィンをするのは国民性というかなんでもありなんだなと思ったくらい。たまにこういうイベントを挟んで息抜きも必要と学院も特に何も言わないようだ。
この学院の冬季休暇夏季休暇はちょっと俺が通っていた小学校に比べると期間が長くなっている、理由は夏季休暇と同じく順番に移動するから日数がかかるから。そう言うわけでこの学院の冬休みは12月16日から移動が開始され、冬季休暇が終わるのは1月15日と実に一ヶ月と言う長さになる。
そんなに長く休みとって勉強の方は大丈夫なのかと思うかもしれないけど、体育などの授業がない分そこに入れ込んでいるので問題なくカリキュラムをこなすことができるようだ。
そして冬季休暇が長い理由は他にもある、お家柄年末年始はそれぞれの家の事情で忙しい生徒が多いからという事。かく言う俺たち比売神家も年末年始忙しい人の一員だ、比売神家が所有し管理している比売神神社の手伝いに駆り出される事になっている。
男だった去年までは6日に行われる本家の新年会までは、友達と初詣に行ったり家でゴロゴロしてたりしてたんだけど、今年はガッツリ手伝いに駆り出される事になっている。その辺りの話は夏季休暇で神楽舞や祝詞の勉強の時に教えられていた。実際日曜なんかは沙織さんからあの神楽殿を借りて咲夜さんや明海ちゃんと一緒に舞の練習を欠かさずしている。
冬季休暇が始まり生徒が学年別に移動をしている中、夏季休暇の時と同様に出された課題を消化をして終わる頃には生徒が全員居なくなり俺たちも学院から出ることになった。夏季休暇のときとは違い、俺たちはそれぞれの家で数日過ごし本家へは26日に集合してそこから比売神神社への手伝いに駆り出される事になる。
学院から一緒の車で移動してきた織ねぇと明海ちゃんと咲夜さんに別れを告げ、俺は久しぶりの実家に帰り着いた夏以来の帰還でそれほど時間はたってないはずなのにやけに懐かしい。
「ただいまー」
「あらお帰りなさい遅かったのね、それとあなたが朱天さんね娘がお世話になってます」
「そう畏まられるな母上殿、初めてお目に掛かるわしは朱天と申す、縁あって主殿の式となったしがない鬼、ここに居る間はこの姿でいる事になるのでよろしく頼むの」
そう朱天は人に变化して依代から出て過ごすことになっている、学院でもそうだったが結構自由は効くようなので好きにしてもらう事にした結果、俺とは基本別行動をしてもらっている。
望姉さんにも一度ちゃんと紹介したかったのだけど居ないようだ。
「望ちゃんはもう神社のお手伝いに行っているから会いたかったら神社に行ってみるといいわよ」
「いや元気にしてるならいいよ、夜には帰ってくるんでしょ?」
「どうかしら、でも24日と25日はお休みもらってるみたいだったわよ」
24日と25日というとあれだよね確実に、俺も咲夜さんとデートの予定を立てている、と言っても俺たちはまだ中学生だから24日は夕方には戻ってきて、ここでクリスマスパーティーをして泊まってもらうつもりだ。その話を母さんに言ったら了承を得られたのでホッとした。そういえば母さんと父さんは咲夜さんと会ったことないんじゃないのかな?
久しぶりの実家だけど特にやることがない困ったものだ、そんなわけでデートコースの見回りと暇つぶしも兼ねて朱天と駅前へ出かけることにした。今日の俺の出で立ちは望ねえさんのお古の茶色のニットセーターのストレートデニムで足元はスニーカーと言う姿に首元が寒いのでマフラーも巻いている。
一方朱天は朱色の髪を後ろで束ね紺色のスーツの上から白いロングコートを肩にかけサングラスを掛けている、なんというか見た目女性マフィアに見えなくもない。肩に掛けているコートは腕を通しているわけでもないのに、謎の力で飛んでいったりずれたりしないのは見ていて不思議に思う。
「クカカカカ、今の時代に人里で買い物など初めてで楽しみよの」
「まあ良いけど、大丈夫だと思うけどアヤカシって事はバレないようにしてね」
「その様なヘマはせぬよ、と言っても相手の力量次第ではあるがの」
母さんに呼んでもらったタクシーに朱天と乗り込みやって来た駅前はクリスマス仕様に彩られていた。今は昼なので電飾や飾り付けが巻きつけられているの姿しかわからないけど、夜に来れればきっと綺麗にライトアップされているんだろうな。
「朱天はどこか行きたいところとか欲しい物とかある?」
「ふむ、特に無いが何でもいいなら酒かの」
「ごめん、流石に未成年がお酒買うのは無理、帰ってから父さんの分けてもらうか本家に行った時にでもおばあちゃんにお願いしたほうが良いかな」
「そういう事なら気にせずとも良い比売神の長老殿に融通してもらうとするでの」
「朱天は服とか買わなくてもいいんだよね、その妖力? 鬼人力? とかなんかそれでどうにでもなるとか前聞いた気がするけど」
「そうさの、わしの体を構成しているモノの力である鬼人力で衣服などもどうとでもなるでの必要はないの。ああ、そういう意味ではこの姿に合うような衣装の書かれた書物などあれば便利かもしれぬの、今の服は他の者が着ていたのを真似て作っておるからの」
「そっか、なら本屋で適当に雑誌とか衣装の服とか書かれたの買おうか」
「その辺りは主殿に任せるゆえわしは付いて行くだけだの」
こんな感じでまずは本屋でファッション誌などを物色して、朱天が気に入ったのを何冊か購入した。本を買ったのは良いのだけど、持って移動するのには邪魔な事に気づいて学院でも使えるようなリュックサックを購入することにした。学院では手提げタイプのカバンを使っているけど、特に制限はないので両手が空くリュックにしたいとは思っていたから丁度良かったかもしれない。
朱天がお昼は和食が食べたいと言うので暖かい蕎麦を食べ、あとはデザートとして甘味処で抹茶とお団子を食べた。その後はぶらぶらしながらクリスマスに周る予定の目星も着いたのでタクシーを拾って帰ることになった。これで咲夜さんとのデートの準備は万端だ。




