第11話 過剰戦力
暫くの休息の後に全員集合という事で、一階のロビーへ向かう。人が集まった所でさっき望姉さんから聞いた話をもう一度聞くことになった。ロビーに着いて用意されていたソファーに座ってしばらくすると全員揃ったようだ。
「皆様これより現状と今後についてお話しようと思います」
代表して着物の似合うお上品な女性が話をするようだ、真っ白な着物に青色の瞳をした白くて長い髪の人をしている。
「まずは自己紹介をさせていただきます、私は雪女の里から参りました、雪凪と申します」
雪女と聞いても誰も特に反応はないみたいだ、もう先に聞いていたのかもしれないね。
「もうご存知かも知れませんが、今現在この周辺は異界となっています、そしてそれをしたものが黒翼と呼ばれるもの、それに与するものは白皇鬼と呼ばれる者たちです」
白皇鬼と言う名前が出たところで、そこまで知らなかった人たちが少しざわめくがすぐに静かになる。
「ご存じの方もおられると思いますが、白皇鬼達とわたし達の里は交流がございましたし、少し前まではこのような暴挙に出るような者たちではありませんでした」
黒翼が絡んでいるなら、千手姫や黒狐姫ちゃんみたいに操られている可能性もあるのかな。
「この中には黒翼について、そしてそのものがアヤカシを下僕とし操る事ができることはご存知な方もおられるでしょうが、白皇鬼達は操られているわけでは無いようです」
白皇鬼ってアヤカシ達は、黒翼に自ら協力しているってことになるのか。
「現状はこうなっておりますが、何か質問などはございますか?」
誰も質問などは無いようで話をする人はいないようだ。
「それでは続きまして、今後についてお話させていただこうかと思います。今この異界の外にはわたし達の里の者たちが待機しております、そして今より5時間後一斉に異界へ突入しこの吹雪をお止めいたします」
ホールを見回してみると、頷いている人が何人も目に入った。吹雪さえどうにかなれば敵を見つけるのも容易だし打って出れるのは大きいかも知れない。
「吹雪が止まりましたら、打ってでて黒翼と白皇鬼共の討伐となります。白皇鬼共はわたし達の里の同胞をも殺しました裏切り者であります、わたし達も全力でサポートいたしますのでどうかよろしくお願いいたします」
そう言って深々と頭をさげ雪凪さんは話を終えた。
「というわけだ、ここに集まっている者は皆それ相応の実力者だ。それに元々は冬将軍を想定しての戦力だからね、このようなふざけたことをやらししている黒翼や白皇鬼に目にもの見せてやろうじゃないか」
蘆足道矢様がまとめ役として声を上げると、それに賛同するように盛り上がる。荒事は余り歓迎は出来ないけど、さっさとここから出たいのは皆の総意だろう。
時間もそれほど無いようなので、早々と戦力分けされて時間まで待機となった。俺たちのグループはどちらかと言うと過剰戦力な感じだけどね。俺は戦力外として朱天に望姉さん、咲夜さんに茨木の姉さんと椿姫という面々だ。
忘れ物がないかチェックして、昼食を食べ戦いに備える。そして再びロビーに集まり吹雪が収まるのを待つ。時間が来て吹雪が収まればずっと張ったままの結界は解除する予定になっている。
そして時は来た、吹雪が消えるとともにホテルから飛び出していく面々、それを追う様に俺たちも振り分けられた方角へ走り出す。張っていた結界は解除して、代わりに自分を中心とした結界を張って不意打ちなどに対処する。
同じ方向に向かうグループと共に駆けていると、雪凪さんと同じ衣装を着た人が合流して敵の場所まで案内してくれるようだ。
「白皇鬼は複数のグループに分かれてここを異界へと変え世界を閉ざしておりましたが、我々の手により異界内の吹雪は抑えております、ここより近い敵の所にまで案内させていただきますので、どうかよろしくお願いいたします」
挨拶を交わし、敵である白皇鬼の元へ向かう、途中に妨害などはなく敵の元へたどり着く。その白皇鬼なのだけど、姿は鎧武者といった者と僧兵のような者たちだった、見えている地肌の部分は雪のように真っ白で印象的なのは赤い目だろうか。
それぞれの武器は刀に薙刀に和弓といった物のようだ。接敵した後はお互いに話すことなど無いという感じで戦いが始まった。白皇鬼の数は10人こちらも数としては同じだけど、俺や咲夜さんは戦力としては微妙なので危ないようなら結界で援護する感じだ。
戦闘はあっさりと終わり、結果としては思っていた通りとなった。朱天と茨木の姉さんがまっさきに突っ込み一撃でそれぞれ倒すと、その勢いを止めずに次々と薙ぎ払っていく。それに負けじと俺達と一緒に行動していた方々も敵を屠っていく。接敵からわずか数分で戦いは終わった。
そのまま少し休憩をはさみ案内役の雪女に再び誘われて戦場を移動していく。吹雪が止んでからおよそ一時間ほどで確認されていた白皇鬼は倒し終わった。その中には黒翼や白皇鬼の幹部と言われる者たちはいなかったようだ。早々に逃げ出したのか元々ここにいなかったのか発見することが出来なかった。