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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
3章 夏の修練と鬼ヶ島での戦い

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第13話 夏の終わり

 うとうとしていたようだ、気がつけば脱衣所が少し騒がしくなっていた、水着から着替え終わった人達が来たのだろう。


(また何か聞きたい事があれば聞くが良い、わしはもう一眠りするとしよう、次起きた時は酒が飲みたいものよ)


「お酒はミカ会長に聞いてみるけど、ここに居るほとんどの人が未成年だからどうなるかわからないよ」


(クカカカカ、そうか期待せずに待っておるとしよう)


 それだけ言うと朱天は眠りに入ったようだ、あーこのブレスレットの中がどうなっているのか聞きそびれた。しばらくするとぞろぞろと人が入ってきだした。その中に咲夜さんを見つけた俺は洗い場へ向かい、咲夜さんのお世話をしようとしたけど「もう、私のことは良いから先に上がってお休みしなさい、すごく眠そうな顔してるわよ」と言われ脱衣所の追い出された。


 脱衣所にいた明海ちゃんが下着と浴衣を渡してくれたので、お礼を言って受け取り着替えを終えた後、水を一杯飲み少しほてっていた体が落ち着いたのでお肌のお手入れと髪のケアをしているとミカ会長が脱衣所に入ってきた。


「怜くん昨日からお疲れ様だ、広間におにぎりと味噌汁を用意してもらっているので食べて休むと良い、今日から何日かはここでゆっくりして貰う予定だ、その後は学院へ戻ることになる、とりあえず今日はみなが徹夜明けなので休むといいだろう」


「ミカ会長もお疲れ様です、皆さんに救出の御礼を言いたかったのですけど、流石にそろそろ限界なので先に休ませてもらいますね」


「うむそれがいいだろう、あと救出の礼は必要ない元々我々の仕事だったわけだし、討伐隊の犠牲者が出なかったのは君の結界のおかげだと聞いている、むしろこちらから皆を代表してお礼を言わせてもらうよ」


「そう、ですか、わかりました、それではお先に失礼します」


 俺は一度頭を下げてからその場を離れ、おにぎりと味噌汁を頂いた後部屋に戻り、歯を磨きナイトキャップをかぶった時点で限界が来たようで、布団に倒れ込むと気を失うように眠りについた。


 目が覚めて時計を確認すると朝の5時前だった、アラームをセットしていなかったのにいつもの時間だ。寝たのは昼前だったから18時間ほど寝たことになるのだろうか。


 喉が渇いたので水を飲んで一息つく。一瞬二度寝しようかと思ったけど日課のランニングに行くことにした。ジャージに着替え玄関口に行くとミカ会長がいた。


「おはようございます、ミカ会長」


「おはようよく眠れたようだね、今からランニングかい」


「はい少し走ろうかと思いまして、ミカ会長はこんな朝早く何を」


「ああ、私は見送りだよ、うん丁度来たようだ」


 ミカ会長の目線を追ってそちらを見ると、陰陽寮の5人がこちらに歩いて来る所だった、5人はミカ会長の前で止まると一人が代表する形で挨拶を交わしている。話が終わったのか代表者の人が俺に話しかけてきた。


「今回は助かったよ、あれだけのアヤカシを相手に討伐隊から死者が出なかったのだからね、改めて礼を言うよ」


「いえ、こちらこそお世話になりました」


 お互い礼を言って、陰陽寮の5人は帰って行った。


「さて、7時には大広間で朝食になるので遅れないように」


「はい、でわ行ってきますね」


 ミカ会長と別れランニングへと向かう、走りながら朱天に声を掛けてみるけど反応がない、繋がりは有るのだけど俺が思っているよりも消耗していたのだろうか、まあそのうち起きてくるだろう、戻ったらミカ会長にお酒を貰えるか聞いてみよう。


 走りながら俺が攫われた辺りを見てみてもあの時にあったアヤカシの領域は感じられない、多分あれが神隠しの正体だったのだろう。なんとなくだけどあの領域を作っていたのは桃幻導師ではなく、今回の事を画策した何者かだったような気がする、そして俺が狙われたって事なのかな……。


 考えても答えが出るわけではないし少しだけ気に留めておく事にした。1時間ほどかけて旅館に戻ると着替えをもって朝風呂を済ませ、白のTシャツにデニムという普段着に着替えて広間に向かうと大体の人は揃っているようだった。


「おはようございます、そういえば望姉さんを見かけないのですが」


「おはよう怜ちゃん、望さんなら私達が戻った時点で状況を確認して昨日のうちに帰っていったよ」


 織ねぇが答えてくれた、そうか望姉さん先に帰ったのか、まあ大学もあるし俺達と一緒に学院に行くわけじゃないし残っていても仕方がないからな。

 俺は空いている咲夜さんの隣に座り挨拶を交わす。


「もう大丈夫そうね、昨日は夜も起きてこなかったし心配したのよ」


「ご心配おかけしました、それに色々ありがとうございます、明海ちゃんもありがとうね」


「いえ、いつもお世話になっているのは私の方なので気にしないでください」


 先程スマホのメールを確認した所、実は眠すぎてぼーっとしていてお風呂場に忘れていた下着や巫女服を咲夜さんと明海ちゃんが回収して一緒に洗濯してくれていたようなのだ。話をしているうちに全員揃ったようでミカ会長の挨拶で食事が開始された。


 今日を合わせて2日間は完全にオフになるみたいだ。海水浴を楽しむのもいいし温泉街で買い物をするのもいい、夜には夏らしく花火でもやりたいななんて話ながら食事を済ます。夏の間はほぼ鍛錬漬けだったので咲夜さんとやっと夏休みらしいことができそうで楽しみだ。


 そんな俺の楽しみは無情にも打ち砕かれることになる。

 食事も終わり俺は咲夜さんとこの後どうしようかと話していると、織ねぇが近寄ってきて俺を羽交い締めをしようとしたけど身長が足りなくて諦めたのか腕を掴んで引っ張り出した。


「お、織ねぇ何してるの、何処行くの?」


「うん、まあ、そのね」


 そのまま外に引きずられていき見覚えのある車の後部座席に放り込まれた。


「ごめんね怜ちゃん、本家から怜ちゃんにだけ呼び出しなんだよ」


「えぇー、休みは、夏休みは、咲夜さんとの夜の花火はーーー」


「荷物はちゃんと乗せて置いたから、それじゃ次会うのは学校でね」


「いつの間に」


 ドアを開けようとしても中から開けられないようにロックが掛けられているようだ、仕方ないので窓を全開にして付いてきていた咲夜さんと明海ちゃんに手を伸ばすも、困った様な表情を浮かべ手を振るだけだった。この流れこやつらみんな知っていたな、なんで毎度毎度俺だけ何も教えられてないんだよ、流石に泣くぞ。


「はぁわかりました、お姉さま、明海ちゃん、それと織ねぇ、学院で会いましょう、私抜きで少ない夏休みを存分に満喫してください」


「ははは、そういじけないの、花火なら学院でも出来るように母さんにお願いするからね、多分怜ちゃんが契約した鬼に関してだと思うから、怜ちゃんがなんとかしなさい」


 普段はおちゃらけている織ねぇから真剣な顔でそう言われたらもう何も言えない、朱天の事は話さないといけないとは思っていたから丁度良いのかもしれない。


 こうしてこの姿になってから初めて迎えた短い夏休みは、始まる前に終わりを告げるのであった。


4章「年末年始と年度末は大忙し」へ続く。

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