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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
3章 夏の修練と鬼ヶ島での戦い

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第07話 鬼さんこちら手のなる方へ

「お主なぜここにおる、ここは危険だと申したはずだがの」


 少し掠れた声で鬼が話しかけてきた。やばいと思った時には遅かった、背後が騒がしくなるのが分かる。


「チッ、小鬼がおったかお主が見つかると厄介な事になる隠れるぞ」


 鬼はそう言うと俺の返事も待たずに残っている左腕で俺を抱くと空へ飛び上がった。俺は急に高くなった視線に叫び声が出そうになったが、その行為は小鬼や他にもいるであろうモノに居場所を知らせることになると思い、両手で口をふさぎ出そうになる声を防いだ、だけどその行為は無駄だったようだ。


『みぃつぅけぇたぁ』


 風切り音で聞こえるはずがないのに、その声ははっきりと俺の耳に届いた、と同時に強い衝撃を受け少しの間斜め上方に飛ばされそして今度は下方向に落ち始める。鬼は気を失っているのか俺を抱いていた腕の力が抜けているのが分かった、離れないように今度は俺が鬼の腕に抱きつき落下方向に結界を集中させる。


 落ちて行く先には木々が密集して生えているのが見える、かなりの高さから落ちた様で地面につくまでの時間がすごく長く感じられた。再度鬼の腕に抱きつくと衝撃に備えるために歯を食いしばる、こんな高さから落ちた事は無いので結界がどれだけ役に立つか分からない。


 木の枝を折る音が聞こえ落下速度が弱まる、続けてガンッという音に続いてガリガリと地面を削り止まる。衝撃らしい衝撃もなく結界が壊れなかった事にホッとするがすぐさま別の結界を張る、先程張っていたのが物理結界で今新しく張ったのが隠匿の結界だ。


 地面が抉れているのでこのままここにいても直ぐにバレてしまいそうなのでなんとか鬼の腕を掴み引きずるように移動する、片腕が無いのにかなり重い元が筋肉の塊だから仕方ないのだろうけど。先程空中で聞こえた見つけたと言うあの声の主は俺たちを見失ったのか追ってくる気配はない。


 倒れた木が重なっていていい感じに隠れられそうな場所を見つけたのでそこに入り込み鬼の様子を確認してみる、右腕がなく左のツノが欠けているのは先ほどと同じ、違う部分は右の脇腹が抉れている所だろうか、血は流れていないようだけど痛々しい。


 ふぅと息を吐くと追加で鬼に結界を張る、今度の結界は再生の結界になる、この結界は使い勝手が悪いが大抵のものは再生出来る、だけどすごくすごく時間がかかるのだ、仮にこの鬼の腕を再生しようと思えば2,3年はかかるだろう。


 今回は応急処置代わりに張った、俺は結界以外の術が絶望的に使いものにならないのだけど、結界だけはおばあちゃんが「あんた結界術だけは気持ち悪いくらい使いこなせてるね」と言われるくらい優秀なの……か?


 まあ良いだろう、おばあちゃんのお墨付きである俺の結界術、ベースとしているのが有り余っている神気だ。普通結界を張るには印を結んだり呪文を唱えたりするのだけど、俺の場合は神気を巡らせ心で思えば対応した結界を張ることが出来る、そんなわけで発動速度も強度もピカイチなのだ。


 暫くじっとしていると、空気がジメッとしてくる何かが近くにいるようだ。


『どぉこぉどぉこぉにぃいぃるぅのぉおぉー?』


 何かが俺たちを探しているようだ、隠れている場所から確認するわけにも行かず黙って座り込む事しか出来ない。ハウリングするような二重にも三重にも感じられるその声は聞いているだけで鳥肌が立つようで気持ち悪い。息を止める上から視線を感じるが怖くて顔を上げて確認出来ない、隠匿結界で俺たちの姿は見えないはず。


『んーんーわぁかぁらぁなぁいぃ』


 近くで臭いを嗅いでいるのかスンスンと鼻息が聞こえる、続いて肉の腐ったような吐き気を催す臭いが漂ってきた。


『どぉこぉだぁどぉこぉにぃいぃっぅたぁしぃゅぅてぇんー』


 声の主は空に吠えるようにそう叫ぶと去っていったようだ、足音は聞こえないがあの生臭い臭いが遠ざかっていくことで分かった。なんだか吐きそうだ、浅く何度も呼吸をして耐える、姿は見れなかったがあれがここで封印されていた存在なのだろうか。


「あれはな、元は大陸の導師だった存在だの」


「目が覚めたのですか」


 鬼が目を開けこちらを見ている、気を取り戻したようだ。


「世話をかけたようだの、だがこの傷ではどうにもならぬ、お主は何処かで隠れ夜明けを待てばよかろうて」


「そうしたいのは山々なのですけど、動けないのです」


 動きたくても動けない、正直に白状しますと腰が抜けて立てない、いやまじ怖かった見つからないとは分かっていても怖いものは怖いんだ。


「お主……」


「その残念な物を見る目は辞めてくれませんか、自分でもどうかと思っていますので、それより先程のあれがここに封印されていたモノですか?」


「いいやあれは別口だの、封印されておったのはわしの古馴染みだったのだが、あの導師によってであろうが封印が破られその上狂っておったからのわしの手で消し去ったわ」


「殺しても良かったのですか」


「よいよい此度の祭りには間に合わぬだろうが100年も経てばまた蘇りよるわ」


「……ん?蘇るの?」


「クカカカカ、わしらアヤカシとはそういうものだの、お主は力を持つ割には余りわしらの事は知らぬようだの」


 そう言われても俺って4ヶ月くらい前まで一般人だったし、その辺りもまだ教えてもらってないからほとんど何も知らないんだよな。


「さて、時間切れのようだ周りを囲まれたの、お主そろそろ動けるかの」


 周りを見回してみると、あの餓鬼のような鬼がチラチラと視界に映る、まだ距離はあるようだけどこのままだと見つかるのも時間の問題かもしれない。隠匿結界は見えにくくなるだけで触れられればバレてしまう、さっきの大陸からの導師というやつは大きかったようでこの隙間まで入ってこれなかったので助かったけど、あの小鬼なら入り込めるわけだ。


「だ、大丈夫ですもう立てますよ、あなたはどうするのですか、流石に引きずっていけばバレると思いますよ」


「夜が明けるまで逃げ切れる自信はあるかの、夜が明ければお主の輩もこの島に渡って来るであろうて」


「余り逃げ切れる自信ないです、小鬼くらいでしたらなんとでもなりそうですが、あの導師ですか、あれ相手には逃げ切れないと思います」


「そうか……ふむわしが死ぬ分には構わぬが比売神の縁者を死なすのは気が引けるの、そうだのお主わしに名を与える気があるかの」


 鬼は真剣な表情を浮かべ俺にそう問いかけてきた。

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