第12話 朱天との繋がり
バレンタインデー、後期期末テスト、そして卒業式も終わった。特に何か変わった事もなく日常がすぎていく。去年もしたけど卒業する藤川美玲元高等部生徒会長と城島結衣元高等部副会長とは送別会を最後にお別れを済ませた。
お二人とは生徒会活動以外の接点がほとんどなかったのだけど、普通はそんなものだとマリナさんは言っていた、むしろ俺が一年のときの生徒会長である御雷さんみたいな年が珍しかったみたいだ。
そして今は春休みなのだけど、今年も引き続き多数の生徒は学院で過ごしている。生徒会役員の面々は入学式の準備に駆り出されている、特に今年の生徒会長になる俺は色々忙しくしている。
入学式自体は殆ど座っているだけで良いらしいのでいいのだけど、在校生の祝辞なるものを話す事になっている。一応例年使われている原稿を貰っているので暗記して話せばいいとのことだけど、大勢の人前で話すなんて初めてなので今から緊張している。
今年の新入生の中には平宮鈴ちゃんと平宮篠ちゃんの双子が入学してくる。二人が生徒会に入るかは今の所わからないけど、他に候補がいなければお願いしてみるつもりだ。
「ねえ、朱天って最近何してるの?」
今は夜こっそり寮を抜け出して一人で校舎の屋上にある神楽殿に来ている。
「何と言われてもの、いつも通り暇潰しがてら瘴気を集めて遊んでおるくらいだの」
「それだけじゃないでしょ、たまーに朱天との繋がりがすごく薄くなる時があるんだけど」
「ほう、主殿はそこまで感じ取れるようになったのかの」
「まあね、前までなら多分全然分からなかったんだと思うけど、ほら私って半神になったじゃない? 多分それのせいだおともうんだ」
「ふむ、主殿はすでに力を使いこなせているという事かの」
「いやいや、使いこなすも何も未だに何ができるのかもわかってないし、朱天に感しては依代があるからね」
「そうよの、半神として何ができるか……、近いうちにわしの知る者におうて見るのも良いかもしれぬの」
「朱天の知り合い?」
「知り合いといえるかはわからぬがの、主殿の祖母殿と少し話してみようかの」
「それってどういう人なの? それとも私みたいに半神になった人とか?」
「既に人とは言えぬの、そして半神ともまた別の存在だの、主殿にわかりやすく言う慣れば仙人と言えばいいかの」
「仙人って、そういう人もいるんだね」
「まあの、まだ存命なのか、まだその場所におるかもわからぬがの」
「ふーん、春休みも終わるし、すぐにってわけにもいかないだろうけどね」
「そうよのそれまでに自ら力の使い方を咲夜殿と共に探してみるがよかろう」
「うん、まあそれはそれで良いんだけど、それで朱天との繋がりが薄くなるの理由を聞いてないんだけど」
「ふむ……、別に隠すことでもないのだがの、まあ良いか」
朱天は少し考える素振りを見せていたが諦めたように一つため息を付いて話し始めた。
「主殿との繋がりが薄れた理由はの、単純にわしがここ結界から外へ出ていたことが理由だの」
「外に? そんなに手軽に出入りできるものだったかな?」
「それはの、わし自身が鬼神となったからじゃの、鬼とはいえど鬼神とは神気を扱える鬼だからの、ここの結界は神気を拒む作りになっておらぬ、神気で鬼気を包めば出入りも自由というわけだの」
「そうなんだ、それで外には何をしに行ってるの?」
「あー、それはやはり言わねばならぬか?」
「いや別に嫌なら言わなくてもいいけど、私が気になるだけだし特に悪い事してるわけではないでしょ?」
「はぁ、まあ良いわ、かつての配下を探しておるのだがの、今のところほとんど成果はないだけの話だの」
「そうなんだ、探してた理由聞いて良いの?」
「百鬼夜行」
朱天はこちらを見ずにそうつぶやくように発する。
「百鬼夜行?」
「うむ、何者かが百鬼夜行を行おうとしておるようでの、今ここの外ではそれを防げないかもしくは被害を少なくする方法を探しておる」
「そうなんだ、それと朱天が昔の部下を探してる理由って?」
「単純な話になるが、百鬼夜行に取り込まれる前に対処しようとしていたのだがの、それもあまり成果が得られんでの」
「そもそも百鬼夜行てなんなの? 起これば何があるの? なんとなく分からなくもないけど」
「百鬼夜行とはの、何百というアヤカシを従えて行われる儀式の一種だの、というてもの今まではそこまでの規模にはならなんだ」
「それは今回は違うってことなんだね」
「そうなる、という予言があったみたいでの、ちなみにその話を持ってきたの主の姉御殿じゃの」
「望姉さんからなんだ、それだと本当に何かがありそうだね、それでなんで私に黙っていたの?」
「主殿には百鬼夜行に感してはあまり関わってほしくないからだの、身内が関わってしまうと主殿のことだからの無理をするであろう?」
「それって、私の身内に何かかるって白状しているようなものなんだけど」
「だから言いたくなかったのだがの、詳しい事は機会があれば祖母殿に聞くがよかろう、わしも詳細までは知らぬし今も少しばかり手を貸しているだけだからの」
「それっていつ頃とかはわかっているの? どのみち学校がある間は関われないと思うのだけど」
「時期までは聞いていないというよりも、そこまで正確な時期はわかっておらぬようだの」
朱天の言う通り身内だけでなく、知り合った人が関わるなら俺は手をださずにいられないと思う。今も学校がなければ朱天と共になんらかの協力を願い出ていただろうね、さてどうしたものか。