閑話 ???
「おーい、怪童のじーさんいるかー」
「おうおう、姫さんかいまた勝負でも挑みに来たか」
怪童のじいさんを見つけ駆け寄る、じいさまとは名ばかりの熊ほどの巨体の男が怪童丸と呼ばれるじいさまだ。
「それがな親父から連絡が来てさ山を降りることにした、今まで世話になったから別れの挨拶をしに来たんだわ」
「そうかい、それは寂しくなるな、親父殿と言うことは酒吞はどこで何を?」
「それがなよくわからん、にょしょうになったやら名前を捨てたやらボクにも意味がわからないんだわ、だけどボクの母さんの実家にいけばいいらしいわ」
「そうか、お主が居なくなるとこの辺りも静かになるな」
「にししししし、心にもない事は言わなくてもいいよ、うるさいのが居なくなってせいせいするでしょ」
「そうでもないのだがな、まあ良いそうだな選別だこれを持っていけ」
怪童のじいさんが雷の模様の描かれた手斧を差し出してきた。
「いや、それってじいさんのとっておきだろ」
「ああ2本有るうちの1本だ、まあ弟子への手向けだとでも思えば良い」
「弟子……か、うんだったら受け取るよ、じいさん今までありがとう」
ボクは受け取った手斧を腰から下げる。
「なあにこちらこそ楽しかったわ、暇ができればまた遊びに来れば良い」
「そうする、それじゃいくね、また会う時まで息災でな怪童丸殿」
ボクは深々と頭を下げ振り返り返事を聞く前に走り出す。
この山に来てから10年は経っただろうか、じいさまとはその時からの付き合いだ、結局一度として勝てなかった所か本気すら出させられなかった。次に合う時は本気を出させた上で勝ちたい。
山を降りる途中ずっと過ごしてきた洞穴に戻り茨木の姉さんと合流する。
「姫よお戻りになったか、荷は纏めましたいつでも出られますよ」
「ありがとう姉さん、さっそく行きましょうか」
ボクは荷物を背負い歩き出す、それに合わせて茨木の姉さんも付いてくる。茨木の姉さんとは親父や母さんと一緒に暮らしている時からずっと姉の様にボクの世話や遊び相手をしてくれている人だ。
昔なにかがあって親父に顔向けできないなんて言ってた時期もあったらしいけど、親父が「お主が無事で良かった」と笑って許してくれたのに心底惚れ直して再び配下にしてもらったと聞いた。
母さんが亡くなった後は親父と姉さんと旅をし、ボクが独り立ちする時に一緒について来てくれたボクに取って最高の姉でありそれ以上の存在でも有る。恥ずかしながらボクの色々な初めては茨木の姉さんに貰ってもらった、まあ何ていうか今となっては姉さんはボクにとって姉であり恋人であり最愛の人なわけで……。
「姉さんすぐ向かうのも面白くないし色々回ってからでも良いと思う?」
「どうでしょうねー、お話の内容は少しわけがわからなかったですけど緊急性はなかったようですし1,2年は寄り道しても良いのではないでしょうか?」
「うんうん、まあ急ぎならまた連絡をよこしてくるでしょ、少しブラブラしてから行くとだけ返しておくよ」
ボクはカラスを呼び髪の毛を1本その足にくくりつけて飛ばす。
「頼んだよー、さてとそろそろ人の姿に化けましょうか」
ボクは变化の技を使い姿を変える、2本あった白色のツノは消え短く刈られた黒髪に赤いメッシュが一筋、見た目は小学生にも見えなくはない身長の少年にも見える姿に変わった、Tシャツと短パンがよく似合っていると自負する。
茨木の姉さんも姿が変わり、青色のツノは消え綺麗な群青色の髪はそのままに、優しそうな目と口元が印象的なおっとりめの女性の姿に、服装はゆったり目のワンピースとロングスカートの似合う女性へと変わった。
「さーて、姉さんどこか行きたい所ある?」
「私が行きたい所はいつでも姫が行きたい所ですよ」
「にししししし、姉さんはいつもそればっかり、それじゃあとりあえず西にでも行こっか」
「はいどこまでもお供します」
母さんの実家も気になるけど、もう少しだけ自由にさせてもらうよ親父殿。
山を下った所の街道で、女性の運転する大型トラックを選んでヒッチハイクをし乗せてもらい、ボクと茨木の姉さんは母さんの実家とは逆の西へ向かう事にした。
(さて久しぶりに美味しいものでも食べたいな)
そんな事を考えながらトラックのお姉さんは茨木の姉さんにおまかせし、ボクは少し眠らせてもらう事にした。
次話からは4章です、4章は本編10話+閑話3話となっております。戦闘のない百合要素ましましの日常編です。そして4章で第一部完という感じになります。そんなわけで引き続きお読み頂ければ幸いです。
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