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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
3章 夏の修練と鬼ヶ島での戦い

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第11話 その名は桃幻導師

 さて突然名乗りを初めた桃幻導師と朱天にミカ会長と織ねぇだけど、名乗りにはちゃんと理由がある、と言うよりもやっぱり朱天って酒天童子だったんだね。なんとなくそんな気はしていたけど、そして鬼神なんて名乗っているし。


 そうそう名乗りだったね、名乗りとはつまり自分のルーツを知らしめることで、特性の強化を行う事が出来るらしいのだ、桃幻導師が自らを桃太郎と名乗る事で得られる特性と聞いて思い浮かぶのは鬼に対しての特攻だと思う、あとは犬猿雉のお供に関する事だろう。とまあ、そう言う感じで名乗る事により何かを得られる、逆に弱点を持つモノならその弱点も得てしまう事になる。


 そこで朱天が名乗り返した、元は酒呑童子だったが今は違うと俺の神気を得て鬼神となったと、元来の酒呑童子の弱点は毒とは童子切と言う刀なのだが、鬼神となりその弱点が無くなったと宣言した事になる、だけど代わりに首を切られても死なないと言う不死性も失われた事になる。


 それに関連して、ミカ会長と織ねぇの名乗りは自身の事を語ることにより自らの力を増すなどの効果が見込める、ミカ会長が自らを建御雷神の末裔と宣言した事により剣と雷の使い手として力が増す。一方織ねぇは名前しか名乗らなかったそれにも理由があるが今の所は桃幻導師に弱点を晒さないためとだけ言っておく。そしてこの名乗りだけど、真実と違う事を言うと逆に弱体したりする場合があるので、普段はする人は殆どいないみたいだ。


 戦いに目をやると、朱天は六角棒を巧みに使い攻撃をいなしている、桃幻導師はいつの間にか右手に野太刀を左手に錫杖を持ち、朱天とミカ会長に織ねぇの攻撃を捌いている。桃幻導師は攻撃を受けても気にしていないようで少々の傷ならすぐに回復しているようだ。


 一方こちら側はよっぽど強い攻撃を受けない限り俺が張った結界は壊れないので無傷の状態になっている。離れている所からはマリナさんに美鈴さんと雪菜さんが攻撃をしているけど、翼の風圧で札はそらされマリナさんの魔法も効果がないように見える。


 ここで俺が出来ることを考えてみたがなにもない、結界を張る以外にはただ見守ることしか出来無さそうだ、咲夜さんと明海ちゃんに相談するもこの状況をどうにかする手が思いつかない。


『このままでは埒が明かぬな、我が友よこやつらの足止めを』


 桃幻導師はその身を黒いモヤへと変えたと思えば、そのモヤから犬猿雉が飛び出していき朱天たちに襲い掛かる。モヤから再び姿を虚無僧姿に変えた桃幻導師は飛び上がり大きく後退すると力を溜めているのか錫杖が闇色に染まり初めている。


「ぬぅ、あれは危険かもしれぬの、ミカヅチと娘っ子よここは任せた、わしが活路を開く」


「朱天殿……了承したこちらも全力であたらせてもらう」


「娘っ子って私の事? まあ良いけど任されるわ」


「うむ、では頼むぞ」


 朱天は六角棒を襲ってきた雉に向かって投げつけた、雉はそれを避けるために羽ばたき上昇しようとしている。


「お姉さま!」


「ええ、ここね」


 俺の呼びかけに咲夜さんが矢を放つ、その矢は放物線を描き寸分違わずに雉の首を貫いた。大したダメージでは無いだろうけど朱天が抜け出す隙が出来ただろう。その隙を逃さず朱天が桃幻導師に走り出す、それを邪魔しようと犬と猿が行く手を阻むがミカ会長と織ねぇが邪魔をする。


「邪魔はさせないよ」


 ミカ会長が犬へ切り込む。


「あんたの相手は私だ」


 織ねぇが猿に蹴りを放ち吹き飛ばす。


 朱天はそれを一瞥した後さらに加速し桃幻導師へ駆けよる。


「主殿!」


 俺はその呼び声に答えるように残っている神気を朱天に叩きつけるように飛ばす。俺の神気を吸収した朱天が金色こんじきに輝き出す。そして桃幻導師が闇色の力を目の前に迫った朱天に向け放とうと錫杖を向けるが、それを待っていましたとでも言うタイミングで何処からか無数の苦無が桃幻導師を襲った。全身に苦無を受け錫杖を持つ手の軌道がずれ朱天の横を闇色をした光の放流が通り過ぎる。


『ぬかったわ』


 術後で動けない桃幻導師に向かい朱天は拳を振るう。


『グガァァァァァァァ、貴様ーーーー』


 腹に一発、浮いた所で顔を掴み上空へ蹴り上げる。


「───────────────────堕天」


 マリナさんの呪文の効果なのか上空へ上っていた桃源導師の体が急速に地上へと落ちて行く。


「「四門招来玄武岩・急急如律令」」


 それを待っていたとでも言うように、美玲さんと雪菜さんが声を重ね術を発動させる、地面にぶつかりそうになった桃幻導師を受け止め突き刺すように地面から岩で出来た棘が脇腹を穿った。そこから抜け出そうと暫く藻掻いていたが諦めたのか動きが止まる。


『よもやここで終いとはな』


 犬も猿も雉も再び倒されたのか黒いモヤとなって浮いている、俺は再び桃源導師に吸収されないようにモヤへ結界を張ってその場から動けないようにした。朱天、ミカ会長、織ねぇが桃源導師を警戒しながら近づく、俺たち後衛組は念のため少し離れた所で待機している。


「桃源導師よ、お主の目的は何だったのだ」


『我の目的か、それはな酒天童子貴様自信よ』


「わしだと、それはどういう事だ」


『本来の目的は貴様を此度の祭りに参加させぬ事よ、どうせ貴様のことだ人に与するつもりだったのであろう』


「ふむ、それだけではなかろう」


『カカ、さあてな……そこの酒吞の主よ1つ頼みを聞いて貰えぬかな』


「えっ、私ですか?えーっと何でしょうか」


「そう警戒せずとも良い、頼みというのは我と我が共らを浄化してほしいのだ、ここらで我も友らも恨みを忘れ桃太郎として復活するのも良かろう」


 俺は朱天に目配せをすると、朱天は頷き「わしからも頼めるか」と答えた、浄化したら恨みを忘れるとかよくわからないが、ミカ会長や織ねぇに目配せしても頷くだけだった。


「わかりました、私で良ければ浄化しましょう、お姉さまと明海ちゃんも手伝ってくださいね」


 咲夜さんと明海ちゃんが頷くのを確認してから俺はまず犬猿雉の結界に浄化の効果を上乗せした結界を張る、続いて桃幻導師にも浄化の結界を張る。俺は神器の石突を地面に打ち付ける事で鈴を鳴らす、それに合わせるように明海ちゃんが神楽笛を奏で始め、咲夜さんが笛の曲に合わせるように神楽弓の弦を弾く。


 暫くすると犬猿雉だった黒いモヤが光の粒子となって消えて行き、桃幻導師も少しずる光の粒子になり始める。


『あぁ浄化とは存外心地よいものなのだな感謝するぞ娘子たちよ、最後に1つ此度の絵図を描いたのは我ではない、そして其奴は各所で我やこの島のように封印されているアヤカシ共を開放しようとしておる、目的までは知らぬがな祭りに向けて何か画策しておるのだろう』


「それは厄介だな、導師殿よそいつの名など他に知っていることは無いだろうか」


『ミカヅチの者か、すまぬなやつの名どころか姿すら見ることが叶わなかったわ』


「そうですか、導師殿ありがとうございます」


 どんどん桃幻導師の体が粒子となり消えていく、その光景をみんなは黙って見守っている。


『しゅてん……たっしゃで……また…あお…ぞ』


 桃幻導師は最後に呟くようにそう言って消えていった。


「ああ、桃幻導師よいつかまた相見えようぞ」


 朱天は空を見上げながら呟く、その横顔は少し寂しそうに見えた。

 こうして俺たちの長いようで短かった鬼ヶ島での戦いは幕を閉じるのであった。。

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