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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
3章 夏の修練と鬼ヶ島での戦い

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第04話 鬼と気弱なお姉さま

「あん?わしの領域に入り込むとは何もんだ?」


 俺はとっさに自分自身と咲夜さんに結界を張る、訓練した成果を示すように秒にも満たない間に結界は張れた。咲夜さんが俺を背に隠すように前へ出る。


「あなたこそ何者ですか」


「クカカカカ、わしかそうよの昔の名は捨てた故、鬼とだけ呼べばよかろうなんならお主らが名を与えてくれても構わぬぞ、相応のリスクはあるがの」


 目の前の男を見てみる、顔には皺が刻まれ俺のおじいちゃんと変わらない年に見える、身長は3mくらいだろうかはだけた着物からは筋肉で盛り上がった胸板と引き締まった腹筋が見て取れる。朱色の髪からは刀のように反り返った黒いツノが2本生えている。名もなき鬼と名乗る通りこの男は鬼なのだろう。


 名をつけるのにリスクがあるとはどういう意味なのだろうか、分からないがここは咲夜さんの任せることにする。


「名前の事は遠慮しておきます、それよりあなたが最近ここらで人を攫っているモノですか」


「あん?人を攫う?しらんしらん、わしの預かり知らぬ事だの」


「じゃあここは?他の人が見当たらないのはなぜですか」


「それはお主らが勝手にわしの領域に入ってきたからであろうに……、ふむお主ら懐かしい匂いがするな……、クカカカカそうかそうかお主ら比売神の縁者であるか」


 鬼は瓢箪をあおりグビリと液体を飲み込む、嘘は言ってないように思えるそれにあの鬼は比売神家のことを知っているようだ。


「なぜ比売神家を知っているのですか?」


「なあに少々縁があるだけの事よ……、おぉわしの領域が揺れておるわ、クカカカカお主のともがらは面白き者がおるようだの」


 空気が震えている、音は聞こえないが何度も何度も何かを打ち付けているように。


「さて、わしはそろそろおいとまさせてもらうとしようか、先程もいうたがわしは人を攫ってもいないし喰らうてもいないからの」


「ええ、それはなんとなくわかります、あなた嘘がつけないでしょ」


「クカカカカ、はてどうであろうな」


 ちらりと目線を鬼ヶ島に向けるのがわかった。


「お主らはあそこに用があるのであろうが、死にたくなければ2,3日は近づかぬほうがよかろう」


「2,3日ですか何があるのか教えてもらえませんか」


「それは、ぬっ時間切れのようだの、わしの領域が限界のようだ、忠告はしたどうするかはお主らの好きにすると良い、えにしが繋がってればまた会うこともあろう」


 そう言うと鬼はその場から飛び上がると体に煙を纏い鬼ヶ島の方へ空を駆けていった。鬼が去ったのを確認した俺と咲夜さんは気が抜けたようにその場で座り込んだ、繋いでいた手は汗でベトベトになっているし、今更気づいたけど体の方も汗でベトベトしている。暫くすると世界に音が戻って来た、辺りを見回すと少し先に織ねぇと望姉さんとマリナさんがいるのが見えた。


「怜ちゃん咲夜ちゃん大丈夫だった?何があったの突然消たと思えば、アヤカシの使う領域みたいなのが現れて殴ってみたけど壊せなかったんだけど」


「怜に咲夜さん、二人共無事なようね良かったわ」


 織ねぇと望姉さんが色々と問い詰めてくるけど取り敢えず一度も旅館に戻りってお風呂に入りたい。そんなわけで旅館に戻りさっそくミカ会長と先程あった鬼とのやり取りを報告した。


「ふむ、これは少し討伐隊の者と話し合う必要があるかもしれないな、その鬼が言うことが真実ならまだこの辺りに人を攫う物が居るというわけだな」


「そうなりますね」


「もし鬼が嘘をついていたとすれば鬼ヶ島で何かをするための時間稼ぎとも取れるわけだ、ちなみに君達はどう思っているのかな」


 俺と咲夜さんは一度顔を見合わせた後、鬼は嘘を言ってないと思う事と言う通りに2,3日待ったほうがいいと答えた。


「よしわかった、君達の意見を参考として一度話し合って見るとする、望さんと詩織くんは私に付いてきて会議に参加してほしい、怜くんと咲夜くんはもう一度温泉に入ってくると良いだろう、他の面々はもう休んでもらって構わない明日朝7時の朝食時に会議での結果を知らせる」


 それぞれがそれぞれの行動に移す、そして俺と咲夜さんは再びお風呂タイムだ、髪も潮風と汗でちょっとぱさついてる気がするので洗い直しておいた、お風呂場には俺たち以外誰もいないようで貸切状態だった。俺と咲夜さんは内風呂の湯船に並んで浸かっている。


「お姉さま大丈夫ですか?何か元気が無いようですけど」


「私何も出来なかったわ、怜みたいに結界を貼ることも出来なかった……」


「それは適材適所といいますか、私の神気は結界特化みたいですから、それにお姉さまは私を守るように私をかばってあの鬼と対峙してくれましたよ」


「それは……あの鬼に害意が無かったから良かったけど、もし敵対していたらきっと私は怜を守ることも敵に立ち向かうことも出来なかったわ」


 泣きそうな顔をして咲夜さんが俺を見つめてくる。


「お姉さまそんな事言わないで下さい、私はお姉さまがいたから修練もがんばれたのですよ、それに先程もお姉さまが隣にいてくれたからすぐに結界を張る事が出来たのだと思います」


 俺は咲夜さんと指輪が触れ合うように手をつなぐ。


「それに私たちはきっと二人で一人なんですよ、一人で出来ないことも二人なら出来る、一人で歩めない道も二人なら歩いていける、一人ではたどり着けない場所も二人でなら到達できる、そんな繋がりを持っている気がします。ですのでお姉さまどうか私の隣りにいて下さい、それは私の力にそしてお姉さまの力になると思うのです」


 見つめ合う俺と咲夜さん、先程よりはましな表情になった気がする。


「私は怜の隣りにいてもいいのかな……」


「お姉さまは私と一緒にいるのが嫌になりましたか?」


「そんな事!そんな事無い、一緒にいたい……けど」


「なら良いじゃないですか、私がお姉さまと一緒にいたいのです、それに私達なんてまだ半人前ですら無いひよっこですよ、これからいっぱいいっぱい成長できると思います、だから私と一緒に成長していきましょう、先程も言いましたが一人より二人ですよ」


 殊更明るく笑顔を浮かべ俺の本心が伝わるように話した。握っている手に少し力が入るのがわかった。


「一人より二人……そうね私も怜を守れるくらいの力が欲しい、一人じゃ無理かもしれないけど怜が一緒にいてくれるならもっともっと成長出来る気がする、だからこれからも怜の隣にいさせて」


「はい!もちろんですこれからもずっと一緒です、お姉さまが嫌だと言っても私は離れませんから覚悟してください」


「ふふふ、お手柔らかにお願いね」


 咲夜さんは俺の手を胸に掻き抱きながら綺麗な笑顔で笑いかけてくれた。やっぱり咲夜さんは笑っている方が良いと改めて思った。

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