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なかみが男でも百合は成立するのだろうか 連載版  作者: 三毛猫みゃー
8章 始まりは平穏に、不穏な冬を超え、戻る平穏
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第04話 キャンプ合宿の夜

 ワイワイガヤガヤと海水浴場は賑わっている、急遽始まったビーチバレー大会に駆り出されたり、どこからともなく運ばれてきた大量のスイカを使ってのスイカ割りをしたり、ここ2年ほどの夏を思い出すと涙が出てきそうなくらい楽しいひと時だった。


 夏っていったらこういうのでいいんだよ、山を駆け回ったり鬼退治したり、アヤカシと戦って死にかけたりなんて普通じゃないんだよ。遊び終わったら元々建てられている寮一棟ほどの合宿施設でお風呂に順番に入って晩ご飯をいただく。


 合宿施設があるのならわざわざテントとか建ててそこで寝なくてもと思われるかもしれないけど、流石に中等部全員寝泊まりできるほどの寝具の用意が出来なかったとか。


 ご飯まで済んだら再び砂浜まで移動して、俺たちがお風呂やご飯を食べている間に用意されていたキャンプファイアーを囲んでの花火大会が行われて大いに盛り上がり、生徒のストレスやらなんやらが解消されたように思える。


 手持ち花火も使い切って日の後始末を終えたグループからテントへ向かっていく人に声をかけていく。


「お疲れ様、夜更かししたり持ち込んだお菓子を食べるのは良いけど、ちゃんと歯は磨いて寝るんだよ」


「はーい、会長もお疲れ様です、おやすみなさいませ」


 戻っていく生徒に声をかけながら生徒会役員で見回りを続ける。平宮姉妹には先に戻って貰って、俺たちは最後のグループが戻るまで待機して、最後はキャンプファイアーを監督役の教師と一緒に処理する。


 俺たちは2つテントを建てているので、明海ちゃんと平宮姉妹で一つ使い、俺と楓と桜さんで一つを使う事にした。


「明海ちゃんおやすみ、東雲さんと雷門さんもお疲れ様」


「怜ちゃんまた明日ね」


「皆様お疲れ様です、おやすみなさいませ」


「先輩方もお疲れ様です」


 一通り挨拶を交わしてそれぞれの寝るテントへ戻っていった。


「肌がヒリヒリするー」


 テントへ入った所で楓がテンション低めにそんな事を言っている。


「日焼け止めちゃんと塗るようにって言ったのに、結局楓は塗らなかったのね」


「うぐぐ、今はちょびっと後悔しています、でもほらお肌がいい感じに色がついたと思いませんか?」


「ちなみにサンオイルは使ったの?」


「へ? なんですかそれ」


 桜さんが何このアホの子みたいな視線を楓へ向ける。


「うん、まあ、頑張って」


「えっ、もしかして桜ちゃんは知ってたの?」


「てっきり楓は知っていてわざと使わなかったのかと思ってた、ここに付いた時使うって聞いたけどいらないって言ってたし」


「あれがそうだったの? てっきり怜様が塗ってた日焼け止めかと思ってた」


 楓は最初の出会いはあれだったけど、この一年の付き合いで意外と愉快な子だということがわかった。


「うぅー、ひりひりするよー」


「はぁ、仕方ないわね、これでも塗っておきなさい」


 俺はカバンの中から塗り薬を取り出して楓に渡す。


「ちょっとしたキズぐすりみたいなものだから少しはましになるでしょ」


「ありがとうございます、えっと背中の方は塗ってもらったり……」


「まあいいけど」


「(やった)お願いします」


 楓はそう言っておもむろに着ていた服とショートパンツを脱いでうつ伏せになる。


「いや、まずは自分の手の届く所は自分で塗りなよ」


「あはは、そうですね」


 こちらに背を向けて腕から足まで塗ってこちらに塗り薬を渡してくれる。


「改めてお願いします」


「はいはい、それじゃあ寝っ転がって」


 指で塗り苦しを掬って手の両手のひらで軽く伸ばして、塗れていない場所に丁寧に塗っていく。


「あっ、うっ、あん」


「変な声出さないの」


「えっと、怜様に触れられていると思うと自然に声が出てしまって」


「そんな事言ってると塗ってあげないよ」


「我慢します」


 なるべく痛くないように塗っているのだけど、楓は口を手で塞いで声を出さないように我慢している。全身塗り終わった頃にはなぜかぐったりしていた。


「はい終わったよ、皮が剥けるかもしれないけど、痛いのは収まると思うよ」


「はぁ、はぁ、ありが、とう、ござい、ます」


 なんだか息も絶え絶えだ。脱いでいた服をのろのろと着終わる頃には落ち着いたようだけど。


「次は私が怜様にお塗りいたしましょうか?」


「私はちゃんと日焼け止め塗ったから大丈夫だよ、桜さんの方は大丈夫?」


 桜さんは電池式のランプを利用して持ってきていた文庫本を読んでいる。


「私は楓と違ってちゃんとサンオイルを塗ったので大丈夫ですよ」


「桜ちゃんがなんだかいつもより手厳しい」


「そうなんだ、それじゃあちょっとだけあっちのテント見てくるわね、必要ないと思うけど念のため塗り薬持っていってくるから先に寝てていいからね」


「はい、それでは先にお休みさせていただきますね、楓も寝るよ」


「はーい、それじゃあ私真ん中ね」


 ちゃっかり真ん中を陣取る楓。


「楓はこう言ってますけど怜さんもそれでいいですか?」


「いいよいいよ、空いてる所で寝るから好きにしちゃって、それじゃあ行ってくるね」


 俺は塗り薬片手に明海ちゃん達のテントに向かった、ランプの明かりが見えるからまだ起きているようだ。


「明海ちゃんまだ起きてる?」


「大丈夫まだ起きてるよ、怜ちゃん入ってきていいよ」


 お邪魔するともう寝る準備も済んでいるようで寝袋が敷かれている。


「怜ちゃんどうしたの?」


「いらないと思うけどこれ使うかなと思って」


 塗り薬と取り出すけど、3人共日焼け止めをちゃんと塗ってたようで日焼けの後は見られない。


「わたし達は大丈夫だかな、それにそれって塗った後ちょっとだけ痒くなるし」


「そうだっけ?」


「だったはずだけど」


「まあ、必要なければ戻るよ、三人ともおやすみなさい」


 挨拶を交わしてテントに戻ると楓が寝袋の中で悶えていた、あー明海ちゃんが言ったように痒くなるんだ、俺の手は特に何も何だけどな、体質とか相性7日もしれない。


「えっと楓大丈夫?」


「だ、大丈夫です、なんだかこのかゆみが少し快感に」


 なんだか目覚めてはいけないものに目覚めた気がするが、大丈夫なら良いか。


「そう? 大丈夫ならもう寝よっか、桜さんもお休みなさい」


「はいおやすみなさいませ」


「怜様、桜ちゃん、お、おやすみ、ぬおぉぉぉ」


「楓はホントきつかったら起こしていいから言ってね」


「はひ、ありがとうございます」


 こうして合宿の夜は過ぎていくのであった。

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