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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
3章 夏の修練と鬼ヶ島での戦い

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閑話 比売神真

 孫の望から酒天童子の名を聞いた時私は大いに驚いた。酒呑童子と比売神家の関わりを知るのはもう私しかいない。ただの偶然か、それとも気まぐれなのか孫である怜の式となったみたい。


 事情を詳しく聞きたいと思った、できれば直接本人からそして酒呑童子からも、そういうわけで急遽こちらに怜を呼ぶことにしたの。望に連れられて来た怜は少し不満そうだったけど、理由を聞いたら少し可愛そうな事をしたかなと思ったわ。


 3日程夏休みを満喫する予定だったみたいで、そういう事情ならそこまで急がなくても良かったのだけど……なんて言ったら泣き出しそうなので黙っておくことにした。この埋め合わせは近いうちに何かしてあげるとしよう。


 怜に酒天童子との出会いから契約、そして戦いの話まで聞いた。

 酒天童子、今は朱天という名を付けられた鬼とも話をしてみたかったのだけど、未だに眠りから覚めていないのか反応がないらしい。


 これはもしかすると、と思い今日はお開きにして怜には一晩泊まってもらう事にした。さてと準備しないと行けないものがある、1つは特別なお酒、もう1つは美味しいお酒、おつまみもいるかしらね。


 時間は深夜、夕食もお風呂も済ませた、8月ももうすぐ終わり少しずつ秋の気配が感じられる縁側で、赤い盃にお酒を満たす。怜はもう寝ているだろう。5分ほど待っただろうか私の横に長身の女性が「どっこいしょ」と座る。

 本当に女性になってしまったようだ。


「まるでおじいちゃんみたいですよ」


「クカカカカ、中身はじじいそのものだからの」


「ふふふ、とりあえずこの神酒をどうぞ、今のあなたの状態を安定させることが出来るはずだわ」


「そうか、それは助かるの」


 そう言うと鬼は盃を手に持ち一気に煽った。


「これはまた……ぐっ、はぁ、おおわしの中で暴れておった神気が治まりよったわ」


「それは良かったですね、ささ口直しにこちらも一献どうぞ、こちらは普通の酒ですけど美味しいですよ」


「ありがたく頂こう、ほうこれは……旨いのこれほどの酒を飲むのは久方ぶりだの」


「大江山の酒天童子殿、此度は我が孫をお助け頂きありがとうございます」


「なあに、われとて思う所があっての事よ、気になさるな」


「それは……比売神玲の事でしょうか」


 鬼は少し驚いた表情でこちらを見た後、懐かしむように静かに笑みを浮かべた。


「もう150年は前の事のはずだがお主は知っておるのか」


「ええ知っています、と言ってももう知るのは私だけでしょうけど祖母から聞かされました、家系図には病死とだけ記載されていますけどね、高祖母は幸せでしたか?」


「そうよな、最後まで笑っていきよったわ」


「あなたに改めて感謝を、当時のあなたの行動のお陰で今の比売神家があるとも聞いております」


「よせよせ、惚れた弱みよ、わしもあやつも好き好んで共にいる事を選んだだけよ」


 詳しくは伝えられていないが当時比売神家には外部から干渉があったらしいのだ、それを有耶無耶にしてたのが、私の高祖母である比売神玲の酒天童子による誘拐、神隠し事件だと聞いている。


 暫く無言の時が続く。


「お主の身内に面白き者が一人おるの、今でも相当の力を持つようだがもう一歩なにかが足りないように思えたがな」


「孫の詩織の事ですね、そうですねあの娘には共に競うような相手がいなくて若干伸び悩んでいる所があるかも知れません、あとあの娘には色々とあったので中々心を許せる相手もいないようですし、それも影響しているのだと思います」


「そうか、それなら丁度いいかも知れぬの、比売神の長老殿よ、わしの……わしと玲の娘を世話する気はないか、あやつも色々未熟なれど力はあるのだがずっとアヤカシの世界で生きてきたからの、そろそろ人の世を感じてみるのも良いかと思うておっての」


 盃を傾け中の酒を一気にあおって飲み干し息を吐くと盃を伏せた、もう良いということだろう。


「ま、ただの思いつきだの、祭りも近いあやつがどちらに付くかは知らぬが今のうちにこちらに引き込んでおくのもええだろ、少し考えてみてもらえぬかな」


 いい話なのだろう、詩織の事も解決できるかもしれない、それに高祖母の血を引くなら比売神家の身内となる、それに私の感が受けるべきだと言っている。


「お願いできますか、力持つものがこちら側となってもらえるとありがたいですし、その娘さんは比売神の身内と言う事ならば断る道理もありません」


「ならば頼むとしよう、こちらの事情なども含めて連絡は送っておくが今どこで何をしておるのかはわからぬのでな、すまぬがこちらに訪ねてきた時は対応をしてやってほしい」


「承知致しました、今後とも孫の事よろしくお願いしますね」


「クカカカカ、我が主殿に感しては任せるが良い面白き娘だしの、それではの此度の事は世話になった」


 そう言って鬼は立ち上がり歩いて行った、怜のもとに戻ったのだろう。鬼が去ったのを見届けて隠れていた夫の源一郎が横に座る、私はその肩に身を預け空を見上げる。暫くそうした後身を起こし新しい盃を2つ取り出しお酒を少しだけ注ぐ。


 久しぶりに二人で飲むお酒は強くて甘く感じられた。

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