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第10話 悩める乙女な木嶋柚

 冬季休暇が終わり学院での日常へと戻ってきた、この冬の間になにかがあったのか、纏っている雰囲気が変わっているクラスメイトがいたりと、学院全体の雰囲気がそこかしこで変わっている気がした。


 詳しくは聞いていないけど、実家に戻った時にアヤカシ関係で色々あったという噂をちらほら聞こえてきたし、目安箱にもそっち関係の相談事がチラホラ入っていた。外部のことなので学院長の沙織さんに提出して対応は任せる流れになっている。


 新学期が始まり教室で久しぶりに会うクラスメイトとあいさつなどを交わしてから数日たった。その数日の間木嶋柚(きじまゆず)がチラチラとよく俺の方を見てきてすごく気になっている。


 何か言いたい事でもあるのかなと思い何度か話しかけているのだけど話しているときは特になにかがあるように思えなかった。それでもたまにチラチラ見てくるので一度昼食を一緒に食べようと誘うことにした。


「柚、今日はお昼一緒にしない?」


「姫ちゃんから誘ってくるなんて珍しいね、いいよ一緒に食べよう」


「じゃあ私も一緒にいいかしら」


「おーけーおーけー、静ちゃんも一緒しよっか、何食べる? 商店街でも行く?」


「あー何食べようかな、全然決めてないや」


「そうね、寮の食堂で食べようと思っていたけど寮が違うのでどうしましょうか?」


「ん~、外は寒そうだし論外として、商店街で適当なお店はいるでいいかな?」


「柚の意見に一票」


「私もそれでいいわよ、お店は移動中に話し合いましょうか」


 ということで3人連れ立って商店街へ行き喫茶店に入ることにした。この喫茶店はあまり利用する生徒が少なかったりする、理由は教師でここを利用する人が多いからなんだけどね。


 今日は運がいい事に生徒も教師もいないようで店内はガラガラだった。まあこの寒い中商店街やモールの方にまで足を伸ばして昼食をとる人は少ない体と思うけど。


 とりあえずそれぞれ注文をして、しばらく休み中の話に花を咲かせる、二人も実家に戻った時に色々あったようだ。注文した昼食を食べて食後のコーヒーとデザートが届いた所で俺は柚に話を切り出した。


「ねえ柚、少し聞いていいかな」


「どうしたの改まって、なんでも聞いてよ」


「それじゃあ聞くね、柚って最近私のことたまにチラチラ見てると思うんだけどそれの理由が知りたいんだけど」


「それは私も気になっていたわ、柚にしては煮えきらない態度って言ったら良いのかしら、普段の柚なら言いたいことがあればすぐ行動に移すと思うわ」


 俺と静流の言葉に「あははー」と少しの間苦笑を浮かべていたけど、居住まいを正して真剣な雰囲気を醸し出す。


「姫ちゃん、わたしね姫ちゃんに聞きたいことがあるんだ」


 その真剣な眼差しにごくりと喉が鳴る、自然とコーヒーを一口飲んで柚と向かい合う。


「何が聞きたいの?」


「姫ちゃん……、姫ちゃんのお胸ってお休み入る前はそこまで大きくなかったよね、何をしたの? 何をしたら大きくなったの?」


「…………は?」


 一瞬何を聞かれたのか理解できなかった、柚は何を言っているんだろうか、静流が額を抑えながら「はぁぁぁぁぁ」と盛大に溜息をついている。正直どう答えたら良いのかわからないのだけどどうしたものか。


「えっと、特に何をしたわけではないけど、成長期だからじゃないかな? それに対して変わってないから普通は分からないと思うんだけど」


「そんなことないよ、私には違いがわかるよ」


 自分の胸の部分を触りながら呟いている、触っても仕方がないと思うけど黙ってることにした。


「そう言えば、怜さんもですけど怜さんのお姉様の咲夜様もなんだか身長などが少し大きくなってるように見えましたね」


 ガバリと音が聞こえそうな勢いで顔を上げ柚がこちらに迫ってくる。


「姫ちゃん! 咲夜様と冬季休暇の間に何をしたの? 二人揃って大きくなるなんておかしいよ!」


 何をって聞かれても観覧車でのあれを言うわけにもいかないわけで返答に困る、とりあえず誤魔化しておこうか。


「まって、まって、静流が言ったのは体型であって胸のことじゃないからね」


「むぅー、確かに姫ちゃんって少し背伸びたかな、それに合わせてお胸も大きくなったんだね」


「さ、さあ、どうなんだろう」


 よく漫画とかである「胸なんてうんたらかんたら」って言ったら多分ダメなんだろう、さすがの俺でもそれくらいはわかる。もしかしたら石榴の実を食べたら胸が大きくなったりするのかな、とは思ったけど色々とやばそうなので黙っておくことにした。


「ほら私達ってまだ成長期だからね、柚もそのうちちゃんと大きくなるよ」


「そうよ柚、身長は少しだけ伸びたって言ってたでしょ、きっと大丈夫よ」


「それより残り食べちゃいましょ、そろそろ教室に戻ったほうが良い時間みたいだし」


「ほんとだ、急ご」


 デザートをコーヒーで流し込むように食べて店主に声をかけて店を出るとちらちらと雪が振り始めている。


「おぉー寒いね、よし走ろっか」


 そう言って駆け足を始める柚を追いかけるように俺と静流も軽い感じで走り出す。食べたばかりで流石に全力では走れないけど、これなら教室に戻ってから歯磨きして汗を拭く時間くらいは稼げそうだなと考えながら、雪の中を俺たちははしゃぎながら走った。

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