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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
8章 始まりは平穏に、不穏な冬を超え、戻る平穏
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第09話 契約

 ぞろぞろと一階のエントランスに人が集まりだしてくる。エレベーターが使えないので階段移動だとお年寄りが大変そうだ、と思わなくもないけどこの界隈のお年寄りは全然元気なので問題ないらしい。


 見知った顔もちらほら見かける中で、俺は結界を維持しつつ結界の外へと気配を広げる。感じられるのは雪で白く染まった世界だけ。今も結界が軋んでいる所を見てみても何かがいるようには感じられない。


「駄目ですね、外との連絡が付きません」


「隔離されたという事かの」


「外には出られます、ですが結界の外は猛吹雪な事から普通の通信障害に思われます」


「現状把握のために外と連絡を取る部隊が必要かもしれんの」



 そんな会話が聞こえてきたのでそちらを見てみると、先程の蘆足道矢あしたりどうや様と他にも集まってきている人たちが話し合いをしている。暫く喧喧諤諤けんけんがくがくと話が続いていたけど、なんとか結論が出たみたいだ。


 先程まで話し合っていた所からご老人が一人こちらにやってくる。


「姫神のお二人に聞きたい、今張っている結界は一人でだとどれくらい維持できる?」


 最初の時は三人で張っていた結界だけど今は俺と望姉さんの二人で張っている。もう一人の人は結界が安定したのを確認してから抜けて行った。つまりは二人で張っている結界を一人で維持してどれくらい持つかってことだよね。


「私一人でなら3日くらいが限界だと思います、怜の場合は───」


「私の場合は5日くらいならなんとかなると思います」


「ふむ、それではどちらかお一人には外へ向かう者たちに付いていき結界で守っての移動をお願いできないだろうか」


「それなら私が適任だと思います、私の場合結界以外にも戦うことは出来ますから」


 確かに望ねえさんの方が適任かも知れないけど、俺の場合は朱天も付いてくるだろうし戦力としてはどっこいどっこいじゃないのかな?


「それでは比売神の望殿だったかの、頼めるか?」


「ええ、承知いたしました、それじゃあ怜私は一旦結界を解くわね」


「うん」


 望姉さんの結界分を肩代わりするために集中して少しずつ結界強度を上げていく。丁度いい強度になたっところで望み姉さんの結界が解かれる。


「えっと、この感じで何もなければ一週間くらいは持つと思う」


「そう? それでも無茶だけはしないようにね」


「それでは付いてきてもらえるかの」


「はい」


「望姉さんも気をつけてね」


「少しお待ち下さい」


 そのまま離れていこうとする望姉さんを茨木の姉さんが呼び止める。


「望殿、よろしければ私と契約をするつもりはありませんか?」


「契約? いいのかな? あなたのような力あるアヤカシが契約をしてくれるのはすごく助かるのだけど」


「ええかまいませんよ、ここ数ヶ月あなた様と幾度か行動をする機会もありましたが、その上でのお話ですから」


「契約してくれるのは嬉しいのだけど……、椿姫のことは良いの?」


「ご安心を姫様とも話は済んでいます、それに朱天様の主の姉君である望殿との契約は私にとって望むものでありますので」


「そう……、皆様少しだけお待ちいただけますか、それと別室をお借りします」


「うむ良かろう、こちらとしては戦力が上がることに異論はない、時間はまだあるので、ついでじゃ姫神殿達も一部屋使ってそこで休まれるとよかろう」


 一人の壮年の男性に案内してもらい俺達は全員で一部屋借りることになった。2階まで階段で上り部屋に入るとベッドが2つとソファーが一つ置かれている部屋だったけど、ゆっくり休めそうで助かる。


「それじゃあ契約しましょうか、いいのよね茨木童子殿」


「ええかまいません」


 望姉さんは取り出した小刀にそっと指を添わせた。指の傷からにじみ出る血を指ごと茨木の姉さんに差し出す。


「我が名は比売神望、茨木童子あなたと契約を願います」


「我が名は茨木童子なり、我が主と望みし者よ、我と血の契約を」


 茨木の姉さんは望姉さんの手を取り血の滲んでいる指を口に含んだ。


「うっくっ……」


 望姉さんからはなんだか艶めかしい声が聞けおてくる。手を離した茨木の姉さんには特に変化は感じられない。俺と朱天のときは朱天が男から女の姿になったけど、今の茨木の姉さんの姿は元々が女性なわけで変わらなかったのかも知れない。


「うまく契約は出来たようですね、よろしくね茨木」


「ふふ、我が主様、よろしくお願いしますね」


「望でいいわよ」


 なんだか契約する前と後では二人の親密度が全然違うのだけど、俺たちの知らない所で何かあったのだろうか?


「ふむ、望殿これを渡しておこうかの、主と同じ依代となる」


 朱天が俺が持っている依代と同じようなブレスレットを望姉さんに渡している。


「ありがとうございます、それじゃあ怜、あとは頼むわね」


「望姉さんも気をつけて、茨木の姉さんも望姉さんをよろしくお願いします」


「姫、それでは行ってまいります、姫も十分お気をつけください」


「ボクのことは気にしなくていいから、姉さんも気をつけてね」


 茨木の姉さんと椿姫が抱き合って別れを済ませる、聞いた話だと椿姫はずっと茨木の姉さんと一緒に生活していたから寂しいのかもしれないね。

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