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閑話 ある少女の軌跡

 私がこの神樹女学院に入ることになったのは有り体に言えば家の都合だった。家はそれ相応の旧家ではあるけど、この学院に通う大多数の人みたいに特殊な力は持ち合わせていなかった。


 私自身この学院に入学をするまで、そういう力を持つ人がいる事さえ知らなかった、いや知らなかったというよりおとぎ話の類程度にしか思っていなかった。でもあの夜沢山の人とあの光景を見た事で信じざる得なくなった。


 人と鬼の戦い、なにかに誘われるようにフラフラと寮の屋上へ向かっていた、我に返った時には私と同じように知らず知らずのうちに屋上へ来ていた人でごった返していた。一瞬世界が光に包まれた用に思えた、全身を何か温かい光が突き抜けていった。


 そして私の目にその光景が飛び込んできた、校舎の屋上の更に上、普段寮の屋上から見えるはずのない場所、神社などにある巫女さんが舞を舞ったりする舞台。そこで繰り広げられている、生徒会役員の方々と黒くて大きな鬼との戦い。


 戦い自体はそんなに時間はかからなかったように見えた。鬼が何かに打ち上げられたと思えば何かに全身を切り刻まれ、そうかと思えば急に頭が炎に包まれた、最後には世界を染めるほどの雷光が鬼を消し去った。


 湧き上がる歓声、私もそれに流されるように歓声を上げていた、そのうち生徒会役員の方と教職員の先生が収集に現れてみんな自室に戻された。戻った後は同室の先輩と少し話して眠りについた。


 その後は特に何事もなく日々が続いていった、特にあの日のことを話題にする生徒もいなかった、その徹底ぶりがアレは夢だったのだろうかとも思わされた。だけどあの夜以降に変わったこともあった。


 あの夜の後に学院がカウンセリングを行うようになったのだけど、そこで私や私と同じように力を持っていないと思われていた人たちがいつの間にか何らかの能力を手に入れている事がわかったのだ。


 大体が家由来のものだった、私自身も一応聞かされていた使役系の力が使えるようになっていたみたい。みたいというだけあって実際に使えるかどうかはその時には分からなかった。


 それがわかったのは中等部2年の夏季休暇の時に実家へ戻ったときだった。実家に戻った時は家中がお祭り騒ぎになっていて困惑したのを覚えている。学院から私が力を手に入れた? 覚醒した? まあどちらでもいいのだけど、その連絡が来た時から家中の本家や分家の日記や記録を全部洗い出したみたいだった。そして今年になって私の力をどうにかする目処がたったという事なのだと思う。


 色々記録を漁った結果は、私の家系は陰陽師系の家系で特にアヤカシを使役していた事がわかった、後は力の使い方や相性のいいアヤカシの調べ方なんかもわかったみたいだ。そこで早速使役をというわけにもいかず、安全を考慮して学院から紹介してもらった同系統の陰陽師に依頼して協力してもらう事となった。


「はじめまして、私は御手洗五十鈴(みたらいいすず)よ、今日から暫くあなたの指導をさせてもらうことになりました、五十鈴って呼んでくれていいわ、よろしくね」


「はじめまして、私は山陰道文さんいんどうあやと言います、よろしくお願いします、私のことはあやって呼んで下さい」


「では早速と行きたいところだけど、少しお話しましょうか」


「お話ですか?」


「文さんはこれなんだかわかる?」


 そう言って右手の薬指の指輪を私に見せてくれた、それは学院から渡された指輪と同じものだった。


「えっと、学院から貰った指輪ですよね?」


「ええそうよ、これはね交換することで姉妹の契を結ぶ以外にも使い道があるのよ」


「そうなのですか?」


「ええそうよ、この指輪はね付けた人の能力を制御する媒体にもなるの」


「制御する媒体ですか、では交換とかはしない方が良いのですか?」


「ん? ああ、違うわよ指輪自体はどれも一緒だからね、文が心から想いを寄せる人が出来たなら交換しなさいよ。そうではなくてね今は指輪を付けていないようだから指輪はちゃんと付けておきなさいと言いたかったのよ」


「そうなのですね、それでは取って来ますので少しお待ち下さい」


 私はそう言って自室に急いで戻り指輪を付けて応接室に戻った。学院から貰って以来付けていなかったのだけど、付けてみると不思議な感覚がする。


「お待たせしました」


「お帰りなさい、それで付けてみて何か感じた?」


「えっと、なんだか不思議な感覚がありますね」


「そのうち慣れると思うわ、じゃあ早速だけどあなたの適正と相性のいいアヤカシを調べましょうか」


「はい、お願いします」


 五十鈴さんは持ってきていたスーツケースを開くと御札を複数取り出してテーブルに並べた。御札には梵字が書かれていて、中央に鬼や龍に翼や蟲などの文字が書かれている、この中なら何が良いいのかな?


「本当はね血がいいのだけど唾液でも良いわ、ここに並べた御札に付けて頂戴」


 私は指に唾を付けて一枚ずつ御札に唾を付けていく、一通り付け終わったのだけど特に何か変わったことは起こらない。


「それでいいわ、少し待ってね」


 五十鈴さんがそう言って、指の形を次々と組み替えながら「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女」と唱えた。そうしていると御札が一つずつ黒く染まっていき最後に1つだけ残った。


「文さんあなたと相性のいいアヤカシはこれね」


 残った御札には翼の文字が書かれていた、翼ということは鳥とかなのかな?


「文さんと相性のいいのは翼を持つアヤカシということね」


「翼を持つものですか?」


「ええそうよ、そうね文さんに才能があれば八咫烏や烏天狗なんかも使役できると思うわ、最初は夜雀あたりを使役してみると良いかもしれないわね」


「夜雀ですか」


 名前からして雀みたいなアヤカシなのだろうか、小鳥とか飼ってみたかったからそれなら嬉しいかな。


「その辺りは親御さんと相談すると良いわ」


「そうですね、そうします」


 五十鈴さんはテキパキと片付けを終わらせると温くなった紅茶を飲んで立ち上がった。


「それじゃあ、依頼は完了ということで、この御札は持っていなさい何かの役にたつかもしれないわ」


「ありがとうございます」


「それと学院で困ったことがあったら、高等部1年の御手洗彩彩みたらいさあやを尋ねると良いわ、私の妹だから話は通しておくわ」


 私は再びお礼を言って五十鈴さんを先導するように両親の待つリビングに案内をした。しばらく両親と五十鈴さんが会話しているのを眺めながら今後どうなるのかなと考えていた。


 今までなんの特徴もない普通の女の子だった私が、いつの間にか世界規模の騒動に巻き行きこまれる事になるとはこの時は想像すらしていなかった。いやホント勘弁してほしいですよ。





 こちらの閑話は、既出キャラで閑話を思いつかなかったので適当に書き始めたら興が乗って出来上がったものになります。


 今のところ本編には出てくる予定はありませんが、外伝的な位置づけで怜たちの関わらない場所や、もしくは怜たちを外部から眺めている感じの時に使えたら良いかもしれませんね。

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