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第07話 二人の思い

 冬季休暇の時期は終わったのだけど、相変わらず学院には戻れていない。勉強に関してはオンライン授業になっている。その授業もリアルタイムではなくて録画された映像を視聴して、出された課題をメールで送る形になっている。なにかと忙しい身にとってはありがたいと思う。


 そんな中でも毎日、楓がビデオ通話をかけてくる。西の方にある家に戻っている楓と桜さんも忙しくしているらしい。別にさビデオ通話をかけてくるのは良いんだよ、でも毎日1時間くらい話し続けるのってどうかと思うんだよ。


 望姉さんに一度言ってみたら、1時間ならまだ短いほうじゃない? なんて言われたけど、余りおしゃべりではない俺からすると10分でも長い気がするんだけど。


 色々と話を聞いて言うとなんとあの夏に出会った、黒狐の黒狐姫こっきちゃんと再会して今は一緒に住んでいるとか。千手姫せんじゅき迦陵かりゅうは別行動しているみたいだ。


 黒狐姫ちゃんだけど、あの後は里を探してあちこち移動して里を発見したタイミングで千手姫たちとは別れたと言っているらしい。暫くは里での平和な日々を過ごしていたのだけど、どうも大厄災が近づくに連れこのまま狐の里にいると迷惑にな理想だと思い里を旅立った。


 匂いと気配を頼りに私達を探したらしいのだけど、私達は比売神の本家や神社にいたものだから結界のせいでたどり着けずに、それでも探し続けた結果が楓のところだたとのことだ。


 普段は楓のお寺で日向ぼっこをして過ごしているとか。こっそり盗撮した画像が送られてきたので見てみたけど、なんというか黒い狐耳と尻尾を生やした幼女が日向ぼっこしている姿は確かに可愛いと思った。


「可愛いね、こういう妹がほしいな」


 と言った所。


「私じゃ駄目ですか?」


 と画面越しに言われて反応に困った。


「冗談ですよ」


 なんて言ってたけど、その目は真剣そのものだった、俺はどうしたら良いのだろうか。通話が終わり自然と指輪を撫でていたけど答えはまだ出せなかった。大厄災がおわったらちゃんと考えて答えようと思った。


 少しずつ時は進み、色々な所から予言やら予知などの話が回ってくるようになり、大厄災が起きる時期がわかり始めた。それは8月の頭、この国でちょうど皆既日食が起きる時だということだ。


 世界同時に事は起きるみたいなので、その事から物理的な皆既日食と合わせる形で何かが起きるんだろうね。何が起きるかは未来視を持つ人でも見えないということしかわからない、ただただ俺たちはその時に備え力をつけることしか出来ないのだろうね。



 などと日々を忙しくも過ごしていたら、ついにその日が目前に迫っていた。今日は最後の晩餐というわけではないけど、親族縁者が本家に集まり宴会をしている。普段の集まりだとだいたい女性陣と男性陣は分かれているのだけど、今日は男女関係なく集まっている。


 そんな中にお祖父ちゃんの親族も入っているし、アヤカシも混じっている。その中にはちゃっかり紅姫がいたりする。お祖父ちゃんの里の人たちが合流した時に付いてきていたんだよね。


 その椿姫と朱天に茨木のねえさんに紅姫


 その宴会から俺と咲夜さんは抜け出して二人で縁側で涼んでいる。


「みんな元気ですね」


「そうね、もしかしたら最後になるかも知れないから」


「最後、ですか」


 大厄災直前になっても一体何が起きるのか全然わかっていない。ここ最近は敵対するものも現れていない。ただ単に討伐されたのか大厄災に合わせるために潜んでいるのかわからない。


「安心しなさい、何があっても怜は私が守ってあげるから」


「いえ、守りに感しては私が頑張りますよ、咲夜さんだけじゃなくみんなを守ってみせます」


 見つめ合う俺と咲夜さん、自然と二人の手と手が重なる。指輪と指輪がふれあい咲夜さんの思いが伝わってくる気がする。


「ねえ怜、私のお願い聞いてくれる?」


「お願い、ですか?」


「ええ、こうやって二人で話せる機会も最後かもしれないから」


「そんなことは───」


 咲夜さんがふるふると首をふる。


「大厄災に何が起きるかわからないから、それで私のお願い聞いてくれる?」


「……私にできることなら」


「うふふ、難しいことじゃないのよ、前にも一度言ったことだけど、咲夜って呼んでほしいのよ」


「咲夜さん?」


「そうじゃなくてね、咲夜って呼んでほしいの」


「咲夜」


「怜」


 なんだか咲夜って言っただけなのに心臓が跳ねて体温が上がった気がする。咲夜に目を向けると咲夜の目がうるんでいて頬が赤くなっているように見える。


「……」


「……」


 咲夜の顔が近づいてくる、俺は……私は目を閉じる。

 柔らかい感触が唇に触れる。


「んっ……ぁ」


 自然と吐息が漏れてしまう、心臓の音がうるさい、体温が上がる。

 目を開けると顔を真赤にした咲夜の顔が見える。


「咲夜……」


「怜ごめんね、でも───」


「謝らないでください、私嬉しかったです」


 少しずつ心臓の音も収まってきた。


「元は男だったとはいえ、今は女の私が咲夜を好きになって良いのかずっと迷っていたんです」


 女の子同士って良いのか悪いのかずっとわからなかったし迷っていた、だけど今この時、咲夜とずっと一緒にいたいって思った。今度は私から咲夜へ顔を近づける、咲夜が目を閉じるのを見て私も目を閉じた。


 そして私と咲夜は……。

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