第07話 吹雪の前
比売神本家の朝は早い、日が昇る前から起きてまずは敷地内をジョギングする。ジョギングが終わればお風呂を借りて汗を流して朝ごはんを食べる。
相変わらず寒いけど屋敷周りは結界のお陰で外ほど寒くはないのが救いかな。朝ごはんが済めば食休みの後に舞の練習になる。今年の奉納舞も何もなければ俺と咲夜さんがすることになっている。
明日はクリスマスだけど今のところ冬将軍に感しては特に進展はないようだ。ちなみに朱天たしは一度合流したけど、お婆ちゃんの依頼で椿姫たちと出かけていった。俺たちはいかなくても良いのかと聞いたけど、足手まといと言われた。
そりゃあね、まともに攻撃出来ない俺が行ってもね邪魔だよね。ずっと真面目に何か攻撃する手段はないか模索しているのだけど、そちらに対する才能はからきしのようだ、とっくに分かっていたこととも言えるけどね。
望姉さんはなんやかんやで万能になんでもある程度使いこなせるし、咲夜さんはのじゃロリ神から貰った神器の弓がいい感じで使いこなしている。私の神器の鉾はほんとなんとかならないのかな、槍みたいに使えないとしてもせめて鈍器としてでも使えれば良いのだけど、何故か無理なんだよね。
その代わりと言って良いのか神気を使っての祓いや結界は日に日に力を増している。今なら少し本気を出せば完全にこの寒気を防ぐことも出来るようにまでなっている。お婆ちゃんには本気にならなくても常時それくらい出来るまで頑張るように言われている。
「咲夜さん明日クリスマスですね、今日はイヴですけどお出かけできなくて残念です」
「今年は冬将軍のこともあるから仕方ないわね」
「それにしても望姉さん、クリスマスっていつも清春さんと会ってたんだね、てっきりアリアさんと一緒にいるものだとおもてたよ」
「怜は何馬鹿なこと言ってるのよ、イヴはいつもお姉様と一緒にいるわよ、翌日のクリスマスは清春さんとすごすけどね」
ん? いまなんとなくおかしなことを聞いたような、イヴはアリアさんと一晩過ごして、翌日に清春さんとデートって事かな? なんだかわけがわからないよ。
「そ、そうなんだ、今年は残念だったね」
「でも今年はお姉様も清春さんも忙しいみたいで元々会えなかったと思うわ」
「それも冬将軍関係?」
「みたいね、清春さんのお兄様とお父様の厳正様が東北の方まで行っているみたいで、留守を任されているみたいよ」
アリアさんに関しては、数日前に事祖は会えないという連絡が来て、それ以降直接の連絡が取れないらしいけど望姉さんが言うにはたまにあることだし、こういう時はだいたい海外へ出かけているという事だ。
こんな感じでクリスマスイヴを本家で過ごしていたのだけど、急遽招集がかかり出かけることになった。出かける先は首都東京、そして俺への依頼はこの寒さでまともに動かないヘリコプターの搭乗員として乗る依頼だった。
どういうことかと言うと、俺の結界でヘリコプターを囲んで各部が凍らないようにするのがお仕事みたい。望姉さんも別のヘリコプアーで同じことをする事になっている。咲夜さんとは別行動になるのは残念だけど、本当に今回の冬将軍は危険らしいので余り無理はしないでほしい。
急遽戻ってきた朱天にお願いした所、朱天は俺の依代の中で何かが起きたときに対処できるようにするとの事だ。なので咲夜さんには椿姫と茨木さんが護衛として付いてくれる事になった。
「椿姫さんに茨木さん、咲夜さんの事よろしくお願いします」
「うん、任された、それよりさんとかこそばゆいから椿姫とだけ呼んでくほしいな」
「私のことも茨木とお呼びください、あなた様は朱天様の主なのですから」
「わかりました、椿姫と、茨木姉様と呼ばせてもらいますね」
「うん、それでいいよ、改めてよろしくね怜ちゃん」
「姉様ですか、それが呼びやすいのでしたらそれで構いません」
今まで余り接点がなかったのでまともに話したのは初めてだけど、椿姫は男勝りっぽいけど優しそうな人だし、茨木の方は綺麗でかっこいい印象だった。
出かける前の最後の確認で、お婆ちゃんからは何がっても前には出ないようにと言われた、朱天もできれば最後の最後まで隠して、俺と望姉さんは結界を張ることだけに専念するようにと言われた。
未だに俺や朱天の存在は一部の人達にしか知られていないようで、わざわざ広める必要は無いということみたいだ。
時間が来たので用意された車に乗って飛行場へ向かう、車の外は雪が少しずつ降り始めている。ここ何日かのお婆ちゃんによる鍛錬で俺の能力が色々と効率化されて気合を入れなくても寒さを防げるようになった。今も車に結界を張って寒さを防いでいる。
空港に着けば望姉さんとは分かれてヘリコプターに乗り込む。まずは咲夜さんたちを東京まで運ぶのが俺の仕事になる。少しづつ吹雪いてきている中でヘリコプターは飛ぶのかなと思ったけど、無理をしてでも飛ばすみたい。
俺の仕事はヘリコプターに結界を張って寒さを凌ぐ事なのだけど、少し広めに雪の侵入を防ぐ結界も張ることになった。急遽望姉さんと相談した所、二重結界の外側に薄い膜のように張ればいいということで試してみた。
今年の夏にお祖父ちゃんの隠れ里で気配察知の結界みたいにしたらいいかなと試した所あっさり出来てしまった。
「怜は結界に関してはさすがね、私もそこまで直ぐにできなかったわよ」
「ほんと自分で言うのもなんだけど、結界に感してはどうして後もうまくいくのかな」
「まあ良いじゃない、きっとそれにも理由があるはずだからね、そえじゃあ怜気をつけなさいね」
「望姉さんも気をつけてね」
こうして俺たちは望姉さんと分かれて東京に向かった。