表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
3章 夏の修練と鬼ヶ島での戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/131

第01話 気付けば夏が終わりそうな件について

 俺の目の前には身の丈2mほどの背中。その背中の先には無数とも言えるほどの小鬼の群れが見える、赤青緑黒に黄色の五色の鬼の群れ。


「クカカカカ、此奴らお主を喰らおうと集まってきよったわ」


「どちらかというと、あなたの叫び声に集まってきたんでしょう、こんなに集まられても困るんですけど、私って攻撃する手が無いんですよ」


「ほう、それだけの神気を持っておるのにか、ふむまあそういう者のいないわけでもないか、ならお主は得意の結界でも張っておれ」


「わかりましたお願いします」


「良きかな良きかな、お主はそこで待っておれ、この体の具合も確かめたいしの」


「それに関しては私は悪くないですからね」


「クカカカカは気にするでないわこれはこれで一興よ、ではいざ参る」


 そう言うと鬼はどこからともなく黒鉄くろがねの六角棒を現し鬼の群れへと躍り出た。自らに結界を張り目の前の鬼に祝福の祝詞を唱え、俺はそれを見ながらどうしてこうなったのだろうと過去に思いを馳せるのであった。


 ◆


 夏が来た、夏だ、夏……、寒いめちゃ寒い、いや冷たい。なぜ夏なのに寒いかだって?滝行をやっていたからなんだよ。


 学院ではあの後特に騒ぎに巻き込まれる事もなく、すんなりと長期の夏季休暇に突入した。基本的に学院は夏季休暇に入ると学生は帰宅する事になっていて学生寮には残れない。


 そのため学生の大移動が起きるわけで、普段は入ることの出来ない秘密の園にひしめく黒の群れ、終業式当日から一週間くらいは学院敷地内に見たこともないような高級車がこれでもかと言うくらい並んでいたのは壮観だった。


 出て行くのは理由らしい理由がなければ上級生から順に学院から去って行く、姉妹などは一緒になって。


 生徒会役員は全学生が寮から出たかを確認してから帰宅になるので、空いた時間や夜などに俺と明海ちゃんと咲夜さんは三人で夏の課題を消化し、最後の学生を送り出した翌日までに課題を終わらせることが出来た。


 終業式から丁度一週間後、俺たちは学院から離れて比売神家本家へと向かうことになり、家に帰ることもなく修練という名の拷も……鍛錬に打ち込むことになった。


 本家へ着いてすぐに、俺と咲夜さんの関係を聞かされた、昔々に天から授かった双子が俺と咲夜さんの起源とはまたなんとも不可思議な関係だなと思う。


 この話は比売神の家には受け継がれていなかったようだけど、聞いただけで魂が理解するとでも言えば良いのか、すんなりと受け入れられた事から事実なのだなと思わされた。


 まあその事は良いのだが、俺以外皆咲夜さんの事を知っていたのはどう言う事なんだろうか。

 明海ちゃんですら知っていたのに黙っていたのは酷いと思うんだよ、まあおばあちゃんに黙っているように言われてたみたいだから仕方ないのかもしれないけどさ。


 そして翌日から俺と咲夜さんと明海ちゃんと織ねぇが集められ比売神家所有の野山を駆け巡らされた、俺と咲夜さんがひいひい言いながら一周する間に、織ねぇは笑いながら10周していた、ちょっと色々スペックおかしくないですか?ちなみに明海ちゃんは俺と咲夜さんより酷い有様だったとだけ言っておこう。


 その後は滝行に移行、夏なのに水冷たいし体冷えるし泣きそうになる、というかさ野山走るとか滝行とかそれって修験者の修行じゃないのかな?体力づくりと精神修行の一貫ですかそうですか、ここまでが午前中のメニュー。


 体を温めた後お昼を食べて食休みをした後は祝詞を覚えるための書き写し、まずは祓詞はらえことばから、聞いたことがあるかもしれないけど「掛けまくも畏き伊邪那岐⼤神」から始まるあれだね。


 続いて天津祝詞あまつのりと「高天原に神留まり坐す神漏岐神漏美の 命以ちて」というやつだ。最後に大祓詞おおはらえのことばになるのだけど、これが長いめちゃ長い最初は天津祝詞と似ているけど「高天原に神留り坐ます皇親神漏岐神漏美の命以て」から始まるのだけど見ただけでつらたんである。


 これらの祝詞だけど本来は声に出して唱え無くてもいいらしいのだけど、声に出すことで言霊として効果を高めることが出来るみたいだ。それらの祝詞を習字の授業以外で持った事が無い毛筆で書かされた。


 それが終われば巫女舞の型を覚えひたすら繰り返し。巫女舞にも色々種類があって、我が比売神家が舞う神楽舞は神がかりの巫女舞、いわゆる依代の舞となる、アメノウズメが踊った岩戸神楽から派生した独自の舞のようだ。


 鉾・鈴・扇・笹・竹・紙垂しでさかきぬさなどの採り物を使って舞うのだけど、俺の場合は神器での舞なども教わることになった。前は明海ちゃんが俺の適当な舞に合わせてくれたけど、今度は俺と咲夜さんが合わせる形で舞っている。


 この様な流れをほぼ毎日やることになった、合格を貰えたのは8月の半ば辺りになった頃だった。これらの鍛錬期間中はずっと神気を周りからバレないように薄くまとった状態でやることになり、寝ている時も自然と出来るまでになっていた。


 後は神気をまとうことにより色々と出来るようにもなった、野山を駆けるのも最終的に同じ時間をかけて2周ほど出来るようになったし、滝行も最初は1分ほどで限界だったけど今では10分以上出来るようになった。


 ふはははは、どうだすごいだろ、え?対して変わってないって?うん、そうなんだ対して変わってないんだなこれが、俺の神気って実はポンコツなのかな。咲夜さんと明海ちゃんは俺より成長しててへこむ。


 でもまあ一応、神気を使った結界術だけはかなり優秀で織ねぇのパンチでもびくともしなかった。世界もファンタジーで溢れているけど、ここまで来た俺自身も十分ファンタジーの住民なのだなと実感させられた、まあ一番のファンタジーな存在は織ねぇ何だけどな。


 そんなこんなで修練の終わりを告げられ、残りの休みで何しようかと咲夜さんと明美ちゃんと話していた所にミカ会長のご実家から比売神の家に連絡が来た。どうやら仕事の依頼と、ついでに生徒会役員全員で長期休暇の最後を共に楽しもうというお誘いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ