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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
2章 指輪の交換と魂の姉妹

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第08話 濡れた俺と苦しむ咲耶さん

 鏡池の底にはすぐ着いた、あまり深くなくてよかった、少し焦りつつもその場で立ち上がる、へそ辺りまでの深さだったようだ。

 正面を向くと咲夜さんが倒れている、沈む時に見えた大きなモヤはどこにも見えない、どうなった何があった?

 池から抜け出し咲夜さんのもとへ駆け寄る、全身ずぶ濡れで一歩進む度にローファーとソックスの水がジュバジュバと流れ出て少し歩きにくい。


「咲夜さん、咲夜さん、大丈夫ですか」


 肩を掴み軽く揺すりながら声をかけてみるけど反応がない、意識はないようだけど苦しそうに荒い息遣いだけが聞こえる。

 何が起きた、あのいつもの数倍あるような黒いモヤは何だったんだ。

 焦りで一杯になる頭とは別に、なぜだか平静を保っている精神との齟齬に気持ちが悪くなる。

 どうしたら良い、どうしたら……。


 焦る思考と冷静な精神でぐちゃぐちゃになって考えがまとまらない。

 このまま誰かを呼びに行くかとも思ったが咲夜さんを置いていくわけにはいかない、神気を纏った状態で周りを見ても先程の大きなモヤは見当たらないが何が起こるかわからない。


 咲夜さんをお姫様抱っこのように持ち上げ一度四阿の長椅子に座らせる。

 俺は濡れた衣服と髪を絞りなるべく水を抜いておく、その時にスマホの存在に気付いたが水に沈んだせいか電源が入らない。


 まだ衣服は乾いてないけど、そこは許してもらう事にして咲夜さんをなんとかおぶさる、先程抱き上げた時も思ったけど意外と軽い気がした。

 耳元で苦しそうな息遣いと微かに感じる胸の膨らみで少しどぎまぎとしたが鏡池を離れまずは学生寮へ向かう。

 

 緊急事態ということで神気を纏いながらなるべく揺らさないように移動する。

 神気は咲夜さんも含めて結界を張る感じで作っている。


 濡れた上に絞ったせいでシワシワの服の私を見て一瞬ぎょっとする人達の横を通り進む。もう少しで学生寮につくという所で、進行方向から走ってくる織ねぇと明海ちゃんが見えた。


「お、織ねぇー、ぐずっ、どうしよう咲耶さんが、ぐずっ、咲夜さんが」


 織ねぇに会えてホッとしたのか涙がボロボロと流れ出す。


「怜ちゃんほら落ち着いて、取り敢えず生徒会室へ行きましょ」


「うん、ぐずっ、行く」


 涙が出てるせいか鼻がぐずってしまう。今も苦しそうにうめいている咲夜さんを見て織ねぇが「変わろうか?」と言って来た。


「いい、このまま、いく」


「そう?分かったわ、取り敢えずミカ会長に電話するからね」


 織ねぇはそう言うと少し離れてスマホで連絡し始めた。


「怜ちゃん大丈夫?びしょ濡れだけど何があったの」


 そう言いながら明海ちゃんがハンカチで俺の顔を拭ってくれた。


「ありがとう、咲夜さんに突き飛ばされて、鏡池に落ちていつもより大きい黒いモヤに咲耶さんが飲み込まれて、それでそれで……よくわからない」


 連絡を終えたのか織ねぇが追いついてきたようだ、そして真剣な表情を浮かべている。


「怜ちゃん、咲耶ちゃんの状況は分かったわそこで相談、あなたはどうしたい?」


「どうって何を?」


「咲耶ちゃんに入った黒いモヤはもうアヤカシの状態になっているわ、咲耶ちゃんの中から追い出すだけなら美玲さんがやってくれる」


「うん」


「そこで、怜ちゃんはどうしたい?怜ちゃんが自分でその役をやりたいと言うなら協力する」


「やる、俺がやる、どうやったら良いかわからないけど、俺にできるなら俺がやる」


「こーら俺じゃないでしょ、よし分かったわ明海は母さんに言って衣装を一式借りてきなさい、あなたの分もよ」


「わかった行ってくる」


 そう言って明海ちゃんはスマホを取り出し電話をしながら北校舎へ走って行った、きっと沙織さんに電話をしているのだろう。


 俺と織ねぇも北校舎に入りローファーと水で濡れたソックスを脱がしてもらい、来客用のスリッパを借りて生徒会室に向かう。

 生徒会室には明海ちゃん以外の役員が揃っているようだ。

 代表するようにミカ会長が出迎えてくれた。


「まずは咲耶くんをソファーに寝かせてあげなさい」


 休憩スペースに案内され、ソファーに咲夜さんを寝かせる。

 

「怜くん大丈夫かい?」


「はい、私は大丈夫です、でも咲夜さんが」


「ああ状況は聞いている、それで怜くんはどうしたい?」


「私がやります、どうしたらいいかも、出来るかもわかりませんが、私にやらせて下さい」


「その意気や良し、それでは我々も準備に取り掛かるとしよう、その前に怜くんはその格好をどうにかしたほうが良いな」


「怜さんタオルをどうぞ、あと咲耶さんも着替えさせたほうが良いかもしれませんね」


 そう言って雪菜さんがタオルを差し出してくれた、着替えと言ってもどうしたものだろうか、と思っていたら明海ちゃんが来たようだ。


「お待たせ仮の服装借りてきました、怜ちゃんはこれに着替えて下さい、あと咲夜さんの分も借りてきましたので、私が着替えさせますね」


 そう言って明海ちゃんが差し出してきたのは巫女服だった、緋袴ひのはかまと白の小袖こそでに千早、それと白足袋に草履、それからちゃんと下着にあたる腰巻と肌襦袢はだじゅばんまで揃っていた、下着までびしょ濡れだったので正直助かる。


「明海ちゃんありがとう、さっそく着替えますね」


「それでは我々も準備にかかろう、準備が済んだものから上の神楽殿に集合だ、咲耶くんは怜くんが連れて来るように」


「はい、分かりました」


「君なら出来ると確信している気合を入れたまえ」


「怜、君の手並み見せてもらうよ」


「気負わへんでやったらええ、もしもの時はうちがなんとかしたるさかい」


「怜ちゃんふぁいと」


 そう言ってミカ会長、静さん、美玲さん、マリナさんが俺に一声ずつかけて出ていった。


「それでは私も準備にかかりますね」


 続いて雪菜さんも出ていった、織ねぇはここに残るようだ。

 俺はさっそく制服と下着を脱ぎ畳んでおく早く洗濯をしたい、体をタオルで拭いた後髪をタオルで纏めておく。


 腰巻きと肌襦袢を着た上から白衣をまとい白帯で留める、少し恥ずかしいけどブラと下着は濡れているので付けないことにする。

 続けて袴を履き白足袋と草履を履いて、ドライヤーがないので髪はちゃんと乾いてないけど水引で髪を留める、完成だこれで見た目は立派な巫女さん姿だ。


 明海ちゃんと織ねぇが協力して咲夜さんの着替えは終わらせていた、こちらも俺と同じ巫女装束になっている。

 少し待つと明海ちゃんも巫女装束に着替え終わったので、咲夜さんを背負うのを手伝ってもらい神楽殿へ向かい歩き出す、ちなみに織ねぇは制服のままだったりするけど革のグローブを付けている。


 そして俺は咲耶さんを背負いながら織ねぇと明海ちゃんに前後を守られる形で、中央階段を登り時計塔の中を通り抜け神楽殿へとたどり着くのであった。

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