第14話 血の繋がった妹ができた
あっという間に平穏な日常は過ぎていった、バレンタインデーが終わり、期末テストも終わり、そして卒業式も終わった。惜しまれつつもマリナさんは卒業していった。えっ? ちゃんと惜しんでいたよ、最後の最後まで髪の毛を強請られたけどね。
バレンタインデーは、去年を参考に咲夜さんと一緒に手作りをして交換した。期末テストも順当に上位のまま終わらせることが出来た。そして椿姫の方だけど勉強は順調に進んだようで、新入生として入学できるようだ。
帰って来るのが少し遅れたけど、桜さんと楓は無事怪我もなく戻ってきていたる。どうやら冬の間は中国地方の方まで行っていたとか。皆さんご存知かはわかりませんが、雪女って中国地方にも里があるんだってね。
今回はこちらの里の雪女も手助けしてくれたようだ。そして敵はと言うと海坊主だったらしい。冬将軍の影響で各地を雪が襲っている中の海に現れた海坊主、うんかなり大変だったようだね。
吹雪が吹き荒れる中、集まった数百人が氷った海を駆け巡り海坊主の討伐をしたらしい。滑る氷で踏ん張りは効かないし滑るし、中には海に落ちて死にかけた人もいたとか。
桜さんと楓は後方支援と言う事で海が見える高台から見ていただけらしいけど、それはそれで寒くて大変だったと言っていた。結局海坊主は逃げていったらしいのだけど、海坊主も俺たちのところと同じように陽動だったのではと言われている。
でもその陽動が何に対しての陽動だったのかは未だにわかっていないらしい。西の人たちは今も調査でてんやわんやだという話だ。まあこっちも似たようなものだけど、未だに学生の俺たちは今のところ情報が入ってくるのを待つことしか出来ない。
その情報も学院にいる限りなかなか伝わってこないのだから、学業に専念するのが良いのだろうね。
◆
「怜様とご一緒するのは久しぶりな気がしますね」
「そうかな?」
今は楓と組んで構内の見回りをしている。卒業式も終わった事で在校生の発する陰気が黒いモヤへとなりやすい時期でもある。普段から朱天が見回っているので念のためと側面が強い。
「それにしても何度聞いても大変だったみたいだね」
「海坊主の事ですか?」
「そうそう、そう言えば星来さんにも会ったんだって? 元気にしてた?」
「ええ、元気でしたよ、なんだか前より霊力が数段上がっている感じでした」
「そうなんだ」
「それと椿姫さんや茨木さんのことも気にしていましたね」
「確か暫く一緒に旅をしてたみたいだからね」
「そう聞きました」
結界を薄く広く張っての索敵、今のところ黒いモヤの反応はない。
「それにしても茨木さんが怜様のお姉さんの式になって、椿姫さんが新入生として入学するとは思っても見ませんでした」
「なんかね、私と朱天の関係を見て決めたらしいよ、望姉さんとも相性は良いみたいだしね」
「なんだか少し羨ましいですね」
「楓にもそのうちいい人が見つかるよ」
「なんだかその言い方は色々違うような気がします」
「あっバレた?」
「怜様酷いです」
ふくれっ面の楓とじゃれながら見回りを終える、今日も穏やかな一日だったね。
◆
春休みのある日なのだけど、俺と咲夜さんは鈴ちゃんと篠ちゃんの4人で、屋上の神楽殿で舞の練習をしている。特にこれといった理由があるわけではないのだけど、こうなんて言ったら良いのかやった方がいいという予感めいたものがあったからなんだ。
無心に舞を踊り続けていると、心が無心となり自然に体に神気が満ちてくる。舞が終わる頃には心地いい疲れとともに、何かが掴めそうなそんな感覚を覚える。それは咲夜さんも俺と同じように感じているみたいだ。
そういう訳で最近は時間があればずっと二人で、たまに4人で舞を舞っている。それは春休みが終わり、新学期を迎えるまで続けたのだけど結局はそのなにかのの正体がわからないままだった。
そんなわけで俺は高等部に進学したことにより制服が変わった。今まではジャンパースカートタイプの制服だったのだけど、高等部に上がることによって制服がセーラーワンピースになった。まあ、なんて言いますか、可愛いよね。
あとはそうだね、新入生として椿姫が入学することになったのだけど、今まで名字がなかったので学院長の沙織さん話した所、みんな失念していたようだった。急遽本家のお婆ちゃんに連絡を取ってもらい戸籍を手に入れた結果椿姫は、姫神椿姫となった。
まあ俺達のご先祖様と朱天との間の子だし間違ってはいないと思う。この年になって急に妹ができるとは思わなかったな。いや椿姫の方が遥かに年齢上なんだけどね。悪ふざけなのか椿姫が俺のことを「お姉ちゃん」なんて呼び始めるからすごく困る。
なぜ困るかと言うと、何とも言えない感覚が襲ってくるんだよ、こうなんて言ったら良いのか体の奥がキュンとするとでも良いのだろうか。咲夜さんに相談してみた所急に抱きしめてきて「怜あなた本当に可愛いわね」なんて意味不明なことを言われる始末、あえてこの言葉を言わせていただこう「わけがわからないよ」と。